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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる
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7、エミリアのワンピース

「すてき……」


 自然に言葉がこぼれていた。



 翌日の夕方、エミリアの店に行くと、ついに私のワンピースが出来上がっていた。


 それはブルーを基調とした縦縞のワンピースだった。


「このブルーは流行りの生地だから端切れがたくさんあったんです。それに見て下さい!」

 エミリアは全身を映す鏡の前に私を立たせて、ワンピースをあてがった。

 

「ああ、やっぱり! レイラさんの瞳のブルーと同じ色なんです。相乗効果でとても映えるだろうと思いました」


「本当だわ。私ったらなんて似合うのかしら」

「え?」

「あ、いえ。つい」本音が……。


 エミリアじゃなければ「うぬぼれか!」と突っ込まれそうだけど、似合ってるんだからしょうがないじゃない。

 前世の私がこんなドレスを着たら、出会う人全員を意味もなくイラっとさせたに違いない。

 着たくても周りのヘイト感情が怖くて着れなかったのよ。


 それがどう?

 今の私は自分でもうっとりするほど似合ってるんだもの。

 少しぐらい調子にのって浮かれたくなるじゃない。

 そしてエミリアはそんな私をほっこり笑って許してくれるんだもの。


「ふふ。おっしゃる通りですわ。貴族の中でもレイラさんほど美しい人は見たことがありません。レイラさんを思い浮かべるだけで、何着でもワンピースが作れそうです」

 

 ほらほらエミリアだってこう言ってるわ。

 ほんとに大好き、エミリア。

 しかも縫製は丁寧で、斬新でありながら品のあるデザインを心得てる。

 これは元貴族だからこそ滲み出る才能だ。

 

 袖にもスカートにもたくさんの切り返しがあって、生地の間を埋めるように別の生地で継ぎはぎしている。でもその色の組み合わせと絶妙な切り返しのおかげで、むしろオシャレな縦縞のデザインに見える。こんな器用な縫製ができるデザイナーはめったにいないはずだ。


「すごいわ。エミリア、あなたって素晴らしいデザイナーだわ」

「デザイナーだなんて……そんな……嬉しいですっ!!」


 エミリアは私の両手をとって目をキラキラさせ、称賛を全力で受け止めた。

 普段は大人しいのに服のことを褒められるとテンションが三割り増し高くなる。


 うんうん。分かるわ。

 謙遜ばっかりしてちゃダメよね。

 得意なものを褒められた時ぐらい全力で受け止めなきゃ。


「これは少ないけれど仕立て代なの。受け取って、エミリア」

 私はポッケから5000ルッコラを数えて渡した。


「まあ、こんなに! 受け取れませんわ。縫製の糸とレース糸の代金だけ払っていただければ、店主にはバレてませんから大丈夫です。私はレイラさんが着て下さるだけで嬉しいのです」


 きっと生活は苦しいだろうに、エミリアは本当に正直で人がいい。

 根が貴族だからお金を稼ぐという観念が薄いのだ。


「ううん。本当はもっと払うべきだと思ってるの。今はこれだけだけど、余裕が出来たらきっと残りも払うわ。だからこれは受け取ってちょうだい。そうじゃなきゃ次のワンピースが頼みづらいじゃない」


「次のワンピース……?」


「そうよ。私はこの世界でエミリア以外の作った服なんて着るつもりはないもの」

「レイラさん……」


 うっすら涙ぐんだエミリアは、それでも遠慮して受け取ろうとしなかった。

 

「ではこうしましょう。このフリルのついた4000ルッコラのエプロンを買って下さいませ。残りは糸の代金として。余った分はありがたく頂きます。母と妹たちに美味しいものを買わせてもらいます」


 それじゃ売れ残りのパンぐらいしか買えないんじゃないかと思ったが、確かにこの素敵なワンピースに、今つけている茶色に変色したエプロンじゃあ台無しもいいところだった。

 エプロンのことを忘れていた。


「エプロンの余り生地はフリルに使ってしまいますのでワンピースのように端切れで作るわけにもいかないんです。良かったですわ」


 エミリアはそこまで考えて固辞したんだろう。

 うう。こんないい子が幸せにならなかったら世の中間違ってる。


 待ってて、エミリア。

 今に私ががっぽがっぽもうけて恩返しするからね。


………………………………………………………………


※ 現在のレイラの所持金 

    前日残金        9600

    ヨハンに渡したお金 -  200

    食費        -   30 

    服代        - 5000

              ―――――――――――

                4370ルッコラ




次話タイトルは「勝負服と魔法のメイク」です

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