第26話 キングの群れの掟と人の影
夜が明ける。
朝霧の中、ウルフキング。悠は群れを率いていた。
月下で生まれた子狼たちが走り回り、若い狼たちは狩りの準備を整える。
(悪くないな……これが“平和”ってやつか)
森の風が心地よい。
誰も命令せずとも、群れは秩序を保っていた。
熊王の時とは違う。
血に酔うことも、力に溺れることもない。
支配ではなく、導く。
それが“王”のあり方なのだと、ようやく理解できた。
《スキル《キング》安定化》
《支配率:83%》
(このまま……静かに生きていければ)
そう願った矢先だった。
森の外れで、煙が上がる。
人間の軍が、再び森へ侵攻を始めていた。
《外部勢力接近:人間部隊》
(また、か……)
悠は唸り、群れを見渡した。
子狼の瞳が、怯えたように揺れている。
(逃げても、追われるだけ。だったら守る)
彼は咆哮した。
百頭近い狼が一斉に走り出す。
風が爆ぜ、地が震えた。
悠の背に黒いオーラが立ち上り、王の紋章が刻まれる。
《ウルフキング・支配領域展開》
突撃。
人間の軍勢が崩れる。
槍を構える暇もなく、狼の群れが兵を飲み込んでいった。
叫び、血の匂い、そして、矢の音。
一本の矢が、悠の首筋をかすめた。
銀色の矢尻に、見覚えのある紋章が刻まれている。
《王殺しの武具、再使用確認》
(……またそれか)
怒りと悲しみが入り混じる。
体の奥から、熱が溢れ出した。
《暴走率:上昇中》
《討伐予兆発動》
(……くそっ、もういやだ……!)
悠は咆哮した。
その声は森全体を震わせ、光の波を生んだ。
だが次の瞬間、兵の放った光の槍が悠の胸を貫いた。
群れの遠吠えが響く中、彼の体は光に包まれていく。
《致命傷確認》
《転生条件成立》
(……また“王”か。次こそ、誰も傷つけずに……)
悠の意識は、ゆっくりと暗闇に沈んでいった。




