前編
はるか昔、とある王国のある山に、白き龍が住んでいた。
信仰の篤い民が多いその王国では、龍は皆、善き神の使いとされていた。もちろん、白き龍も善き神の使いとして山のふもとの村から崇められていた。
ある日、ふもとの村に、一人の男が訪れた。
黒いローブをまとったその旅人は、村人を集めてこう言った。
「お前たちは、皆だまされている。善き神など本当はいないのだ。いるのは、欲深き龍のみよ。」
「な…………!!なんということをおっしゃるのですか。白き龍のお方は、………お方は………。」
自分たちが崇める白き龍を馬鹿にされて、怒り心頭の村人達だったが、こうも思った。本当に白き龍は、善き神の使いなのだろうか?我ら村人は長いこと、毎年、白き龍に供物をささげてきた。こんなにも尽くしてきたんだから、もし本当に善き神の使いなら、少しくらい恩恵があってもいいんじゃないのだろうかと。
男は、そんな村人達の顔を見てから、再び口を開いた。
「どうやら、心当たりがあるようだね。さて、これから君たちはどうするのかね?」
「どうする?とはどういうことでしょうか?」
村人の一人が声を上げた。
「いやなに、龍の体からとれる素材は、高く売れる。白き龍を殺して、その素材を奪ってしまってはどうかと思ってね。「長年尽くしてきたんだ。そろそろ恩恵があってもいいころだ。」そう思ったのだろう?ならば、自分たちで恩恵を作ればいい。素材を売って得たお金という名の恩恵を。」
「し、しかし…。」「さすがにそれは…。」
村人たちもさすがにすぐには賛同しない。
中にはこんな意見も出てきた。
「この王国では、龍は善き神の使い。殺したことがバレれば、この村は王国による皆殺しに合うでしょう。そんな状況では、素材は決して王国では売れません。それはどうするので?」
「無論、大丈夫だ。この王国内で売らなければ、白龍を殺したのが君たちだとわかることはない。この王国の隣、山を越えた向こうに帝国があるだろう?そっちなら、龍を殺して得た素材を売っても全然問題にならないぞ。そもそも、龍を善き神の使いだなんて言っているのはこの王国だけだしな。」
「…………そうだったのですか。」
しばらくの沈黙ののち、一人の若者が声を上げた。
「なあ、村長、俺はあの白き龍を殺したい。そこの黒い奴が言ってるみたいにすれば、問題になんね~んだろ。だったらあんな龍殺しちまおうぜ。なあ、皆!」
「「「おうよ。」」」
若者の声掛けに、皆が答えた。これを聞いた村長も、白き龍を殺すことを決意した。
「黒い衣をまとった旅人よ、我らを諭してくれて、ありがとな。」
黒い服を着た旅人は、村長の言葉を聞き、何も言わずに去っていった。
口元に邪悪な笑みを浮かべながら。
初めまして、藍風月と申します。
稚拙なこの作品を読んでくださったことに感謝を。
なんとなくで書き始めたこの話、暇つぶし程度になったら幸いです。




