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蛇眼破り第二部~おわらせるもの~  作者: 石笛 実乃里


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第六十五話 第十五章「父を探して」其の四

現にいまも(りゅう)三丸(さんまる)は、(たい)()がその身をあずける(くら)の後ろに()わえ付けられ、全開になった木の箱から身を乗り出すようにして(きり)領域(りょういき)を見つめていた。

まるで前回の(りゅう)(ちょう)との出会いを(なつ)かしむようだった。

瑠璃(るり)龍一郎(りゅういちろう)は半開きの箱のなか相変わらず元気に暴れている。

霧の領域が初体験でミズトカゲも連れていない琴音(ことね)は緊張した様子で言った。

「打ち合わせ通り、手分けして行こう」

琴音は言った。

「わたしは右手の方向を行く。堅柳(けんりゅう)泰賀、おまえは左の方向を行って父上を捜そう」

泰雅はうなずいた。

実際鈴之(すずの)()(そう)()が二、三日前に泊まったであろう(はた)()を特定し、彼が会って言葉を交わした人をつきとめることができたのだが、彼がどうやら心の病を(いや)せるといわれる“時の洞窟”まわりの霧の領域に出かけた、ということだけだった。

広い霧の領域のどこに出かけたのか、ということまではわからないのだった。

これでは父が()りついたといわれる鈴之緒蒼馬に出会う前にこっちが野垂(のた)れ死んでしまう、と泰雅は思った。

鈴之緒琴音は言うや否や馬を走らせ、霧の向こうへ去ってしまった。

瑠璃はと思えばしばらく自分の馬で泰雅の後ろをついて来た。

おそらく琴音が帰ってこないか警戒したのだろう。

泰雅とふたりきりになる好機と捉えたのかもしれない。

だがしばらくして、それどころではなく、父親探しに専念したい泰雅の気持ちに気が付いたのか、事前に打ち合わせした通り霧の向こうの別の道へ走っていってしまった。

ひとりきりになった泰雅はそっと鞍の後ろに手を伸ばした。

そこには木の箱、龍三丸の安らぐ、水を入れた(つぼ)の入った木の箱があるのだった。

龍三丸のためにも、いま野垂れ死にするわけにはいかない、

その龍三丸が、今は珍しく箱から身を乗り出すように活発に動いている。

泰雅は前回のことを思い出した。

龍三丸が龍鳥と出会った…

目の前に影が走った。

霧の向こう、四つ足で尻尾を立てている。

泰雅には見覚えがあった。

猿田彦(さるたひこ)さま!」

泰雅は叫ぶように呼びかけた。

影はぱたりと止まり、返事をした。

「いかにも、わたしは猿田彦だ」

猿田彦は認めた。

(なんじ)は堅柳泰賀と、(かい)(りゅう)幼生(ようせい)のミズトカゲだな?」

「はい!」

泰雅は勢い良く返事した。

「堅柳泰賀と龍三丸です!」

鈴之緒琴音もここにいれば、と思ったがあいにく琴音は霧の領域に入ってすぐに手分けして琴音の父の鈴之緒蒼馬を探す約束通りに泰雅と別れている。

「うむ、そうだな。この間汝らとは会ったばかりだが」

猿田彦は人間同様顎に手をやって考え込むように言った。

「前回龍鳥さまは汝より龍三丸に興味があったようだ」

猿田彦は言い、泰雅は

「そうですね」

と認めざるを得なかった。

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