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見舞い。悠々、小悪。

大変なミスから回復。お待ちしてくださっていた方、どうも申し訳ありませんでした。サブタイトルをクリックして首をひねられた方も多かった事と思います。今後一切この類のミスは無いよう、気をつけたい所存です。

「よし、蒼ちゃん、結婚しよう」

「先輩、プロポーズにしては眼が怖いです」

「それだけマジなんだよ」

「顕正くん、あたしには辛辣な態度とったくせに。当てつけのつもり?」

「お兄ちゃんは僕のイイナズケなんだから、浮気はめっ、だよー」

「はん、最初は殺意すら湧いてたけどよ、此処まで来ると同情するぜ、親友」

「同乗する気は無いかな?」

「皆無だな」

さて、と。あんまり使いたくないんだけどな、巷で、特にネット界とかで頻出する言葉は。でもだ。

どうしてこうなった。


部屋のドアに二回、リズミカルに手の甲をぶつける。コンコンッと軽快に音が鳴って、少し間が空いて中から「はぁい」と声が返ってきた。その声色を聞く限りは、元気そうである。心配も少し薄れた。

「なに? 緑? あんたノックなんてしたことあったっけ」

続いたのは、そんな台詞。あれ? 緑は今日僕が訪問することを、蒼ちゃんに教えていないのだろうか。後ろから着いてきていた緑を一瞥すると、彼女はしまったと言う風な表情を浮かべていた。……一瞬故意を疑った自分が滑稽に思えた。何と言うか、流石だ、緑。

「緑お姉ちゃんじゃないよー、紫だよー」

そしてこの子の割り込みタイミングも、流石としか言いようが無いんだろうな。ていうかオイ、この流れで僕が入っていくのかよ。蒼ちゃん絶対狼狽するぞ。それでなくても不測の事態にさほど強い子でも無いんだから。

「あれ、紫? なぁに? また宿題教えてほしいの?」

ノックの主が紫ちゃんだと誤認した途端、蒼ちゃんの声音が幾分か優しくなる。なるほど、面倒見の良い姉と言う見立ては、大方僕の予想通りの蒼ちゃんだ。

「うんー。算数が分からないのー」

なんでそこでフォロー不可能な方向に話を持っていくんですか紫ちゃん……っ。入りづらさもひとしお。とはいえ、これ以上躊躇っていては、この子たちがいる場合余計に入りづらくなる事疑いなしだ。今ならまだ、ちょっとしたサプライズ程度で済ませられるかもしれないし、とっとと入らせてもらおう。

「入るね、蒼お姉ちゃん」

だからね紫ちゃん。とは、最早言うまい。この子はきっと僕を邪魔するために産まれてきたんだ。

「お邪魔するよ、蒼ちゃん」

「うん、どうぞ……って、あれ? せ、先輩!?」

予想通りをありがとう。やっと不測から片足を抜けた気がする。嵌っているのが両足なのが難点ではあるが。狼狽する蒼ちゃんに一しきり事情を説明すると、納得しつつも先ほどまでの対応に少し頬を紅潮させて、蒼ちゃんは若干俯き気味にしていた。申し訳ない気持ちもわいてくるのだけれど、こればっかりは紫ちゃんの教育を間違えた赤坂家全体の問題だと思う。

「う……。それを言われるときついです」

「ああ、もう一家の共通認識なんだね……」

「いえ、母と緑と、紅花まで騙されてます。紫は出来た子だって」

「……」

恐るべし、末っ子の魔力。紫ちゃんに限っての話だと、こればっかりは信じたい。世の全ての末っ子がこんなだったら世界はとっくに末っ子大国に支配されているだろう。駄目だ、僕の頭が悪くなってきた。お見舞いを要求したい。

「そういうことなら明日あたり行ってあげますよ。ところで先輩、今日は何のご用で?」

「ん。蒼ちゃんのお見舞いに来たんだよ」

「学校休めばって言ったの先輩でしょう……」

声を顰めて、蒼ちゃんが突っ込む。後ろから緑と紫ちゃんが覗いているのには僕も当然気付いていたからそれについて言う言葉はないけれど。

「成り行きなんだよ。緑が来てくれって言うからさ」

「どうせ、その方が私も喜ぶとか言ったんでしょう?」

「うむ、流石双子だ」

「……はぁ」

ため息をつく蒼ちゃん。この子は、一人であの姉妹をまとめ上げているんだろうか。緑が纏める側に参加する確率は地球の自転が逆回転どころか、軸がぶれて止まる寸前の駒みたいな回転をしはじめる確率くらいの天文学的数字が出る程のもので、紅花ちゃんは気が弱いし、おまけに彼女らの母親は日中家にいないわけで、うむ、酷い境遇だ、蒼ちゃん。さしもの僕も同情する。

「随分楽しそうですね顕正くん」

「君の眼はビー玉だ」

「おはじきだよお兄ちゃん」

「今姉に向かって暴言吐いたかな? 紫」

「緑お姉ちゃんが誇った!」

「何をだよ」

「違った、ひょこった!」

「なんか可愛いから許す!」

「顕正くんは紫に甘過ぎないかな!?」

「うるさい! 可愛いは正義なんだ!」

「先輩……」

部屋の外から覗き込んでいた二人が乱入するだけでこの体たらくである。山上は何処だ。振り返ってみると、居た、さっきまで緑達が居たドアの向こうで、腕を組んでにやついている。お前の所為で蒼ちゃんに侮蔑の眼で見られたじゃ無いか。ちょっと八つ当たり。

「ちょっとじゃねぇよ事実無根の言いがかりじゃねぇか十割方!」

「うるせぇ! お前はもうちょっと僕の苦労を知るべきなんだよ! 研究部員になったんだろうが!」

「お前の苦労なんざ知るか! 女に囲まれてえいこらやってるだけの何処が苦労だ? 手前俺の境遇忘れたわけじゃねぇだろうな」

「どなたでしたっけお兄ちゃん」

「……おい親友、このガキかっ裂いて良いよな?」

「その子については諦めろ山上」

本当に、いらないタイミングで最もいらない割り込みをしてくれる幼女である。このまま成長したら世界を崩壊させるのはこの子なんじゃないだろうか。

嫌だ。それはもう絶対嫌だ。

「ねぇだから顕正くん、紫にばっかり構わないでよ、実はロリコンだったの?」

「君はもう少し自重しようよ!」

「やだよ、自重なんてしてたら他の女の子に顕正くん取られちゃうじゃん」

「僕はそんなにモテる男になったつもりは無いから大丈夫だよ!」

「百歳のおじいちゃんになっても愛してるよ、顕正くん」

「今までに無い重さだ! 自重って自分の意志の重みを増す事じゃないからね!?」

「え? 『自分の愛の重みを今、確かめ直して相手に伝える事』の略語じゃないの?」

「君は馬鹿だ!」

「酷い、顕正くん」

「それは美稲のモノマネのつもりか!? 拗ねた表情までは似ているけれど!」

如何せんテンションの差があり過ぎる。いや、もう、この姉妹は手に余る。山上は役に立たないとして、赤坂四姉妹唯一の良心たる蒼ちゃんに向いて、救いを求める。

「……」

あれ、ちょっと仏頂面だ。

「な、なに、かな? 蒼ちゃん」

「いえ。……先輩は、私のお見舞いに来て下さったんじゃなかったんでしたっけ」

「えっと」

……これはもしかして、妬いてるのか? 蒼ちゃんが、蒼ちゃんの見舞いに来ておきながら緑や、それこそ紫ちゃんとばかり話してるのを眼の前で見せられて?

何それ可愛すぎる。この子が嫉妬だと。


かくして、話は冒頭に戻るのであった。……何というか、グダグダ、だね。僕らの会話に脈絡は無い。

というわけで、真・百話です。顕正の頭が壊れている意外、各キャラはいつも通り……かな?

この人たちの会話文は次々と勝手に喋りやがるので収拾をつけるのが難しいです(笑)

さて、ようやくこの作品も三桁話数の大台にのりました。拙作ですが、ここまで到達したのも読者の皆様が居てくださるおかげです。何時終わるのか、気付けば皆目見当もつかない状態に陥ってしまいましたが、よろしければ、末永く、顕正達の日常にお付き合いください。


それでは、感想評価等頂ければ幸いです。

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