金髪美女、村で過ごす
マーシャたちが村に住み始めてから四か月が過ぎた、。
現在、グリゴリーはサニュ村近くの林で村長と一緒にいた。
腰を下ろして、雪を掻きながら木の根元を探っている。
「小屋のほうは今のところどうなんじゃ?」
「大分戻ってきたかな。注文しておいた窓ガラスが来れば生活自体は出来ると思う」
「それならよかった。畑は?」
「順調。今年は天候が良いね。多分例年以上の豊作だと思う」
「いつもより少し暖かいからのう。今年は隣村の連中には頼れんからしっかり自分たちのところで作らんとな」
「近くの町に避難してるんだっけ?」
戦争で襲われた小さな村々は資材や住処を略奪される。
そのためそこに住んでいた人々は養ってくれるほどの豊かな町に逃げるか、火国の軍の捕虜になるしかなかった。
「そうじゃ。この辺の村は、ここ以外は全部そうなっとる。といっても火国側は今も止まることなく進軍しておるらしいから、今頃は都かそれ以外じゃ最も栄えているベールゥィ辺りにいるのじゃなかろうか?」
「資源とか足りるのか?」
「苦しいじゃろうな。去年の備蓄も少ないじゃろうし」
「……大変そうだな」
「出来るだけ知り合いが生き残ってくれているとよいのう」
二人は立ち上がった。
籠を持ち上げ、隣の木に移動してまた土を漁り始める。
三分ぐらいして、グリゴリー側から話しかけた。
「もし今回の戦争にうちが負けたらどうなるんだ?」
「五神の関係上、五国はどれも亡ぶなんてことはないと思うが……」
「亡ばない? 何でだ?」
「五つの国に分かれたこの大陸における戦争は領土や糧の奪い合いじゃ。勝った国は潤うし、負けた国は貧する。けれど一国があまりに衰退してくると、他の四国は五神契約によってまとも国力が復活すまで援助をしなければいかん」
「戦争に勝ち続けても、最終的には得たものを全部返さなきゃいけないってことか?」
「極論を言えばそうなるのう」
「じゃあ何で戦争なんかするんだ? それじゃ勝っても得がないじゃないか」
「さてのう。なんせわしが生まれた時からそうじゃったからのう。ただわしの記憶では五神契約が施行されたのは歴史上たった二回じゃ。だから強国である火国はずっと富んでいるし、弱小国のうちは貧しいままじゃ……といってもこの環境も悪いがのう。こんな寒さじゃ道具も水も大地も何もかもがすぐに凍ってどんな活動もまともに出来ないし、植えられる野菜や果実も狩れる動物も少ない」
村長は雪を降らしている雲を見上げた。
今日も変わりない。
毎日見上げる空だった。
グリゴリーは首を回し、木の間を通して奥に目を向けた。
直接見えはしないが、その先をずっと真っ直ぐ進むと帝都があった。
氷国の中心であり、国を治めている神のいる神殿が建っている場所だ。
ある意味、氷国の最終防衛線であり、ここを侵略されることは負けを意味していた。
「叔父貴。どうして俺を誘わなかったんだろ?」
「勝ちたいのか?」
「いいや。説明されて考えても馬鹿な俺には戦争なんて分からなかった。でも叔父貴たちは勝とうと頑張ってる。なら俺も手伝いたい」
「時期といううものじゃろ。いずれ来るかもしれんし、来ないかもしれん。わしとしては一生来ないで欲しいのが本音じゃが」
「ふうん」
グリゴリーは視線を元に戻し、土を掘ることを再開する。
手首が埋まるほどの穴が出来上がると、土を返してから立った。
「きのこ。無いな」
「無いのう。避難する時に小さいのも持っていかれたか?」
「それなら仕方ない」
「とりあえず今日探して無かったら諦めることにしよう」
彼らは夕飯の食材にしようとサニャ村の近郊にある林でニアタダケを探していた。
独特の食感と味、また豊富な栄養は飢餓に苦しむ村ではとても有用な食材だった。
けれど二人が早朝から昼過ぎまでずっと探していても姿形さえもも見当たらなかった。
そのまま木の根元を掘り続けていると。林の外から誰かが来た。
「お腹空いてるー? お昼ごはん持ってきたよー」
「ペコペコだよー」
急ぐマーシャ。
両手で寸胴を持っていた。
ニアタダケ探しを一旦やめて、グリゴリーたちは合流する。
「お待たせー」
「ご苦労じゃったのう」
「ここ座れば?」
「ありがとねー」
上にあった枯葉を払った丸太に、マーシャは座った。
持ってきた寸胴を地面に置いて、巻いていた布と蓋を取る。
「ではご開帳。じゃじゃじゃん――ビエールイトリとスビョークラの煮込みでーす」
「おお美味そうだ」
「よい匂いじゃ」
「それじゃ冷めないうちに食べて食べてー」
グリゴリーと村長は木皿と先割れスプーンを受け取る。
氷神への祈りを済ませると、食事を始める。
「いただきます」
木皿に盛られた料理。
スビョークラを煮込んだことによって汁全体が赤くなっている。
汁に三日月模様のように浮く半透明のスビョークラ。その間をゴロゴロと存在感を示すようにビエールイトリの肉が転がっている。
グリゴリーは料理を前にして、まず匂いをかいだ。
上気してきた湯気の暖かさが鼻孔をくすぐり、凍ったように冷えていた鼻を溶かしてくれる。
甘い。
熱したスビョークラとビエールイトリのだしが程よく混ざり合っている証拠だ。
ん、これは?
ピリッとした独特の匂いが、甘味に混じって鼻腔に刺激を与える。
グリゴリーは匂いの中にある違和感の正体に気付いた。
赤色の汁にほんのりとある緑。
これは香草か。
肉や野菜では出ない香りは、そのままだと脂っこさを感じてしまう料理に爽やかさを与えている。
そしてそれは、一層食欲をかきたたせてくれた。
早く食べたい。
欲望に脳内を支配されたグリゴリーは、息で冷ますこともなく口の中に煮込みをかきこんだ。
熱い。舌が、頬の裏が、喉が焼けるように熱い。
トロトロになったスビョークラが口内で崩れていって、ビエールイトリが噛むごとに肉汁をまき散らしながら踊る。
肌寒さが弾け飛んでいくようだ。
急いで持ってきてくれたこと。
またビエールイトリの油を蓋のように使って、高温を保たせるという工夫がなされていたのだ。
そして味だが――美味い。
ビエールイトリの肉が野菜のスビョークラと一緒に煮込まれたことによって優しい甘さを纏い、そのうえ柔らかくなっている。
そして肉のだしを吸ったスビョークラがまた最高だ。
この二つを同時に口に入れると、互いが互いの味を引き立たせ、より質を上げている。また香草のほのかな酸味がアクセントを与え、飽きさせず料理を口に運ばせてくれる。
「けどよくビエールイトリの肉なんてあったのう?」
「隣のアブラムさん家で飼っていた鳥なんだけど、転んで死んじゃったんだって。老鳥だからお肉は硬いけどいい肉汁が出るよ」
さらにこの香草はイノンドだ。
イノンドはかつて風邪などの症状に対しても使われていた薬草。
どうやら健康にも気を遣ってくれたらしい。
夢中で料理を食べていたグリゴリーは、最後の一口を呑み込んで、食器を空にした。
「ごちそうさま」
「もう食べたの!?」
「美味くて」
「そう? ならよかった」
嬉しそうにするマーシャだった。
料理を食べながら、村長は話しかける。
「いやしかし料理上手になったのうマーシャさん。初めは包丁もまともに使えんかったのに」
「えへへそうですか。でもまだまだ奥さまには及びませんよ」
「むりやり切ろうとして根っこから欠けた刃が当たりそうになったときからは想像も出来ない成長だ」
「あれはちょっとごめんね」
「まああのときがあったからこその今だと思うといいさ」
「ありがとうー」
マーシャはお礼を伝える。
手袋の下は、浅い切り傷やかぶれた跡があった。
やがてマーシャと村長も食事を終える。
食べてすぐには動けないと、三人ともまだ座っていた。
「そうか。マーシャさんが来てからそれなりに時が経ったのう」
「うん。今は体もほとんど治ったし、お医者さんからはあと何回か検査に来ればもういいって言われたもの。それに色々なことを教えてもらって十分役に立てるようになったと思う」
マーシャは言いながら体を動かす。
そこにはもう触れただけで獣のような声をあげる女性はいなかった。
「記憶のほうはどうした?」
「うーん。まだ欠片も思い出せないかな。ぼくは誰なのか、何のために君の家にいたのか、知りたいことは山ほどあるんだけどね」
「家族も心配してるだろうし、早く思い出したいところじゃのう」
「そうだねー」
「……」
「どうかした? グリゴリー」
マーシャが目を向けると、グリゴリーはハッと気付く。
「あ、ああ。すまん。何でもない」
「ならいいけど。急に暗い顔になっちゃって心配したよ……もしかしてぼくの料理まずかった?」
「そんなことはない! もう俺以上に上手くなってる!」
「そうでしょー。でもカブについてはまだまだかな。初めて食べたあの料理以上にぼく美味しく作れたことないもの」
「そうか?」
「ほーそんなに旨いのか。なら今夜くらいご相伴に預かりたいものじゃのう」
「いや俺疲れてるんだけど」
「作って作って」
「分かった分かった。作りますよ」
だだをこねるマーシャに根負けして、夕飯はグリゴリーが作ることになった。
それからマーシャが帰ると、ニアタダケの捜索が再開する。
探し続けると、夕暮れ時には二本だけきのこを発見した。
村長宅では一本をそれぞれ半分に分け合って食事にした。
久しぶりの味に喜ぶ三人と、初めて堪能する珍味に舌鼓するマーシャだった。
もちろんそれじゃお腹が膨れないため、結局、グリゴリーは夕飯を作らされた。
それから時間も過ぎ、夜となった。
村の中の住宅も半分が明かりを消している。残り半分ももうすぐに消灯するだろう。
そんな時間に、村長宅では二人の女性が明かりを点けた部屋で動いていた。
腰から下半分を暖炉から出しながらマーシャは中に薪を置いていた。
薪の置き方は暖炉によって性質が違うが、それだけで決まるわけでもない。
木の材質、薪の斬られ方、室内の温度や湿度、その他様々な条件がある。
知識と経験から明日使う薪の状態を照らし合わせながら考えて設置を完了させた。
暖炉から顔を出したマーシャは炭で真っ黒だった。
おでこに滴る汗を服の袖で拭った。
「おつかれマーシャさん。うんうんよく出来たみたいね」
「そうなの? よかった」
「ああバッチリよ。朝は基本的に忙しいから暖炉は前日に用意をしておいたほうがいいんだよ」
マーシャが話しているのは村長の奥さんだった。
体が動くようになってからは、こうして彼女に家事を教わっているのだ。
「いやー最初は本当に一緒に生活できるのかと思ったけど、おばあちゃんって意外に優しいんだね」
「意外にって何だい?」
「村一の鬼ばばあって、おじいちゃんが言ってたよ」
「あいつはまったく……明日は出会い頭に一発お仕置きしてやるか」
火かき棒をブンブンと振る奥さんだった。
「今日はこれで終わり?」
「そうだね。だから今日のところは、汚れたところ拭いて着替えて後は寝ちゃいな」
「はーい」
「夜更かしして、朝寝坊したらあんたにもお仕置きだからね」
「やっぱりこわーい!」
「やっぱりって何だい。やっぱりって! そんなにお望みなら、朝じゃなくて今やってやるよ!」
「うわー!」
村長の奥さんが持つ火かき棒から逃げるマーシャだった。
奥さんから逃げきったマーシャは、着替えを済ませて自分の寝室に入った。
マーシャの寝巻は、村長の奥さんからもらったものだ。
お下がりらしく、他の村民の女性が来ているサラファンと形が似ている。色は緑を基調としたもので、とこどろころ金の刺繍が施されていた。
帽子もあるのだが、寝る時はさすがに外している。
実はこの服、若干サイズが合っていなかった。
といってもそこまでズレているわけでもなくて、普段は充分、快適に過ごせる。
けれどお尻と胸辺りが小さく、尻のほうは形が分かりそうなくらい強調されて、胸のほうは正面から見ても谷間が覗けてしまう。
男性にとっては毒でしかない恰好だが、マーシャもたまに送られる視線の意味がはっきりとは分からないため、スルーして服を着続けた。
といっても、
(そういえばこの姿でいるとグリゴリー露骨に顔合わせないよね。何でだろ? 盗賊の人たちとちょっと似た目つきになるんだけど)
まったく気付いてないわけではないのだが。
マーシャはベッドに乗ると、持っていた蝋燭を消す。
蝋燭の火は、村長の妻がコンティスションで点けたものだ。
眠る前に、マーシャは床に置いた蝋燭の台座の脇に座る。
指を伸ばしながら、ウンウンと唸る。
(コンティスション早く使えるようにならないとな。そうすれば他の人に世話を焼かせる必要もなくなるし)
村に住んで分かったが、生活にコンティスションは必要不可欠だった。
雪を溶かして水にする。暖炉や松明の種火。調理方法。その他もろもろ。
日常のありとあらゆる場面で使われている。
未だに発現が行えないマーシャは、いちいち必要な時に村長たちや他の住人へ頼むしかなかった。
何度も挑んだが、やはりコンティスションの兆しも現れることはない。
もう疲れたので、眠ることにしたマーシャ。
枕に頭を乗せて、目を瞑る。
「ね、寝れない……」
コンティスションの練習によって興奮した頭では、すぐに睡眠に落ちることは出来なかった。
ガバっと布団を巻き上げながら起きると、外を見つめるマーシャ。
(夜更かしするなとは言われたけど、寝坊しない程度にならいいよね)
結露を拭いて、そこから空を覗く。
満点の星空だった。
青みがかかった黒の背景に、点々と光が輝いている。
集まった星たちの輝きは空を明かりで埋め尽くし、まるでもう一つの晴天のようだ。
氷国の空はいつも綺麗だ。
それは荒れ果てた大地で過ごす人々たちに癒しを与えているのではないかという気がした。
寒さに震えながら労働のある昼を耐え、夜にこうして空を覗いて削がれてしまった明日への意欲を湧かす。
そのためにあるのではないかとマーシャは思った。
面のようにキラキラ続く星々をマーシャは見続ける。
一等星――クリウーチ
三等星――リースト
二等星――スラノーヴァヤ
ニ等星――コーシチ
三等星――ラーディクス
ニ等星――ジヴォートナイ
「えーと」
いつのまにか星を探すようになったマーシャ。
目当ての星を見つけようとする。
目に力込めてじっと見つめるが未だに見つからない。
そのまま諦めようそうになった。
『アグゥリエーツは、ここからだとあそこの木が目印になる』
夜、たまにグリゴリーと外を二人で歩く機会がある。
夜しか見れない動物や景色を彼は教えてくれる。
この星座探しもその時、教えてくれたものだった。
マーシャは門を超えた先にある木の上にある空を探す。
そこには第三等星アグゥリエーツがあった。
見つけた星を線でつなぐ。
星空に氷国二十星座の鍵座が現れた。
「やったー。うわーきれいー」
マーシャは喜び、達成感に浸りながら星座を見つめた。
「色々あったな……」
村に来てから今日までのことを思い出す。
村に来始めてからの毎日は治療に費やされていた。
退屈で苦しい日々であったが、グリゴリーやおじいちゃんたちが励ましてくれた。
おばあちゃんは看護をしながらも色々と教えてくれて、そのおかげでそれなりに生活できるようになったと思う。
自分で動けるようになってからは村に住む人々たちとも交流するようになった。
職人気質の鍛冶屋さん。
最初は何を考えているのか分からず注文するときもドギマギしたけど寡黙なだけでちゃんとお客さんのことも考えてくれているいい人だ。
友達のアーニュちゃん。
いじわるだけど面倒見が良い優しい子だ。
将来は学び舎の教師を目指しているらしい。彼女とは森で木のみを取ったり、雪原で雪投げをして遊んだりした。
お尻に投げた時は、青ざめた顔ですごい怒られた。何か嫌な思い出でもあるのかな?
他にも様々な人たちと出会って、色々な出来事が起きて、今では沢山の思い出が自分の中にあった。
気付けば、マーシャは眠りについていた。
昔より伸びた髪が、星の光を浴びて煌めていた。
星々で埋まった空と建物ごと雪で染まった大地。
窓の向こうにあるその美しい光景を――影が覆った。
影は部屋から光を奪う。
影は音も無く閉じていたはずの窓を開いた。
そのまま部屋に侵入する。
いつのまにマーシャの近くに居る影。
影はそっと手を出した。
星の輝きが刃を照らした。
目を覚まさないマーシャ。
外から入る寒風にも、まだ気づいていない。
様子を確かめると、影はすぐに刃を落とした。
切っ先はマーシャの喉に向いている。
貫かれて、即死だった。
――邪魔をするものがいなければ。
グリゴリーが部屋に入ってきていた。
影を発見するやいなや、切れるような回し蹴りを放つ。
「させるかよ!」
人間相手には十分な攻撃だった。
当たれば骨を砕き、肉を切断する威力の一撃。
並の人間ならば不可視でもあった。
――だが影は避けた。グリゴリーの頭を越してしまうほどの高さに跳躍していた。
グリゴリーは驚くも追撃する。
翼のない敵では防御不可能な空中など狙い目でしかなかった。
拳を握る。
すると空中から四つの短剣が飛んできた。
「くっ!」
「……」
正中線に連なる投擲。
グリゴリーは攻撃するのを中断して、刀身を指で掴んだ。
陰に潜んでいた五つめの黒い刃が、腕に刺さる。
その間に床に着地する影。
ガキっと木板が軋んだ音を立たせると、風を巻き起こす一撃を横から仕掛けた。
何とかグリゴリーは対応する。
構えを修正し、もう一度回し蹴りを影へ打ちこんだ。
同時に互いの技が直撃する。
刹那の硬直の後、両者ともに後ろへ吹っ飛んだ。
「がはっ」
グリゴリーは壁にぶつかる。
そしてそのまま壁を背にして床へ座った。
大きく呼吸をする。
五秒ほどしてから立ち上がり、開けた窓のほうへ視線を向ける。
吹っ飛ばれている内に、窓の外へ影が落ちていくのを視界に捉えていたのだ。
(そんなのでやられるような相手ではないな)
影は倒れずに待っているはずだ。
普通の人間ならば怪我の一つや二つ負うはずの状態に陥っている影。
けれどグリゴリーは自分の直感を信じて、刺さっている短剣を抜いてからベッドを越えて窓に飛び移った。
すぐに降りようとしたが、その前に振り返る。
「あれで起きないのかよ。この寝坊助さんは」
マーシャは特に何もなく寝続けていた。
目を細くして、すやすやと静に息をたててベッドで横になっている。
フッと楽しそうにグリゴリーは笑った。
それから、マーシャに向けて言った。
「どんな奴が来ても、俺はあんたを守る。指一本触れさせてやるものか」
獲物を刈ろうとする猛禽類のような鋭い目つきになったグリゴリー。
優しく音がしないように窓を閉じてから、地上へ降りた。




