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穏やかな朝

朝日が部屋に差し込んで目が覚める。

昨日も、遅くまで魔法陣を描いていたわ。

でも、お蔭で、何とか猫召喚の御札が300枚以上揃ったわ。

正確には、昨夜は30枚描けたから、以前のと合わせて310枚よ。

それと、猫手の御札も六枚追加で、全部で十枚。

あと、戦いに使うものでは無いけれど、真犯人を追い詰める為の切り札になる魔法陣も一枚。

その方のお立場や地位を考えれば、恐らく、最終的にはこの魔法陣に頼る事に成りそうね。

素直に罪を認めてくれれば楽なのだけれど……


この他にも、いつもの手袋、セクメトの慧眼、ノワールとブラン、それと、優弥くんから貰ったどんぐり二個。

これが、今日の私の戦力。

猫召喚の御札は心もとないのは相変わらずだけれど、必要な最低枚数は超えているわ。

これなら、公使と同程度のウェンディゴなら互角以上に戦えるはずよ。

でも……もしそれ以上の敵だった場合は……止しましょ。

どのみち時間は無いわ。

私の推理通りなら、犯人はウェンディゴに呪われているもの。

そうなる前に、片を付け無いと、また大惨事だわ。


身支度を済ませて、ホールに降りると、イシャイニシュスさんが待ってらっしゃるわ。

昨日、お話しした手筈通り、コヨーテの姿で。


「まあ!!大きな犬ですわね。その大きな犬は……小町ちゃんが拾って来ましたの?」

丁度、お母様と道彦もホールに降りて来たところだわ。

「お早うございます、お母様、ミッチー」

「お早う、小町ちゃん」

「お早うございます、お姉さま♪」

すかさず、ミッチーに朝のスリスリ。


「実はお母様、此方のワンちゃんも、訳あって一晩お預かりしましたの。一晩だけでしたので、黙っていましたけれど、御免なさいですわ」

「良いのよ、小町ちゃん。でも、それにしても大きい犬だこと。では、折角ですから、ワンちゃんも一緒に朝食としましょ♪ワンちゃんは何が良いかしら?魚かしら?お肉かしら?」

「お肉が良いと思いますわ。焼き加減は……レア……それともミディアムレア……」

イシャイニシュスさん様子を見ながら、焼き加減の確認。

「ワン!」

「ではミディアムレアで焼いて差し上げるのが良いですわ、お母様♪」

「この子はお肉に火を通して食べますのね。良家で飼われていたワンちゃんかしら……。分かりましたわ、ではそうしましょ♪」


あら?

道彦が興味深そうに、イシャイニシュスさんを見ているわ。

「ミッチー、大人しいワンちゃんですから噛んだりしませんわ。少し頭を撫でさせて頂きなさい♪」

イシャイニシュスさんは、え?という表情をなさってるわ。

人の姿の時より、此方(こちら)の姿の方が表情が豊かな気がしますわ。

「一宿一飯の恩義と思って、宜しくですわ♪」

と、小声で(ささや)くと、仕方がないと云う風に、道彦に頭を差し出して下さっている。

有難いですわ♪



その後、お母様と、道彦、それとコヨーテ姿のイシャイニシュスさんの四人で朝食。

お父様は、もうお仕事に、お出に成られた見たい。

一応、お母様にはイシャイニシュスさんは既に出かけたと、お話しすると、チョット残念がっていましたわ。


これから向かう大使館での事を思うと、まったく別世界の穏やかな日常。

私にとって、最も大切な時間よ。

この穏やかな時間が有るからこそ、洋館の地下の様な光景を目の当たりにしても、自分を見失わないで居られるんだわ。



食事を終え、リビングでお母様と、叔父様から頂いたセイロンティーを頂いていると、外に車が止まる音。

程無く千代さんが、諏訪さんと曹長さんが迎えにいらした事を告げる。


準備は出来ているわ。

リビングの絨毯の上で、くつろいでいたコヨーテ姿のイシャイニシュスさんも顔を上げ頷く。

「ではお母様、行ってまいりますわ。ミッチー、行って来ますわね」

出発前のスリスリでミッチー成分を充填する。


「行ってらっしゃい、小町ちゃん。でも、しつこく言って嫌われてしまうかも、ですけれど、危ない事はしてはダメよ♪」

「ええ、心配いりませんわ。危険な事なんて有りませんもの♪」

多分お母様は、全て御存じよ。

今まで起こった事も、これから始まるであろう事も……。

何しろ、爺が全て話しているはずだもの。

それでも、いつもの様に、学校へ向かう時と同じ様に、普段通り送り出して下さるお母様には、感謝ですわ。


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