第24話 熊王、暴走の果てに
炎が森を舐め、地が揺れた。
熊の王。悠は、もはや理性を失っていた。
《暴走率:92%》
《理性機能、限界》
(やめろ……止まれ、俺は……王じゃない!)
叫びは届かない。
筋肉が勝手に動き、爪が仲間の獣を切り裂く。
討伐に来た人間たちは恐怖の声を上げ、矢を放ちながら逃げ惑う。
《熊王・暴威解放》
《属性:破壊/支配》
(もう嫌だ……俺は、ただ穏やかに暮らしたかった……)
地面を叩くたび、炎と衝撃が走る。
体の奥で黒い光が蠢き、心臓を焼いた。
《干渉継続:王殺しの呪詛 発動中》
《王権スキル、崩壊段階》
(……これが、《キング》の呪いか)
自分の中で何かが崩れていく音がした。
暴力、支配、恐怖。王である限り、誰かを屈服させる宿命。
《警告:討伐部隊接近中》
森の外から、鋼の鎧をまとった兵が雪崩れ込む。
彼らの手にあるのは、銀の槍――“王殺しの武具”。
「あれが、熊王か!」
「逃がすな! 王を討て!」
悠は牙をむいた。
炎を纏い、突進する。
だが槍の光が、腹を貫いた。
《致命傷確認》
(……俺は、王じゃ……ない……)
口から血が溢れ、足が崩れる。
視界が赤く染まり、耳鳴りだけが残った。
その瞬間、頭の奥で、何かが弾けた。
《スキル《キング》発動条件:満たす》
《次転生先、選定開始》
悠は空を見上げた。
煙の向こうに、星が一つだけ光っていた。
(ああ……また死ぬのか。でも、もう少し……“ましな王様”になりたいな)
《転生先決定:ウルフキング》
光が身体を包み、熊王は灰となった。
残されたのは焦げた王冠と、静寂だけ。




