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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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嫁いできた妻のこと ④~グラナートside~

「グラナート様、今日のパーティーとっても楽しかったですわ」



 シアンナは満面の笑みでそう告げる。ただただ可愛い。パーティーを行うことを不安がっていた妻が、こうして幸せそうな笑みを浮かべているとほっとする。



「良かったな」



 俺も可愛いシアンナを沢山みられて 、満足した。これまでパーティーを主催することなんて、あまり興味がなかった。必要に応じて行っているだけで、煩わしいなといつも思っていた。

 だから結婚しても、それは変わらないだろうと思っていた。




 なのに嫁いできたシアンナが楽しそうだったから、パーティーをするのも悪くないとそう思えた。俺はこんなに単純だっただろうか、と自分でも驚く。




「……私、実家でパーティーに参加した際、ダンスの時も雑に扱われていたと気づきました。今までそんな自覚はなかったけれど、私は蔑ろにされていたのだなと気づいて凄く不思議な感覚になりました」

「もう二度とそんな思いはさせないから、当たり前だと思わなくていい」





 シアンナの実家の話を聞けば聞くほど、いら立ちは増す。こんなに可愛い生き物にそんな扱いをするなんて正気の沙汰じゃない。シアンナの姉ばかりを優先していたようだが……信じられない。

 シアンナとすごせばすごすほど、大切にしてやりたいという気持ちがどんどん増していく。





「はい。ふふっ、私、嫁いでくるまでずっと今までと同じような日々を過ごすのだと思っていました。私が誰かに愛されたりとか、こんな風に認めてもらえるなんて想像も出来なかった。でも今は不思議と……社交に関しても前向きに挑もうと思えています。全部、グラナート様のおかげです。ありがとうございます」




 真っすぐにシアンナは俺の目を見て言う。美しい紫色の瞳が、俺を見つめる瞬間が好きだ。俺もずっと見ていたくなる。



「えっと、それでグラナート様……。パーティーの時に言われた言葉が気になっていて」



 シアンナの言葉を聞いて、何を言われたのだろうかと心配になる。




「何を言われた?」

「そのですね……。私がグラナート様のことをじっと見つめていたら、「愛しているのね」と言われたんです。ただ私、愛とかよく分からないんです」

「そうなのか」

「はい。もちろん、グラナート様と一緒に居るのは楽しいです。グラナート様のゼラニウムのような瞳も、向けられる視線も……。あとはいつも私を肯定してくださっていて、それも嬉しいです。私は自分がグラナート様の妻であることも何だか信じらないような気持ちで、暗い感情ばかり伝えてしまっていました。でもグラナート様はそんな私のことを、まるで宝物か何かのように扱ってくれて……愛は分からないけれど、あなたの妻で居られることが嬉しいです」





 本当に可愛い。一生懸命、俺と一緒に居ることが楽しいと、伝えてくれるシアンナを見ると思わず抱きしめたくなるぐらいだった。

 ただぐっとおさえる。なぜなら、シアンナが一生懸命言葉を伝えてこようとしているのだ。それを阻害する気はない。




「俺もシアンナが妻であることが嬉しい」

「お互いそう思えているのは、良いことですね」


 シアンナがにこにこと微笑んでいる。



「愛は分からないですけれど、私はこれから先もグラナート様の傍に居たいです。もちろん、その……グラナート様が私を妻にしたままは嫌だと思われたり、他に好きな方が出来たら身を引きますけれどそれまでは私が妻で居られたらなって」



 嫁いできてから自信を増すことが出来たと、そうシアンナは言っていた。なのにやっぱり彼女は自分のことを理解していない。



「どうして、そんなに自信がないんだ? 俺はシアンナ以上に可愛い女を知らない」

「そ、そんなことはないですよ」


 言い過ぎだとばかりに反論をされる。



 シアンナは愛というものは分からないらしい。俺も誰かにそう言った感情を抱いたことはなかった。けれども……シアンナと過ごしているとこれが愛なのかもしれないとは思った。

 俺はシアンナを誰かに渡してくないと思っている。俺の傍でずっと、生涯傍に居てくれたらいいとそうも感じている。

 それならば俺が言う言葉は決まっている。




「シアンナが俺のことを愛していなかったとしても、俺はシアンナを愛している」

「……え?」

「俺の妻は生涯シアンナただ一人でいい」



 それは心の底から思っていることだ。シアンナは俺が彼女を捨てるのではと思っているようだが、逆だと思う。

 どんどん自信をつけて、更に可愛くなっていくシアンナが俺の元から去っていく確率の方が高いのではないだろうか。



「だから俺の方こそ、シアンナから愛してもらえるようにするから覚悟しとけ」



 そう言ったら、シアンナは顔を真っ赤にして頷いた。


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