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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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「今日はお招きいただきありがとうございます」

「大公夫人とお茶会が出来るなんて身に余る光栄ですわ」



 私、シアンナは今、お茶会をしている。というのも先日手紙の返事を出して、お茶会の場が整えられることになった。



 グラナート様は、少しだけ心配していた。私が虐められないかと、そんなことを思っていたみたい。私のことを何歳だと思っているのだろうか……? と少し疑問に思った。

 他でもないグラナート様が私に大丈夫だって言ってくれたんだ。だからこそ、私は自分でも驚くぐらいに落ち着いている。



 グラナート様は、私が少し失敗しても許してくれる。それに私なら問題ないってやれるんだってグラナート様が信頼してくれている。だからこそ私は頑張りたいなとそう思ったのだ。



 今回、お茶会に参加しているのは女性陣だけだ。男性もいるような社交の場だと、グラナート様も一緒に同行してくれると言っていた。……私は自分のことを可愛いとかは思ってない。でもグラナート様は私を可愛いって、沢山おっしゃってくれる。

 だからこんな私にも近づいてくるような男性は居るのかもしれない。もちろん、私は既婚者だし、グラナート様が大切だから彼らに近づくことはまずない。グラナート様をもっと安心させたいな。悲しい思いは絶対にさせたくなくて、寧ろ笑っていて欲しいとそんなことしか考えられない。




 だからグラナート様のためにも私はもっとしっかりしたい。




「この度はお誘いに乗ってくださりありがとう。こうして皆様とお茶会が出来ることを私もとても嬉しいわ。お茶会を主催するのは初めてだから、至らない点もあるかもしれないけれど、楽しんでいただけるようにするわ」



 私がそう言って笑いかけると彼女達は頷いてくれる。



 なんというか、お茶会もお姉様とお母様が主役の場にしか行ったことはなかった。私はなんというか、添え物か何かのような扱いだった。

 そのことを思い起こすと、苦笑してしまいそうになる。



 私はずっと、蔑ろにされることが当たり前だと思っていた。こうして大公夫人として人と関わっていると余計にそのことが顕著に分かる。

 お茶会の場で私が話の中心になることなんて一度もなかった。寧ろ私が言葉を発すると邪魔だと思われるような態度をされることも多かった。



 ……お姉様もお母様も私が口を開くと、止めていたように思える。

 私はお姉様のことも、お母様のことも嫌いじゃなかった。寧ろ凄いなという憧れはあった。

 でも向こうからすると私は不出来な娘でしかなかったのだろうなと思う。私が口を開くと、雰囲気を悪くしてしまうようなそんな感じなんだろう。




 私は実の家族には、何も信頼されていなかったのだ。……それって寂しいことだなって思った。



「大公夫人様は、大公様と仲睦まじい様子でとても羨ましいですわ」

「パーティーの様子を見た限り、大公様は夫人のことをそれはもう大切になさっているご様子ですものね」


 にこにこしながら、貴族夫人たちにそう言われた。



 話のきっかけとして、グラナート様のことを口にするのが一番楽だったのだろうな。

 この場に居る人たちは、先日のパーティーで少なからず交友を持った方々。初対面というわけではないけれども、まだ互いのことを知っているわけではないのだから。

 これから仲良くなれたら嬉しいな。……それこそお友達のような関係になれたらなんて淡い期待を抱く。



 とはいえ、身分差や立場はあるから遠慮の一つもない関係というのは難しいかもしれない。それでも仲良しな同性の方が出来たら嬉しいのだ。



「ええ。グラナート様は私によくしてくださっておりますわ」



 そう言いながら、“愛している”と言われた時のことを思い浮かべて顔が赤く染まった。こんなお茶会の場で顔を赤くするなんてすべきじゃないのに!

 でも思い出したら、こう、恥ずかしくなってしまって!!




「あらあら?」

「まぁ!」



 私の様子を見て、貴婦人たちはとても楽し気な様子を浮かべていた。

 大公夫人という立場であるのならば、もっと余裕を見せた方が絶対にいいはずなのに。ますます恥ずかしくなって、いたたまれない気持ちになる。




「少なからず大公夫人様は、大公様のことを思っていらっしゃるのね」

「とても素晴らしいことだわ。夫婦仲が良くないと大変ですもの。それにしても政略的な結婚でありながら、思いあっているのは素敵ね」



 本心は何処にあるかは分からない。もしかしたら私の様子を内心は良く思っていない人もいるかもしれない。

 しかし私に対して悪感情を思われたくないからか敢えて良い様に言ってはいるのかな。本心だったら、楽なんだけれど……。


 そのあたりの心情は分からないけれども、本心からの言葉だと嬉しいな。そんな風に私は思った。



「はい。グラナート様と結婚することが出来て良かったと心から思っておりますの」



 ひとまず私にとってその言葉は真実なので、そう口にしておく。




 その後も楽しくおしゃべりが続けられた。様々な話題を皆さんが提供してくれて、凄く楽しかった。


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