18話 行方不明
周りが騒がしい。
昨日、夜遅くまで宴をしていたが、途中で眠くなって寝たんだったな。
「「ふぁ~(カァ~)」」
起き上がり欠伸をすると、ネロとヤキトリも起き上がったようで、同時に欠伸をする。
「おはよう。ネロ、ヤキトリ」
「おはよう。ご主人」
「カァー」
寝起きであまり頭が働かないが、周りの狼人族達が慌ただしく駆け回っている。
ゴブリンが村を襲ったときみたいにやってきたのか!?
「よう!兄ちゃん起きたか!」
「ガブ!…この慌ただしさは何だ!?また、ゴブリンでも攻めてきたのか!?」
「いや!リルの奴の姿が見えねえんだ!」
ゴブリンが襲ってきていないことに安堵したが、続いて聞こえてきた言葉に息を呑んだ。
リルがいない!?
それで狼人族達がこんなに慌てているのか!
小さい子供が朝早くから姿が見えないというのは、心配だ。
ゴブリンも完全にいなくなったわけじゃないからな。
「悪いけど、兄ちゃんも探すの手伝ってくれ!」
ガブは俺にそう告げると、慌ただしく走って行った。
「ネロ!ヤキトリ!俺達も手分けしてリルを探すぞ」
「わかったよー!」
「カァー」
俺達はその場から別れてリルを探し初めた。
しかし、リルを見付けることはできなかった。
探し始めたのは、日が少し顔を見せ始めたくらいだったが、今は完全に日が出来きった時間帯になっていた。
俺は一旦、ネロやヤキトリと別れた場所に戻ってきた。
戻ってきたらネロやヤキトリは既に戻ってきており、俺が戻ってくるのを待っていたようだ。
「ご主人、リルは見つかった?」
「カァ?」
「いや、いなかった…その様子だとそっちも見つけられなかったみたいだな」
「うん…リル何処行ったんだろう?」
「カァ?」
俺達がリルの行方を気にしていると、ガブと他の狼人族達の大人がやってきた。
「兄ちゃん!リルは見つかったか?」
「いや…見つけられなかった…」
「そうか…」
俺の返事を聞いたガブの落胆の表情をさせ、肩を落としてしまう。
「まだ、諦めるのは早え…もう一度手分けして探しに行くぞ!」
ガブと一緒にきた狼人族の一人がガブを励ましながら、提案する。
「そうだな!よし!もう一度手分けして探すぞ!」
気を取り戻したガブの一声で狼人族達も気を引き締めたような面になる。
そんな彼等を見ていると、俺の上着を引っ張られる。
引っ張られる後ろに視線を向けると、引っ張る本人が視界に入る。
ポチだ。
ポチが俺の上着をグイグイと引っ張っている。
「どうしたポチ?」
「グァン!」
ポチは一鳴きすると、俺から少し距離を取り、振り返り俺を見てくる。
そんなポチの様子に俺は怪訝な表情をしながら、ポチに近づき疑問を投げかける。
「もしかして、リルの居場所を知っているのか?」
「グァン!」
また、一鳴きして俺から距離を取る。
どうやら知っていそうだな。
ポチに付いて行けばリルを見付けることができるかもしれない。
「なぁ…!」
ガブ達にもポチに付いて行こうと声を掛けたが、既にガブ達の姿は跡形もなく消えていた。
はやっ!
ガブ達が戻るまでの時間が惜しかったので、俺とネロとヤキトリでポチに着いて行くことにした。
「ポチ!リルの所に案内してくれ!」
「グァン!」
俺の言っていることを理解したかのように、ポチは駆け出し森の中へと飛び込んだ。
身体強化や体術を使い、俺達もその後を追い、森の中へ駆け込んでいく。
ヤキトリは空からポチを追い、俺達がポチを見失ってもヤキトリが行く方向に走ればポチを追える。
まぁ…ポチが俺達の全速力に合わせてくれているようで、離されることはなかった。
しばらく、森の中を突っ切っているとゴブリンに遭遇した。
「くそっ!こんなときにゴブリンと出会すとはな…ネロ!完全に倒さなくていいから邪魔な奴だけ蹴散らすぞ!」
「了解!」
現れたゴブリンは二体。
俺とネロが一体ずつ相手をすれば余裕だ。
「「ギィギー!」」
俺達が距離を詰めたことでターゲットを此方にロックしたゴブリン達は俺とネロに襲い掛かってきた。
先手必勝!
俺は飛び蹴りをゴブリンの首へと直撃させる。
首の骨が折れたようで、ゴブリンが絶命する。
着地と同時に走り出しネロの様子を確認する。
ネロもゴブリンの首へ拳を突き出し絶命させていた。
また、しばらく走るとゴブリンが3体現れた。
二体が前に出て、剣を構えている。
残り一体は後方に下がり、杖のようなものを構えていた。
武器ありかよ!
しかも刃物なんて危険すぎる。
しかし、走るスピードを落としたくはない。
「ヤキトリ! 後ろで杖を持っている奴を相手してくれ! ネロ! 俺達は剣を持っている奴を相手にするぞ」
「了解!」
「カァー!」
俺の指示でヤキトリが空から杖を持っているゴブリンへと襲いかかる。
ヤキトリの爪により視界を奪われたゴブリンが杖を振り回している。
透かさず、ヤキトリの嘴がゴブリンの喉へと突き刺さり生命を刈り取っていた。
ネロはゴブリンが振り下ろす剣を軽々と避け、首へと拳を極める。
俺にはあんな芸当無理だな。
そんなことを考えつつもゴブリンとの距離は縮まって行く。
まだだ…まだ…今!
俺はゴブリンとの距離がある地点までくると急停止した。
振り下ろされていた剣が俺には当たらず地面へと突き刺さる。
この隙を逃さず、地面へ突き刺さった剣を踏み台にゴブリンの頭を蹴り上げる。
『レベルが上がりました』
よっしゃああああ!
レベルが上がった!
ステータスを確認している暇がないので、確認は後回しだな。
この様子だとゴブリンに遭遇する確率は高そうだな。
案の定ゴブリンが五体現れた。
数が多い!
「ヤキトリさっきと同じように杖を持ったゴブリンを一体倒してくれ! ポチはもう一体の杖持ちゴブリンの相手! ネロ悪いが剣持ちのゴブリンを二体相手してくれるか?」
「余裕!」
「カァー!」
「グァン!」
ヤキトリは先程と同じように杖を持ったゴブリンを倒し、ポチは脇の草むらへ入って行ったかと思うと、杖持ちのゴブリンの横から飛びかかり絶命させた。
ネロは二体のゴブリンの攻撃を空中で回転して避けると、そのまま二体同時に頭部を蹴り付けて倒していた。
俺は先ほどと同じ方法でゴブリンの剣を避けようと急停止しようと足に力を掛け、踏ん張ろうとするが、そこで、ゴブリンのニタァと笑う顔が目に入る。
しまった! こいつ振り被ったまま振り下ろしていない!
一歩踏み出したゴブリンは俺目掛けて剣を振り下ろしてくる。
俺は急停止をするのを辞め、力を抜くことで慣性の法則で身体が前方へと引っ張られる。
その力を利用してゴブリンの右側へ身体を捻りながら、回避を試みる。
ゴブリンが振り下ろした剣はギリギリ俺に当たらず地面へと向かう。
微妙に回転しながら空中に投げ出されている俺は、体勢は悪いがこのままゴブリンの首へと蹴りつける。
うまく攻撃できたものの、着地のことなど考えていなかった俺は頭から地面に着地する羽目になった。
どわあああああ!
痛ってえええええ!
痛みに耐えながらゴブリンの状況を確認すると絶命しているようだった。
なんとか倒せたか。
引き続き俺達は走り出す。
そして、開けた場所に出た俺達が見たものは、大量のゴブリンとゴブリンの集落だった。
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