第75話 甘いものは正義。
疲れたから、なにか甘いものが食べたい……。
……夕食までまだ少し時間があるし。
あ。
……そういえば、まだノアが休暇中だった。
直接、厨房にいくか。
「おや? フィン様、どうかされましたか?」
「うん。ちょっと甘いものが食べたくなってね。 クリームを乗せたパンケーキ、作ってくれないかなって思って」
「分かりました。 夕食前なので、小さいのを二枚くらいにしときましょうか」
「そうだね」
「他の方々にはどうされますか?」
「一応みんなの分も作ってもらおうかな」
「かしこまりました」
料理長がパンケーキの準備を始める。
俺はその様子を、ぼぉーっと眺めていた。
……甘いもの、まだかな。
そういえば、この世界にプリンとかショートケーキってないよな。……ショートケーキ好きだったんだけどなぁ。
……作り方を知らない。
誰か、ショートケーキを作ってくれる人が出てこないかな……。
とりあえず、プリンは出来そうなきがするから、今度作ってもらおう。
……。
クリームを作るのって大変なんだな。
……泡立て器を魔導具化するのもいいかも。
回転させればいいだけだから、髭剃り型魔導具を作るより簡単そうだ。 持ち手部分に起動停止のスイッチと魔核を付けるとしても、重さもほとんど変わらないし。
今後もお菓子を作ってもらうなら、魔導具化したら楽になるよな……。
……洗う必要があるから、先端を取り外し出来るようにする方がいいのか。わざわざ洗浄機能まで付ける必要もないだろうし。
髭剃り型魔導具の場合は、部品が細かいから、分解しても洗えるし、洗浄機能で綺麗にもできるようにしたけど。
……髭剃り型魔導具を思いつく前に、泡立て器の魔導具化を先に思いついていれば、もっと早く仕上げることが出来た気がする……。
そんなことを考えていると――
「お待たせしました」
「おぉ!美味そう」
「フィン様。皆さま、応接室にいらっしゃいますが、そちらで召しあがられますか?」
横から声がかかった。
「そうだな。 みんなの分のお茶も用意してくれ」
「かしこまりました」
応接室に入ると、三人がテーブルを囲んでいた。
……リバーシか。
「みんな、ちょっと休憩しない? パンケーキを用意したんだけど」
「お!いいな!」
「これくらいの大きさはありがたいね」
「そうだな。夕食前に食べるには、ちょうど良さそうだ」
使用人がパンケーキとお茶を並べ終え、下がった。
「美味い! ふわふわだな」
「このクリーム、甘すぎなくて食べやすい」
「パンケーキとは、こんなに美味しいものだったか?」
……あぁ。
……疲れが癒されていく。
甘いものは正義だな。
……。
……ゆっくり堪能していたつもりだったが、もう食べ終えてしまった。 三枚の方がよかったか?……いや、さすがに夕食に響きそうだな。
「そういえば、いつから集まってリバーシしてたんだ?」
「俺が最初に応接室にきて、一人でリバーシしてたら途中でマティが来た」
「少し昼寝をしてから、こちらに来てみたらガレスがリバーシをしていたので、私もリバーシを」
「私はさっき、仕事が一段落してね。来てみたら二人が白熱していて、面白かったよ」
……ガレスが奮闘していたのだろうか。
それとも、全敗していて面白かったのか?
「また一勝しか出来なかった!」
「え、一勝出来たのか?」
「……フィンは俺が勝てると思ってないんだな!」
……。
「フィンは魔導具を作っていたのだろう?」
「……あぁ。 ようやく完成した。また試してみてくれ」
「じゃあ、明日の朝、またフィンの部屋に集合だな!」
「そうだね。試作品でも十分良かったけど、もっと改良したんだよね?楽しみだ」
「……ちょっと待て。 フィン、まさか……ウィルに魔導具の使い心地を試させたのか?」
「え、そうだけど?」
「……試作品を?」
「うん。 え、なに?」
「ウィルは仮にも、第二王子殿下だぞ。 試作品を試させるとは……。 フィンが魔導具を作る際、安全性を重視しているのは分かってはいるが、さすがにどうかと思うぞ」
「……確かに」
「学園時代から、試作品を試していたけどね」
「……え?」
「私が魔導具研究会に出入りしていたのは知っているだろう? その時から試作品を試していたんだよ。 もちろん、先にフィンが試してからだけどね」
「あぁ! マティアスは俺の勉強に付き合ってくれてたから、魔導具研究会の方に行くこと少なかったから、知らなかったんだな!」
「……そんな前から」
「今回に限って、俺、ちょっと考え無しだったかもな。刃を使った魔導具だし……」
「刃?! 何を作ったんだ!」
「え、髭剃り型の魔導具だけど……」
「……髭剃り?」
「うん」
「……危険なものではないのだな?」
「そうだけど。 安全性も考えて、保護板に水属性も組み込んだし」
「俺も試してみたけど、剃り残しもなくて、いい感じだったぞ」
「私も完成したら、自分用が欲しいって思ってるよ。 あれは使い心地が良かったからね。 それを更に改良したのだろう? 使うのが楽しみだ」
「……」
第75話を読んでいただき、ありがとうございます。
疲れた時には、やっぱり甘いものですね。
そしてフィンは、また新しい魔導具を――
次回も楽しんでもらえると嬉しいです!




