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ようやく波を越えると後は何も出来ない雑魚を排除するだけである。
「い、命だけはお助けを…!!」
そう命乞いをしてくるのはあの女にいつもべったり金魚の糞のようにくっついていた侍女だ。
仕事は出来るが、いかんせん態度がでかくて上司だった侍女長が頭を悩ませていた。
もう悩む事は一生ないだろうが。
他の娘と三人で身を寄せ合っていたのがたまらなく痛快で、私はある事を思い付く。
「良いだろう。 その代わりお前以外はお前の手で殺せ」
「「えっ…?」」
私の言葉に呆然としている名も知らぬ二人の侍女をヨソに金魚の糞にナイフを渡すと何の躊躇いもなく二人をズタズタに刺し殺した。
二人の息が途絶えた頃に呼吸を乱し、額に汗を滲ませながら私の方へ笑みを浮かべながら金魚の糞はナイフを落とした。
「こ、これでいいでしょ!? 私を助けてよ!!」
金魚の糞は血塗れになった手で私にすがってきた。
それが服に付いて私はとても不快になる。
「誰が触っていいと言った?」
「ひい!?」
最初から助けるつもりはなかったが、私は怒りを露にさせて金魚の糞の首に手を伸ばす。
女は小さく悲鳴を上げたが、首を掴まれ持ち上げられると多少抵抗し始めた。
「う、げ、あ、や、く、そ、く…」
「自分可愛さに他人を殺すような奴を生かしておくほど私は優しくはないわよ?」
金魚の糞は顔と瞳をどんどん赤くさせながら恨めしそうに私を睨んできたが、怖くもなんともない。
私は彼女を断罪する為に力を込めて片腕で首の骨を折るとそのまま力が抜け、糸にぶら下がった操り人形のようになっていた。
◇
廊下を歩き、たまに襲い掛かる兵士や騎士を排除しては動き回る者全てを撃ち殺しながら進んでいると、片隅に何かがいるのを見つけた。
見た事のない娘だった。
目が合うとボロボロと涙を流しながら私を見上げて震えている。
「…お前は?」
私が誰だと尋ねるが、恐怖で言葉が出ないのか口をパクつかせて声が出ていない。
「…殺さないから名前と身分を言え」
今まで人を殺し続けていたので何となく気紛れに少女に対して生きるチャンスをやろうと思った。
これは私なりの優しさである。 今対象にしているのはアバズレ側に立っている奴らとつまらない奴らと歯向かってくる奴らだけだ。
「…ユリア。 …行儀見習いで、今日、田舎から…」
小さな少女は言葉を搾り出しながら名乗り出した。
どうやら田舎からやって来た貴族の娘らしい。
つまりはツイてなかった一人である。
「だから見た事がなかったのか、不幸ねぇ」
そう言いながらさっきサロンに置いてあった上質な葉巻を取り出して吸い始めようとするのだが、小さな手が裾を掴んできた。
「しゅ、淑女は…煙草、吸っちゃ、ダメ…」
少女は震える手で喫煙を諌めてきた。
この状況で絶対的な強者である私に諫言してきたのだから大した女である。
「…くっ、くくっ…良いねぇ面白いよ…。 アンタは殺さない。 名前も名乗ったし私に楯突いたし…」
そういうと少女を抱え上げて私は一度来た道を戻り城門前まで連れていってやる。
来た途中にズボンを濡らした馬飼いの少年を見つけたので、見逃してやるついでに安全な場所まで少女と避難するように命令すると頭がもげるぐらいに頭を振って頷いていた。
後は詫びとして金貨を数枚握らせて二人を見送ると再び城内を散策し始める。
この日助けたのはこの二人ぐらいである。
たまにはこんな事をしても良いだろう。 前世の記憶では残忍だった私にとっては驚きの行動であった。
殺す命もあれば救う命もある。
私事で申し訳ないのですが、現在体調不良の為明日投稿分が書けていません。
もしかしたら投稿出来ない可能性がありますのでご容赦をorz




