第9話 魔導具師と商人。
扇子に冷却機能付けたのは正解だったな。
リリエン商会では、送風機を何台も稼働させている。それでも、店内の暑さを完全に和らげることはできていないようだ。
俺は手に持った扇子型の魔導具を仰ぐ。
ひんやりとした風が流れ、暑さが少しずつ和らいでいく。
そうして待っていると、頼んでいたものを持って先程の店員が戻ってきた。
「お支払いはギルドカードでよろしかったでしょうか?」
「うん、これで」
俺は店員にカードを渡して、魔核や素材を受け取った。
この世界では、ギルドカードを使った支払いが一般的だ。 俺は魔導具を売ることもあるため、商業ギルドにも登録している。
貴族の身分証とは別に、こういった取引では商業ギルドのカードの方が便利だった。
「おぉ!フィンじゃないか。来ていたんだね」
「久しぶり、アレク叔父さん。新しい魔導具を作ったんだ。機能は問題ないんだけど、外装はアレク叔父さんに任せた方が良さそうでね」
「また新しい魔導具を作ったのか。さすがフィンだね。早速見せてもらえるかい?」
「うん、馬車の中に置いてるんだけど、一緒に来てもらった方が説明しやすいから、着いてきて」
「おや?今手に持っている、その扇子のような魔導具のことではないのかい?」
「あぁ……これも新作の魔導具なんだけど、作ったばかりで、今日は使い勝手を確認しているところなんだ。商品化するなら、その時にアレク叔父さんに相談したいと思ってる」
「なるほど。それは楽しみだ」
そう言って、アレク叔父さんを馬車まで案内した。
「うわっ……涼しいを通り越して寒いくらいだ!なんだい、これは?!」
「送風機を元に、冷気を出す魔導具を作ったんだ。ここ最近暑かったでしょう?俺が耐えられなくてね……」
馬車の中は、外の暑さが嘘のように冷えていた。
「置く場所の広さに合わせて、冷却機能や風量も調整できるよ。今は作業部屋用のものを持ってきてるから、馬車だと少し強すぎるけど」
「なるほど..... 設置場所に合わせて調整できるのか」
アレク叔父さんはしばらく魔導具を眺め、考え込んだ。
「これは.... 売れるね。いや、すぐにでも商品化したい。それと、私の分も頼めるかい?」
「アレク叔父さんの分はすぐにでも作れるけど……仕様書を渡すから、あとはリリエン商会の職人たちに任せたい」
まだ屋敷全体に設置できてないから、まずは屋敷の分を優先したい。
「あぁ、もちろん任せてくれ。外装はどうする?イメージするものがなければ、こちらで決めるが?」
「うん、特にないよ。ただ、羽の部分への装飾は避けた方がいいと思う。試してはいな いけど、扇ぐ動きに影響が出る可能性があるから」
「なるほど。見た目よりも性能を優先するべき魔導具ということだね」
「うん。……あ、そうだ。今月、じぃちゃんが来るんだよね?その時にじぃちゃんにも見てもらいたいんだけど」
「父上にかい?きっと気にいると思うよ」
「魔導回路がまだまだだって言われそうだけどね」
「ふふ、想像がつくよ」
祖父の話でしばらく笑った後、俺は魔導具の話に戻った。
「アレク叔父さんの分は明日の午後には作れると思うから、仕様書と一緒に届けるね」
「わかった。仕様書はフィンが持ってきてくれるのかい?」
「いや、ノアに届けさせるよ」
アレク叔父さんなら、仕様書を渡せば職人たちに上手く伝えてくれるだろう。
俺が細かく説明しなくても任せられる相手がいるというのは、ありがたいことだ。
「それじゃあ、そろそろ帰るよ」
「あぁ、今日は良いものを見せてくれてありがとう。気を付けて帰るんだよ」
俺は扇子型の冷却魔導具を御者に渡し、馬車に乗り込んだ。
あ、そういえば魔導具の名前、相談するのを忘れてた。
まぁ、また今度でいいか――
「……寒っ!!」
第9話を読んでいただきありがとうございます。
冷却魔導具は無事に商品化へ向かうことになりました。
ただし、フィンの調整は少しだけ強めだったようです。




