第七十三話 第十五章「父を探して」其の十二
帰ってみると、蒼馬と置いて行った龍三丸が親しくなっていた。
「この壺の中のミズクラゲの子供はずいぶんと懐いているね」
蒼馬は寝床に横になりつつ人差し指で龍三丸の顎の下を撫ぜながら言った。
「珍しいことなんです」
泰雅は水筒と竹の葉で包んだ塩にぎりを蒼馬に渡し、蒼馬がそれにぱくつくのを見ながら返した。
「実際その子は三匹いる水龍の候補生のなかでも一番人見知り(ひとみしり)する方なんです」
「水龍の候補生?ミズトカゲの子供が?」
蒼馬は驚いて、言った泰雅の顔を見た。
泰雅は、自分がミズトカゲこそ海龍の幼生だと思った経緯について詳しく話さないといけなかった。
聞き終わると蒼馬は言った。
「なるほど、そういうこともあるかも知れない。私のほうからはたらきかけて、北方王国連合からもその海龍研究所を支援してもらい、研究を進めてもらおう」
「ありがとうございます。瑠璃さんも喜びます」
ここで泰雅は、海堂瑠璃について蒼馬にまた詳しく説明しなければいけなかった。
それにしても、龍三丸は実際珍しく蒼馬に懐いていた。
多少なりとも龍鳥に関係があるからかもしれない。
泰雅はそう思った。
だがそこにはそれ以上の何かがあった。
蒼馬の何かが、龍三丸を懐かねばいけないと思わせているようだった。
そしてそれは、泰雅も同じことだった。
蒼馬は相変わらず寝床の上で泰雅が持って来てくれた水筒の水と塩にぎりにぱくつきながら言った。
「さて、君にとって僕は憎き親の仇ということになる。ところが君はそんな僕に水と食糧を恵んでくれる。これはどうしたことかな?」
「もう親の仇じゃありません!」
泰雅は強く言った。




