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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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6


 私はじっと騎士達が鍛錬をする様子を見つめている。あんなに重そうな武器……練習用の木剣を振りまわせるだけでも凄いわよね。

 私はあんなものを振り回すことなんて人生で一度もないから、余計に驚いた。



 ずっと騎士達のような戦闘職というのは遠い世界の人のように思っていた。家族の傍には、騎士達が控えていることは見ていた。ただ戦闘している場面に私が遭遇したことはなかった。

 私自身が外に出かけることが少なかったからが一番の理由であるけれど。

 それにしても長剣のように細い武器を振り回している方も凄いなと思うけれど、それ以上に大きなものを振り回しているのを見ると思わず驚いてそちらに視線を向けてしまう。

 あんなに身体を動かして疲れたりしないのだろうか。




「……シアンナ、あいつが気になるのか?」

「え?」



 私がじーっと大剣を振り回す騎士を見つめていたら、グラナート様から声をかけられる。少しだけ不機嫌そうに見えるのはどうしてだろうか。何か気に障ることでもしてしまったのだろうかと少し不安に思う。

 ……私はグラナート様に嫌われたくないんだなと改めてそう思った。





「グラナート様、ごめんなさい」

「なぜ、謝る?」

「だって、私がグラナート様に不快な思いをさせてしまったのでしょう? 私、理由は分からないけれど、グラナート様に嫌われるのは嫌なのです。だからあの……私に至らない点があったら説明いただきたいのです。そしたらグラナート様に嫌がられることをしなくて済みますから」




 やっぱり私は……お姉様と比べると全然なんだと思う。だってお姉様だったら……グラナート様がどうしてこんなに言うのか分かるはずだもの。



「謝らなくていい。……俺がただ妻が他の男を見ているのが嫌だっただけだ。シアンナに何か思っているわけじゃない。寧ろシアンナに興味を持たれた騎士に苛立っただけだ」

「……そう、なんですか? ならよかった。私はグラナート様に嫌われたら嫌だなと思っていたので。えっと……騎士達のことを見ない方がいいなら、こうやって訓練を見に来るのもしない方が……? それか、こう……目をふさいでみないようにしたらいいですか?」




 どうしてグラナート様は、私が騎士を見るのが嫌なんだろうか? それに私が見つめていたら騎士達がグラナート様に嫌われてしまうのだろうか……。それはちょっとどうなんだろうなんて思って、両目を自分の手でふさいだ。




「ははっ」




 そうしたら、グラナート様の笑い声が聞こえてきた。



 嫌な気持ちは無くなったのかなと思いながら、指の隙間からグラナート様を見る。優しい表情をしている。

 そんな顔を見るとほっとした。

 ああ、私の発言とか、行動って間違ってなかったんだな、失敗していなかったんだなってそう思えた。




「シアンナ、そんな風に目をふさがなくていい。……領主夫人として騎士を見ることは構わない。だが、俺の方をもっと見ろ」

「グラナート様は、私に見られたいんですか?」

「ああ。妻の視線が他の者に向いていたら嫌なのは当然だろう? だからなるべく俺のことだけ見て、俺の声だけ聞いているように」

「わかりました」



 よく分からない。

 どうしてそんなことをグラナート様は望むのだろうか。




 ……グラナート様はもしかして、私が思っているよりも私のことを大切に思ってくれている? ううん、そんなわけない。

 私なんかが、大公として立派に過ごされていて、こんなにかっこいい人に好かれるわけがない。

 お姉様ならともかくとして、私はグラナート様に好かれる要素なんて一つもない。

 お姉様が言っていたようにグラナート様の機嫌を損ねて殺されたとしてもおかしくなかっただろう。だからうん、そんなわけない。






「それでどうしてあいつを見てたんだ?」

「あんな風に剣を振りまわしていて凄いなと思って。私は武器とか持ったことないので、体力があるんだなって。特に大剣を持っているのにびっくりしてしまって」



 私がそう口にすると、「なんだそれ」と言って、グラナート様は笑った。




「俺もあのくらい出来る」

「そうなんですか?」




 グラナート様が戦えることは私も知っている。噂でも散々聞いていたから。

 だけれどもなんだろう、普段から優しいからあんまり武器を振り回しているような様子は想像が出来なかった。

 やっぱり戦っている姿って、今のグラナート様と全然違う雰囲気なのかな。

 でもきっとグラナート様は、妻である私を傷つけようとはしないと思う。そもそも私だと一瞬で殺されて終わりだし。



 そんなことを考えていると、グラナート様が「ちょっと待っていろ」とそういって騎士達の元へと近づいた。


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