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第16話:お誘い

―夏祭り翌日―

ジンは慣れない城の広い部屋の広いベッドで目を覚ました。

外はまだ真っ暗だ。

ジンは慣れないところで寝ると深い眠りにつくことができないのだが、この世界に来てから妙に早起きをするようになった。

短い時間しか寝ていないのにも関わらず、起きると疲れが取れているのだ。

しかし、今日はまた寝ることにした。

ジンはゆっくり目を閉じた。




氷の大地に炎の空、そんな不思議な空間でジンを見守る影があった。

―主様、また寝ちゃった。いつ目覚めるんだろう―




―夢の中―

見渡す限り黒しかないそんな空間にジンはいた。

しかし、よく見ると小さく白い光が見えた。

ジンはその光のもとへ歩み寄るとその光の正体が分かった。

この前の襲撃でジンの下へ帰ってきた白い剣だった。

ジンはその白い剣をゆっくりと握った。

すると、一面黒の世界から一面白の世界へ変化した。

困惑しているジンだったが、この前の戦いで聞いた声と同じ声が聞こえてきた。

「―出来た?」

よく聞き取ることができなかったため、ジンはもう一度聞いた。

「え?もう一度お願いします」

「皇になる覚悟は出来た?」

「皇になる?何それ?出来てないよ」

ジンは声の主が何を言っているのか理解できなかった。

ジンの答えを聞いた声の主はただ一言だけ囁いた。

「待ってる」




部屋の外からの女性の声で再び目を覚ました。


「ジン様。おはようございます」


「あ、ああ、おはようございます」


ジンは部屋の外の女性に向かって返事をした。


「朝食の準備が出来ております」


「ありがとうございます」


こうしてジンはベッドから起き上がり広間へ向かった。




昨日も夕食を食べた部屋に行くとすでにみんなが集まっていた。


「ジン。おはよう」


「おはよう。みんな」




朝食を食べ終えるとタイミングを見計らったように第一王女が部屋に入ってきた。


「ナイトウジン様。お話がありますので、王室まで来ていただけますか?」


「私ですか?」


「はい、ですが皆様もご一緒されても大丈夫ですよ」


第一王女はジンに話があるというとみんなも一緒に行きたいとのことだったので、7人で王室まで行くことになった。


7人は王室までやって来ると部屋には第一王女の他に第一王子の姿もあった。

7人と第一王子、第一王女はソファーに座ると第一王子が話を始めた。


「皆様、おはようございます。昨日は楽しめましたか?」


「はい。とても楽しかったです」


「それは良かった。・・・さて、さっそく本題に入るとしよう」


第一王子は笑顔から一転、早々に真剣な面持ちで本題に切り込んできた。


「先のオリフスフタン国とウオジュオー国の襲撃により我が国は多くの兵士を失ってしまった。またいつ敵が襲ってくるかわからない状況にある。次に敵が襲ってきたら、この国

はもたないかもしれない」


「そんな・・・」


「そこでナイトウジン様。貴方の力が必要なのです。どうかアグルスを守る騎士になってはもらえませんか?」


「謹んで・・・お断り申し上げます」


ジンは第一王子の願いを丁重に断った。


「なぜかな。理由を聞かせてもらえるかな?」


「私には大切な人がいます。離れて生活するなんてできません」


「わかった。では、貴方がたはこの城に住んでいただいて構いません。これで問題ないはずです」


第一王子は本気でジンを誘っているのだ。きっと承諾するまで話は終わらない。


「・・・・・・」


「ジン・・・」


困り果てたジンは何も言葉を発することはなかった。ジンの隣に座っているヒカリはジンのことを心配するように見ていた。


「もちろん、生活費はアグルスが負担するので心配はいりません。さらに、アルエ第七王女を救った英雄としてナイトウジン様には特別大将の地位と称号を差し上げます」


「なぜそこまでして」


「この国の民を守る為です。民が幸せに過ごせるのなら、私は何でもします。今は戦力が必要なのです。貴方の力が必要なのです。黒の双色者であるナイトウジン様。どうか力をお貸しください!」


「この間、家を買ってしまったのですが」


「返金します」


「家族の身の保証は?」


「保証します」


「・・・・・」


ジンと第一王子はどちらも自分の意見を曲げようとはしなかったが、ジンは毎度のことながら困っている人がいるのに知らぬふりはできなかった。

死ぬことが怖いはずなのに誰かを助けるために危ない所へ行ってしまうということをヒカリはよく知っていた。


「この国を守れるのは貴方様しかいないのです。貴方がやらなければこの国は滅んでしまいます」


「・・・分かりました。私にできることがあるのなら」


「ジン」


ヒカリはジンがこの答えを選択すると思っていた。


「ありがとうございます」


第一王子が深々と礼をしたときだった。


「ちょ、ちょっと待ってください!僕も兵士になりたいです!」


「ヒナタ!?」


突然そう言い出したのはヒナタだった。


「ジンが兵士になるなら僕もなります!ジンの力になりたいです!」


「しかし、子供を兵に入れる訳には」


ジンはヒナタに少し強めの口調で説得を始めた。


「ヒナタ、これは遊びじゃないんだ。兵士になるということは戦場へ足を運ぶということ。つまり、死んでもおかしくない場所へ自分から行くということなんだ」


「そんなこと、僕にだって分かるよ!僕もジンの力になりたいんだ!」


「俺はヒナタを危ない場所へ連れて行きたくない」


ジンはどうしてもヒナタを兵士にさせたくなかった。

その様子を見ていた第一王子は選択権をジンに譲って来た。


「わかった。では、君はナイトウジン様の指示に従いなさい。あとはナイトウジン様が決めてください」


「は、はい」


「では、これからよろしくお願いいたします。ナイトウジン様」


「わかりました」


ジンは自信なさげに返事をした。不安だらけだったからだ。


「ナイトウジン様はアグルス軍特別大将となり、今この時を持ってジン・セニエメ・ナイトウと名乗ることをアグルス国が認める」


こうしてジンは特別大将となり、名前も二名から三名へ昇格した。

しかし、ジンにとってそんなことはどうでもよかった。




―ヒカリやみんなが安心して暮らせるのであれば・・・それだけで十分だ―


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