莉緒の回想
僕は、上機嫌そうにしている莉緒に申し訳ないな、と思いつつ疑問を聞いた。
「自分に自信なかったって言ったけど、どうしてか、聞いてもいい?」
「ん~・・・。」
少し迷う表情を見せる。
「ごめん、言いたくなければ言わなくてもいいけど・・・。」
「ん~。いいよ。あんまり楽しくない話になるけど。」
莉緒は少し遠い目をしながら、静かに語りはじめた。
ーーーーーーー莉緒視点ーーーーーーーーーーーー
私は、物心ついたときには自分が男の格好でいることが余り好きではなかった。
両親に相談したら、性同一障碍かもしれないとの事で病院の検査は受けた。けど、私は、性別が男であることに違和感はなかった。
ただたんに可愛い服を着て、可愛い格好をするのが好き。
それを正直に両親に話した。そしたら、両親は嫌な顔ひとつせずありのままの私を受け入れてくれた。
その後は、両親は私が選んだ好きな服を買ってくれた。
私は自分が可愛くなっていくのがとても楽しかった。そんな自分が大好きだった。
でも・・・。
両親がいくら理解をしてくれても、周りの人まではそうでは無かった・・・。
この学校に進学する以前は、結構冷たい対応もあったし、心無い言葉を受けたこともある・・・。
私は、そんな周りの反応から自分に自信が無くなっていた。
そんな時、私は高嶺葵という男の子に出会った。
「宮津 莉緒です。よろしくお願いいたします。」
自己紹介する私を見つめる視線。そう、それが葵君だった。
目が合って、すぐに葵君は視線をそらしちゃった。私は少しだけドキっとしてしまった。
感じたのは不安。また、前のように冷たくされるかも。っと思ってしまった。けど、ここには私を知ってる人はいない。
そういう学校を選んだ。自己紹介も精一杯明るく笑顔でするようにした。
葵君は私が男の娘であることを知らないはず。その反応に私は戸惑った。
不安を感じてる私に、葵君は声をかけてくれた。緊張した声と表情だったけど、好意を感じた。
私はそれだけで少し救われた気がして、恩返しのような気持ちで、葵君に積極的に接するようにした。
葵君は最初は緊張してたけど、どんどん積極的に話しかけてくれるようになったし、明るく接してくれるようになっていった。それが私にはすごく嬉しくて、楽しくて。
でもね、もっと嬉しかったのは課題を一緒にやろうと誘ってくれたこと。葵君の家に誘ってくれて、私を信頼してくれてるのが嬉しかった。
でも、それとは別に申し訳ない気持ちがあったの。葵君が私に好意を寄せてくれてるのがなんとなく分かってたから。だからね、私の事を教えた。
そしたら、葵君。男の娘である私が好きだって言うんだもん。ずるいよ。そんなこと言われたら嬉しすぎて、断れないじゃん。
両親以外の誰かが、ありのままの私を受け入れてくれるって。こんな嬉しいこと今までなかったよ。だからね、自信なかったけど、葵君のおかげで、私は今すごく自信がついてきたんだ。
今まで、どこか作り笑いだったけど。
感謝を込めて。
「ありがとう、葵君。」
私は、心からの笑顔を浮かべて彼にそう言った。
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PV300超えました。引き続きお付き合いくださいね。