↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/173

報告、諸々

英国大使館の悪魔事件は前編と後編の二部構成で考えていたのですが、後編が少々長く成りそうなので、此処からは解決編として章を分ける事にします。

屋敷の車止めに二台の車が停車している。

運転手はいつも通り、曹長さんと伍長さん。


あら?

伍長さんの運転する車に、布に巻かれた長い棒の様な物が……何かしら?

「諏訪さん、あの長い棒の様な物は何ですの?」

物干しざお?なんて事は無いでしょうけれど……。

「うふふ♪♪あれは私の秘密兵器よ♪♪」


私とイシャイニシュスさん、それと諏訪さんは曹長さんの車に乗り込む。

必然的に、爺はいつも通り伍長さんの車に。


車が走り出すと、諏訪さんから諸々の報告を受ける。

「先ず、保護対象だった旧降霊会の参加者だけれど、五名は無事保護出来たわ。でも……残念ながら二名が死亡、一名が重傷よ。死者と重傷者を出した現場を含む五か所で、眷属を使ったトラップが仕掛けられていたわ。因みに残りの三人は、アヘンの中毒者やチンピラを使って襲わせたみたいね。その三人は上手く逃げ込めたり、立て籠もれたり出来たらしく、無事保護出来たわ。で、今そのチンピラ連中を取り調べ中だけど……恐らくお金とアヘンで雇われただけみたいね。何も知らないと思うわ」

大熊さんも含めると三人もの方が……残念だわ……。

玉山さんは、またお二人もご友人を失う事に成るのね……御気の毒だわ。

もう少し早く手を打てていれば……いいえ、タラレバを言っても仕方が無いわ。


「それにしても、何故全員トラップを使わなかったのかしら?不思議だわ」

「諏訪さん、それは恐らく、丁度良い眷属が居なかったからだわ。あのトラップを仕掛ける為には、変異する直前か直後の者が必要だもの。まあ、小細工好きのその誰かさんにとっては、中途半端な小細工に成ってしまって、不本意でしたでしょうけれど♪それと、そのトラップに使われた眷属はどう成りましたの?」

「保護対象を殺害および、重傷を負わせたモノは、隊員が射殺、残りの二体は縛られたままだったから、確保できたわ」

「そうですの……」

仕方が無い事だわ。


「昨日徹夜で洋館の調査を行った結果も話すわね。地下のあの部屋からは、魔法陣が描かれたと思(おぼ)しき布も出てきたわ。まあ、ほとんど破損した物ばかりで、完全なものは数点しか見つからなかったけれど、トラップの眷属に巻かれていた目隠しと同じ魔法陣だったわ。それと……土手瓦さんの証言通り、庭から遺体が大量に出てきたわ。中には骨格が変形して、眷属と類似する特徴を持つものも八体有ったから、これも証言通りね。それでさらに……なんだけど、それとは別に大量の人骨が出てきたわ」


「それもお庭に?」

「ええ、でも埋まっていたのとは、チョット違うわ。蓋をされて、使っていない様に偽装した古井戸が有ったんだけど、その中から大量の人骨が発見されたの。それも……はぁ~……あんまり想像したくないんだけど、刃物で肉を削いだ跡が有ったり、煮たり、焼いたり、まあ、調理した跡が有ったわ。しかも、中には人の歯形が付いたものまで……」

まあ……想像はしていた事だけれど……。

「此処までのお話しを総合すると、恐らくですけれど、諏訪さんの御調べに成っていた行方不明事件。行方不明に成られていらっしゃった方達と言うのは、降霊会で贄にされた方、そして、それとは逆に彼らを贄としていた眷属……被害者と加害者の双方と言う事ですわね……」

「そうね、誰が被害者で、誰が加害者なのか……これからの裏付け調査が、思いやられるわ」

「まあ、密儀は一月(ひとつき)ほど、行われていなかったという話ですから、それより以前の行方不明者は、概ね被害者とお考えして良いと思いますわ」


「それと、その……なんと言いますか……お疲れ様ですわ。徹夜はお肌に良く無いと、お母様が仰っていましたわ。今度お母様に選んで頂いて、化粧水か何か差し入れいたしますわね」

「ふふ♪気を使ってくれてアリガト、小町ちゃん♪」


「ふ~」と、一呼吸置いて、報告が続く。

「次に、公使の金庫の中身に付いて、分った事を報告するわね。例の見つかった腕は、やはりローレンスさんのもので間違いない様よ。血液型、それに切断面も御遺体の物と一致したわ。それと、覆面に付いては、玉山さんと無事に保護出来た、五人の旧降霊会参加者の方々に確認して貰ったわ。これも、想定通り、前大使の死後、降霊会の主催者と成った男の物だと、皆さん証言してらっしゃるわ」

まあ、この辺は思っていた通りね。

それは、恐らく真犯人の思惑通りでもあるのでしょうね。

ローレンスさんの殺害と、怪しげなカルトとの関係、あえて、そう云う証拠をあの金庫に残したんだわ。


「それで、アヘンの方なんだけど……元日の夜、アヘン中毒者達に、小町ちゃんを襲撃する様に指示を出して、翌朝死体で見つかったアヘンの売人。彼が売りさばいていたアヘンと成分が一致したわ」

元日の夜、ウルタールが路地裏で見聞きした光景。

あの時の公使の素振りは、フードの男から、襲撃の失敗の報を受けて怒っていた風だったわ。

襲撃は、公使からフードの男を通して、アヘンの売人へ、そしてアヘン中毒者達と命令が流れたのだわ。

その後、フードの男はアヘンの売人を始末して、自分に繋がる糸を絶ったと云う事ね。


あの襲撃事件に関しては、フードの男が関連している証拠は、ウルタールの記憶にしか無い以上、立証する事は無理そう……。

この件に付いては、実害も無かった事だし、諦めるしか無いわ。


「最後に、帳簿の件ね。魔技取締分隊(うち)と警視庁、外務省の三者合同で調査したんだけれど、どうやら、帳簿に記載されている人物や、団体の関係者……土手瓦さんの様な、主にその団体の責任者ね。は殆(ほとん)ど行方不明と成っていたわ。もっとも、昨日地下で発見された方は居るみたいだけれど」

「殆(ほとん)ど、と仰いましたけれど、行方不明に成っておられ無かった方も、何人かいらした、と云う事かしら?」

「うーーん、それが……何人かいた事は居たんだけれど、人を向かわせた途端、それを察してか姿をくらませたり、逃亡したり……。まあ、後ろめたい事が有るのかしらね……。それで、何とか二人ほど身柄の拘束は出来たんだけど……。その二人とも、取り調べ前に憲兵司令部の留置所で突然、眷属に変異したわ。幸い死者や怪我人は出なかったけれど」


成るほど……ですわね。

「諏訪さん、恐らく意図した物では無いかもですけれど、帳簿は実質、降霊会参加者名簿を形成していたのかも知れませんわね。アヘンは古い参加者順に取引が始まった筈ですわ。ですから帳簿には、古い参加者順に記載されていたと思いますの。そして、洋館の地下で行われていた、例の密儀で、神に選ばれる順番もその古参順だとすれば……」

「じゃあ、小町ちゃんは、帳簿は眷属の名簿にも成っていると!?」

「ええ、そうなっていると思いますわ」

「分かったわ!そう言う事なら、帳簿に記載されている人物を重点的に探せば、帝都に潜む眷属を捕縛出来るかも知れないわね。でもそう成ると、帳簿の後ろ半分も気になるわ。いったい何処に在るのかしら……?」

公使の金庫に隠されていた帳簿は、後ろ半分が切り取られていたわ。

それは、恐らく……。

「真犯人がお持ちだと思いますわ」


「え!?どいう事なの?」

「恐らくですけれど、公使閣下がウェンディゴに成って御暴れに成った時にでも、どさくさに紛れて、金庫を開けて帳簿の半分をもって行ったのですわ」

「それは、おかしいわ。だったら帳簿を全部持って行けば、証拠を隠滅出来る筈よ」

「諏訪さん、この犯人は、小細工が大好きな方ですわ。ですから此(こ)れもその一環ですわ。下手にローレンスさん殺害事件の捜査に集中されるより。眷属の存在をトラップで知らしめて、帝都を混乱させて、眷属の捜査に人手を割かせるという辺りが、狙いかもしれませんわね」


「なら、何故土手瓦さん達をわざわざ地下に閉じ込めたの?混乱させるのが目的なら、帝都で暴れる眷属が多い方が良い筈だわ」

「その方達が全員、真犯人の都合の良い時に、変異し、かつ知性も理性も失ってくれるなら、そうですわね」

「それは……どう云うことかしら?」

「口封じですわ。チヴィントンさんと仰いましたかしら。土手瓦さんはその方は、フードに仮面姿の密議の主催者の方を良くご存じだったと、仰いましたわ。恐らくあそこに閉じ込められた眷属の皆さんは、何かしら真犯人に繋がる情報をお持ちだったかも知れませんわね。実際、土手瓦さんの情報は真犯人に迫る情報でしたもの」

「成るほど、そう言う事ね。万が一、自分の情報を持っている人物が、眷属に変異する前に身柄を確保されてしまって、自分の情報が漏れるのを恐れた、と言う事ね」

「ええ、真犯人は、トラップの目隠しに使っていた魔法陣で、ある程度変異を遅らせる事が出来ても、任意に変異を早める手段は持ち合わせていなかったのね。だから、地下に閉じ込めると言う手段を取らざるを得なかった、と云う事かしら」


「じゃあ、逆に何故、真犯人は帳簿の後ろ半分を持ち去ったの?」

「それは、単純な動機ですわ。今後は御自身で、御商売なさる積りなのですわ♪」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=563347762&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。