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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第三章 レイラ、貴族になる

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7、ロイとサンドラの関係

「サンドラが?」


 ロイは少し困ったような顔になった。


「どうしますか? 忙しいからと帰ってもらいますか?」


 ロイは額に手を当てしばらく考え込んでいたが、ようやく口を開いた。


「いや、この間もそう言って断ったところだ。また断ったらかわいそうだ。通してくれ」


 ウッズは部屋を出ると、しばらくしてサンドラを伴って戻ってきた。


「ロイ様! やっと会って下さったわ。いっつもお忙しいんだもの」


 サンドラは赤とピンクの華やかなドレスを(ひるがえ)して部屋に入ってきた。

 ウエーブのある長い黒髪に、潤んだ黒目が印象的な美しい少女だ。


「今日も綺麗だね、サンドラ。すっかり大人びて見違えたよ」


 ロイは優しく微笑んだ。


「私ももう十四才ですわ。いつまでも子供扱いしないで下さい、ロイ様」


 ちょっと拗ねて頬を膨らませるのも可愛いと思う。


「アンソニーは元気か? 使節団の接待の準備で忙しいだろう?」


「お兄様も最近はお仕事ばかりで、全然私の相手をして下さらないのよ」


 サンドラはアンソニーの妹だった。


 サンドラ・ロックウェル


 アルフォード家の末弟、ロックウェル家の令嬢だった。


 スチュアート公爵が次男で、ロックウェル公爵が三男だ。


 みんな広大なアルフォード邸の領地に屋敷を持っている。


 スチュアート公爵は西の森の湖畔に。

 ロックウェル公爵は東の丘の高台に。


 子供の頃からロイとアンソニーは仲が良く、自然にサンドラも含めて一緒に過ごすことが多かった。レナルドも混じって仲のいい幼なじみだった。


 邸内には仮住まいする貴族の子女も何人かいたが、断トツに位の高い四人は一緒にいる機会が多くなってしまう。


 そして紅一点で年の離れたサンドラは、みんなに可愛がられ甘やかされて育った。

 あのレナルドでさえも、サンドラにだけは優しかった。


 領地のすべての女性が憧れる三人の貴公子を独り占めするサンドラは、誰からも羨ましがられこの世に手に入らないものなど何もなかった。


 ほんの少し前までは……。


「ねえ、ロイ様。明日の使節団歓迎レセプションのドレスをどれにするか迷っていますの。私のお屋敷に来て見立ててくれませんこと?」


 十代の頃ならば気軽に応じてあげていた頼みごとも、一人前の仕事を任されるようになった成人のロイには常識外れに思えた。


「アンソニーに見てもらえばいいんじゃないのか? 同じ屋敷にいるんだし」


「お兄様は朝から出かけてしまわれましたわ。ゆうべも遅かったし」


 アンソニーも初めて任される大仕事で細かなチェックに忙しいんだろう。

 今は誰もが使節団の準備で忙しい。


 ロイは今回の使節団の準備には直接関わってないにしても、アルフォード家の嫡男としてあらゆる行事に出席して挨拶を述べる場面もある。決してヒマな人間ではない。


 しかも昨日は、絵師の少女のことで一日費やしてしまった。

 今もその後始末に忙しい。


 正直言って、わざわざ屋敷にまで出向いてドレス選びを手伝うほどヒマ人ではない。


 子供の頃と違って、この数年でアルフォード家の後継三人の男達の立場が変わってきていることに、まだ十四のサンドラだけが気付けていない。


「私よりもレナルドの方が美的センスに優れている。レナルドに頼んだらどうだ?」


 だがサンドラが生まれた時からアンソニーと一緒に可愛がりどんなわがままも許してきたロイには、強く注意することが出来なかった。 


「私はロイ様に見立てて欲しいのですわ。ロイ様が見立ててくれないなら、歓迎レセプションには出ませんことよ。それでもよろしいのですか?」


 サンドラは思い通りの返事をくれないロイにムキになって言い募った。


「何をバカなことを。そんな理由で欠席などしたらロックウェル家の面目が丸つぶれになるだろう。接待の責任者でもあるアンソニーも困るぞ」


「ロックウェル家の面目なんてどうでもいいもの! お兄様だって私のことを放っておいた罰ですわ。少し反省するとよいのですわ」


「……」


 どうやら口先だけの脅しではないようだ。

 実際にこのようなことが前にも何度かあった。

 サンドラは悪い意味で有言実行の前科がいくつもある。


 こうまで意地になったサンドラをどうなだめていいのか分からない。

 女性にあまり免疫のないロイは、いつも困り果ててしまう。


 アンソニーの初の大仕事に暗雲を呼ぶようなことは極力避けたい。

 サンドラはロイを困らせるポイントをよく心得ていた。


 そうして結局折れてしまうのだった。


「分かったよ、サンドラ。少しだけ時間を作ろう」


「ロイさま。ですがステラ夫人のところへは……」


 隣で聞いていたウッズが驚いて口を挟んだ。


「なあに? ステラ夫人のところに行くつもりだったの? そんなのいつでも行けるじゃないの。今は私のドレス選びの方が大事に決まってるでしょ? 邪魔しないでよ、ウッズ!」


 サンドラはロイの腕をとって、ウッズを睨みつけた。

 いつも余計な口を挟むウッズを、サンドラは嫌っていた。


「失礼致しました、サンドラ様」


 ウッズはやれやれと呆れながら頭を下げた。


「ステラ夫人には先ほどのことを早急に伝えてくれ。近いうちに時間を作って顔を出すからと言っておいてくれ」


 あの絵師の少女が気になったが、この日は結局サンドラを優先することになった。



次話タイトルは「スチュアート公爵邸での暮らし」です

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