第13話 あなたとコンビに
だいぶ更新が遅れてすいませんでしたぁ(;∀;)
悟桐グループの保養施設「青桐ハーヴェスト」は、北軽井沢の中心街からかなり離れた山林部にある。はっきり言うと、近隣に人なんぞ住んでいない。
当然、保養施設や研究施設で働いている人の為に、敷地内に幾つかコンビニがある。
そして、私たちが宿泊している悟桐学苑研修センター(通称、ホテル)の裏手の建物1階には「あなたとコンビに」のフレーズで有名なファミ○が入っている。ホテルの裏を抜けて道路を渡ると、そこはファ○マの駐車場だ。
私と燎ちゃんは、ささっと道路を渡ると“例の入店音”に迎えられてコンビニに入った。
「おー、結構いろいろ揃ってるなぁ」
燎ちゃんがキョロキョロと店内を見回すと感心したように呟いた。
オフィスビルのテナントとか繁華街とかのコンビニは、やたら狭くて品揃えも必要最小限とかいうところも多い。ここは、そこそこ広くてフルスペックだ。
「うはぁ⋯⋯⋯⋯こ、こ、こんびにだぁ♪」
私はフルフルと感動に打ち震えていた。
だって、コンビニで缶チューハイとツマミを買って出たとこまでの記憶しなないのよ?“うふふ、晩酌♪晩酌♪”って気分だったのに!
──ふぁあー、いっぱい品物がありますねえ⋯⋯。
「せりか」も初めてのコンビニに、なにかドキドキしている。
ど、どうしよ⋯⋯何買おうかな??
予算には限度がある。⋯⋯⋯⋯瀬梨華は普段、現金を持たせてもらえない。
何か必要であれば、使用人に頼めば事足りてしまうからだ。緊急で必要な場合でも、私の専属の相良に頼めば、速やかに用意される。勿論、おジャンクなフードなぞ、頼んでも絶対に買ってくれない。
今回は、使用人抜きの生徒のみの行動が多いので、特別の特別で⋯⋯600円程支給されたのだ!!
やったぁ♪わぁ────いっ!!
⋯⋯⋯⋯ねえ?私、ほんとに金持ちの令嬢なのかしら⋯⋯⋯⋯??
「おい、ぼけっとしてる時間ねえぞ?」
「あっ!そうだった!」
燎ちゃんに促されて、お弁当コーナーから順に回る。
さすがに⋯⋯夕飯はもう食べたしなぁ⋯⋯がっつりお弁当とかは無理だ。⋯⋯正直いって悔しいです⋯⋯。瀬梨華、少食だしな。
お菓子はバスの中で、小川さんに貰ったし⋯⋯
今回は、がまんがまん。
「おい、ソレは幾らなんでも中坊じゃ無理だってば」
「⋯⋯⋯⋯ハハッ、か、買わないよお?」
燎ちゃんに酒類売り場から引き剥がされる。
「食い入るように、グレープフルーツ味の缶チューハイ見つめてたじゃねえか!」
えー、だってぇ⋯⋯⋯⋯。晩酌を飲み損なったのは、けっこう前世の未練なんだもん。
一通り見て、腹は決まった。ハムたまごサンドと鮭おにぎりとガリガリとしたアイスバーだっ!
時間がないので、大急ぎでレジへ。
すると、燎ちゃんは、お好み焼きを買うらしい⋯⋯じゅるり⋯⋯。
「⋯⋯⋯随分と、物欲しげだな」
「ハッ!?⋯⋯私としたことが!」
「1~2口くらいやるからっ、もおっ!」
うへへ、やったぁ♪ お好み焼きまで食べれるなんて!!
呆れ顔の燎ちゃんとコンビニを出る。
こそこそーっとホテルの裏手に戻り、さっき使った非常ドアを、そおっと開けて中へ⋯⋯⋯⋯。
「なるほど。随分と庶民的なチョイスだな」
「ひぃっ!?」
「───っ!?」
二人して、そおっと振り返る。
非常口のドアの横に⋯⋯⋯⋯クラス委員でウチの班長でもある川端くんが立っていたのだ。ひ──ん!!
★ ★ ★
現行犯逮捕です。
叱られています。
お説教というヤツです。
ええ、ばっちりセキュリティー映像に写ってました。
道路を渡ってコンビニに向かうとこまで写ってたそうです。
呆れた向坂先生は、ひとまずクラス委員の川端くんに任せる事にしたそうです。
ですから、こんこんと川端くんに説教されています。
現在、ロビーのソファに座らされてます。
私の隣に燎ちゃん、向かいに川端くんが座っています。
最初、燎ちゃんが私を庇って「自分が無理やり瀬梨華を連れ出した」と言い張ったのですが、私が否定する間もなく川端くんが理詰めで論破しました。
「⋯⋯しかし、君たち二人が意気投合して、こんなことするとは」
「すいませえん⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯ちっ、悪かったよ」
燎ちゃんは、論破されたのが気に入らないのか、ふんぞり返ってソッポを向いてます。⋯⋯⋯⋯も、もうちょっと反省してます的なフォームの方が⋯⋯私はいいと思うよ?燎ちゃん。
「まぁ⋯⋯悟桐の敷地内だから、そうそう危険な事はないからいいものの、自分たちの立場をよく考えてほしいな」
「⋯⋯はい、反省しております」
私たち二人は、いろいろと学内で浮いた存在だ。余計なことをすれば、余計な風聞も立つということなんだろう。
一瞬、川端くんと目が合ってしまい、私はギクリと縮み上がって俯いた。
⋯⋯うぅ⋯⋯なんでか、川端くんと話するときってガチガチに緊張する。
最初の頃は何ともなかったのに、あの冷徹に何でも見透ような目でマジマジと見られると、余計なことまでゲロっていまいそうで不安で堪らない。
前世の記憶が甦りました、とか白状してしまいそう。もちろん、胡散臭そう無言であしらわれるのがオチだろう。そんなコトになったら、マジで凹む。
⋯⋯という訳で、折角、久々のコンビニフード達は⋯⋯⋯⋯先生たちに没収、と相成ってしまいましたとさ。
うわぁああん!!
「ちぇっ、やっぱセキュリティーとかあったんだな⋯⋯しくじったぜっ」
二人して部屋に戻ると、燎ちゃんは、ぼすんとベッドに転がった。私も亮ちゃんの横に俯せで、ばたりと倒れこむ。ショックがでかい⋯⋯でかすぎる。
「お、おい⋯⋯まさか⋯⋯⋯⋯瀬梨華、お前⋯⋯マジ泣きしてんの!?」
「⋯⋯⋯⋯うるさい⋯⋯⋯⋯」
私が、俯せのまま、ぐすっと鼻をすすると、燎ちゃんがくくくっと笑いを堪えてる⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯笑い事、じゃない⋯⋯⋯⋯」
「だ──っ、ウチの学苑きっての金持ちのお嬢様が、コンビニのおにぎりとサンドイッチくらいで泣くなよな、もうっ」
「ぐすん⋯⋯だってぇ⋯⋯」
ぽんぽん⋯⋯軽く、燎ちゃんが背中を撫でてくれる。
⋯⋯⋯⋯うん。私、あやされてるね。くっ⋯⋯わたしゃ、幼稚園児か!?
とはいえ、渇望していたコンビニ食を喪失してささくれだった私の心には、効果てきめんの癒やしだった。
「よしっ。こうしよう。遠足中は、それなりにセキュリティーもあるし、コンビニは無理だとしてもよ?普段、だったらオレが学校行くついでに欲しいモノ買ってきてやるよ」
「それ!イイっ!!燎ちゃん、ホントに!?」
私はガバッと起き上がると燎ちゃんの両手を掴んでシェイクしていた。
★ ★ ★
翌日。
都内、本郷通りを悟桐学苑中等部の制服を着た少年が、のんびりと歩いていた。
校章バッヂのカラーリングからすると、2年生であるということがわかる。
すらりとした長身で、繊細な顔立ちの甘いマスクと少し長めの艶やかな黒髪の少年は、間違いなく人目を惹く美形だった。
お昼に近い時間帯とはいえ、学校は普通に授業しているはずで、イイトコのご子息様が通う悟桐学苑生徒が授業をサボって近所の商店街をウロウロしていること自体、本来は異様な光景である。
にも、かかわらず、その男子生徒はまるで注目をあつめることなく、のんびりと歩いていた。
ときおり、今時のオシャレな雑貨屋の前で、何か小物を手にしてみたりしている。
そんな彼が、全く人目を惹いていないのだ。中学2年の美少年が、平日昼前の商店街をウロウロしていること以上に、その事にまるで気付かない周囲の人たちが異様だった。
周囲を行き交う人々は、“そこに彼が存在していること自体に気づいていない”かのように。
今、自分が彼を避けたことすら自覚もしていないくらい、それは異様だった。
ごくり、と唾を飲み込む。
……これは、マズい。
明らかに「見てはいけないものを、見てしまっている」
別に、彼が幽霊の類ではないと……思う。たぶん。
今日になって、急に霊能力に目覚めたとも思えない。
彼が、立ち止まるとスマホを取り出し何事かを話している。よかった、幽霊じゃなさそうだ。
……りんどうせりか……北軽井沢……ごとうの目は避けろ……
ちっ……。
メガネを拭くフリをして視線を外す。
辛うじて微かに動く彼の唇の動きを読めてしまった事を後悔する。
気付かれた。いつも、人生後悔だらけだ。
オープンカフェのテーブルに広げていたノートPCを閉じてカバンにしまう。
カフェテラスを出ると、彼の方に向かってまっすぐに歩を進める。
目線は彼の背後。絶対に彼とは目を合わせない。
“彼”は意外そうな表情を微かに浮かべて、こっちをマジマジと見ている。
……そりゃそうだ。疑わしいヤツが、逃げずに向かってきているのだから。
ニコニコと愛想のいい笑顔を浮かべる。
「お待たせしましたか?」
僕は、“彼”の背後にいる人物に声をかけ、さも無意識に“彼”をよけて挨拶をした。
「あっ!ケントさんですか?」
コンビニの前で、ケントさんとやらを待っていた人物は、ぱっと明るい笑顔を浮かべて、こちらにやってきた。……もちろん、僕はケントさんでも何でもない。僕が曖昧に頷き挨拶を交わした。
ハンドルネーム「さんたろ」さんと言うらしい。
ただ、さんたろさんの立っている様子から、初対面の誰かと待ち合わせをしているのは、先ほどからわかっていたので、この場を誤魔化す為に声をかけたにすぎない。
「ちょっと、そこらで腹ごしらえに付き合ってもらえませんか?お腹へっちゃって」
「あはは、もうお昼ですもんね」
僕は、急遽さんたろさんと昼食を食べることになり、白山方面に向かって歩き出した。
後で事情を説明して、ケントさんなる人物も呼び寄せた方が良さそうだ。
背中に、ゾッとするほど冷たい視線が刺さりっぱなしだ。
──くそ。ジロジロこっち見るなよ!
さんたろさんと世間話をしながら歩いている間じゅう、ずっと“彼”の視線を背中に感じる。
ここで不用意に振り返ったり、不自然に曲がったらアウトだ。
……と、不穏な視線が逸れるのを感じる。どうやら、“彼”は僕に興味を失ったようだ。
さんたろさんとの話題に合わせて、自分のスマホの画像を見せる。
「おおー!このキャプチャ画面は!?さすがケントさん!いいモノをお持ちだ!」
「ふふふ、twitterで限定公開された画像で、TLに流れた時に即座に3回保存しましたよ」
自分のスマホをしまう瞬間、カメラを起動して背後の“彼”を撮影する。
ジェイルロックを解除しているので撮影音はしない。
学校をサボっちゃいかんよな……ホント。えらい目にあった。
当分は、この界隈に来るのはやめとこう。
…………。
“彼”──橘草介は、スマホをしまった。
気がついたのは、コンビニの前に差し掛かった時だ。
カフェテラスの席に腰掛けた同い年くらいの少年がこちらを見ていた。
眺めるのではなく。はっきりと明確に、自分を見ていた。
──珍しいこともあるもんですね。
それは一瞬だった。
メガネを掛けた少年は、自分にまるで気付かない様子で、待ち合わせていた知人と立ち去っていった。
だが……おかしい。
草介にしては珍しく、その違和感を具体的な言葉にすることはできなかった。
その事自体が、更に疑惑を深める。
スマホがポケットの中で振動してメールの着信を知らせてくる。
なかなか、仕事が早い。
画面を確認する。
……杉並3中1年、雨野健治
比較的、詳細なプロフィールと画像が添付されている。
画像からして、今、目の前を通りすぎていった少年に間違いない。
プロフィールに特に目立った事柄は書いてない。ごくごく普通の中学生だ。
ちょっとカメラおたくで、運動が苦手。見た目は人並み。
少し変わっているといえば、父子家庭で父親は自衛隊勤務というところか。
ただの偶然とも思える。普通の中学1年生なら。もう少し検証してみなくては確定できない。
しかし……彼が、もし自分と同類ならば。今のは擬態だ。
それも、厄介なくらい優秀といえる。
草介は、頭の中のチェックリストに、「雨野健治」を追加した。
まあ、イレギュラーがあるから人生は面白い。
……さて、チェックリスト筆頭の竜堂瀬梨華は、どう動くんでしょうね?
草介は酷薄な微笑みを唇に浮かべると、青く晴れた空を見上げた。
★ ★ ★
私は、基本長距離走とかスタミナ勝負はニガテだ。
もちろん、山登りやトレッキングなんぞ論外。
なので、今、私は最後尾をヘロヘロになりながら歩いている。
「瀬梨華さん、顔色悪いけど……少し休む?」
心配そうに私の顔を覗き込む小川さんに、返事をすることもできず、ただ首を横に振った。
遠足の二日目は、普通に遠足だった。
悟桐の保養施設のトレッキングコースを登って、山頂でお昼ごはんの予定なのだけれど…………
……お昼までに、これ……着くのかな??
私と付き添いで保健委員の小川さんの二人は、だいぶ置いて行かれている。
「ホントに、瀬梨華さん……表情に出ないね」
「いやっ、これでもっ……かなり苦しいんだ……けどなぁっ……」
荒く息をつきながら、汗を拭う。
私の中のイメージでは、かなり苦しい顔になっている筈なのに、どうもそうはなっていないっぽい。 こんな時でも、ポーカーフェイスは健在だ。
昨日、班で少し歩いた時みたいに意識朦朧になる訳にもいかない。
──それにしても私ってば、ほんと体力ないなあっ。
なんとか、少し開けた場所に辿り着いた。
少し切り立った崖になっていて、遠くには浅間山がみえる。
一休みするにはちょうど良さそう。
5人ほど先客がいる。それも余り嬉しくないクラスメートだ。
……何かと私に敵意を向けてくる。小さい嫌がらせとか、陰口とか。
「はっ!ようやく来たわね。大金持ちのお嬢様」
男子3人女子2人の内のリーダー格の城田舞凪は、酷薄な冷笑を浮べると、私たちの方に向き直った。
お読みいただいてありがとうございます。
ちょっと同人コミック化のお話があったりして
その辺の準備とかで本編が遅れてしまいました。
本末転倒で申し訳ありません。
もうちょっとすると、準備活動も落ち着くと思うので(ノ∀`;)
引き続き、ぽちぽちと書いていきますので、これからもよろしくお願いしますっ!




