第51話 王子との再会。
「……お久しぶりです。ウィルフリード殿下」
「相変わらずよそよそしいのは、どうにかならないのか?」
「殿下に対して、そのような無礼は出来かねますので……」
「まぁ、良い。挨拶を終えたらそっちに行くからな」
「……分かりました」
王家の皆様への挨拶を終えると、父さんたちはそれぞれ、先ほどまで話していた方々のもとへ戻っていった。
「フィン兄様、私はセレスティア様とアリシア様のところへ行きたいのだけれど」
……二人もすでに王家への挨拶を終えているようだ。
「分かった」
俺はティアナをエスコートし、二人のもとへ向かった。
「セレスティア様、アリシア様!
お二人とも、髪型がドレスにとてもよく似合ってますわ!」
「ありがとうございます。ティアナ様もとっても素敵ですわ」
「あれから毎日、華髪で試しましたの!」
「私もですわ。毎朝、髪を整えるのが楽しみになりましたもの」
……二人とも、本当に気に入ってくれたらしい。 髪型もドレスに合わせて、綺麗に整えられている。
「お久しぶりです。セレスティア様、アリシア様。今日の装いは一段と美しいですね」
「お久しぶりです、フィン様。この度は艶髪と華髪をありがとうございました」
「フィン様のおかげで、髪を整えるのがとても楽しくなりました。華髪で色々な髪型を試しているんです」
「気に入って頂けて、なによりです」
「それに、艶髪もとても気に入っていますわ。髪に艶が出るだけで、こんなにも印象が変わるなんて」
「そうですよね! 私も初めて使った時は――」
「フィン!」
……もう挨拶を終えたのか。
俺たちはウィルフリード殿下に向かって頭を下げた。
「そんなに畏まらなくていいって」
「そういうわけにはいきませんので」
「またそれか……」
「ふふっ。相変わらずですわね」
セレスティア様が微笑む。
「そういえば、あちらに他の令嬢たちが集まっているようですわ」
「本当ですわね。私たちもご一緒してきましょうか」
「そうね」
「フィン兄様」
ティアナがこちらを見る。
「ここまでで大丈夫よ。私もお二人と一緒に、他の令嬢たちのところへ行ってくるわ」
「分かった」
「それでは、私たちは失礼いたします」
そう言うと、ティアナたちは令嬢たちの輪へ向かっていった。
..... これでエスコートは終わりか。
「じゃあ、フィン。久しぶりにーー」
「フィン?」
振り返ると、そこには少し呆れたような母さんが立っていた。
「どうしてもうティアナと一緒にいないの?」
「え?」
「今日はティアナの初めての夜会でしょう?」
「いや、本人がもういいって......」
「そういう問題じゃないでしょう」
そう言いながら、母さんは殿下に頭を下げた。
「申し訳ございません、殿下。お話中でしたのね」
「いや、構わない」
「では、フィン。後で話がありますからね。殿下、失礼いたしました」
そう言うと、一礼して去っていった。
……え。
怖いんだけど。
「……何をしたんだ?」
「……多分、ティアナと離れたので……」
「あぁ……。フィンがティアナ嬢のエスコートだったのか」
「はい。見える位置にいるので、大丈夫だろうと思っていましたが……」
「初めての夜会なら、母親としては心配なんだろうな」
ティアナの方を見ると、いつの間にかエミール兄さんが近くに移動していた。
……どうやら、挨拶を終えたらしい。
「エミール殿がそばにいるなら、大丈夫そうだな」
「はい」
……ティアナのエスコートも終わったんだし、俺はもう帰っていいだろうか。
「……すごく帰りたそうなのが伝わってくるぞ」
俺の表情管理はいいと思っていたのだが……
「フィンは昔から顔に出やすいよな。まぁ、その方が私も気楽に接することができるから、いいと思っている」
……これは褒められてないな。
「それより、髪型を変えたのだな。なんだか、前より髪が綺麗になっている気もする」
「……新しい魔導具です。ティアナとセレスティア様、アリシア様にも使っていただいています」
「そういえば、三人とも華やかだった気がするな。母上やエルーシアが興味を持ちそうだ」
「販売は夏の終わり頃になると、叔父上から聞いています。その前に、王家へ献上されるかと」
「そうか。二人が喜びそうだ」
ウィルフリード殿下と話していると、殿下に話しかけたそうに様子 を窺っている貴族子息たちが、ちらほらと目に入った。
高位貴族から声をかけられるまでは、こちらから話しかけるわけに もいかない。
..... まぁ、王子だからな。
その周囲には、令嬢たちの姿もある。
ちらちらとこちらを見ているところを見ると、殿下とダンスを踊りたいのだろう。
それを気にもせず、俺がいつまでも殿下と話しているのもどうかと思う。
「殿下。そろそろ、他の方々とお話しされた方がよろしいのでは?」
「ん?あぁ……そうだな」
ウィルフリード殿下が周囲を見渡す。
「確かに、待っている者が多そうだ」
「でしょう?」
「だが、フィンも一緒に来い」
「……え?」
……なんで俺まで?
第51話を読んでくださって、ありがとうございます。
ウィルフリード殿下との再開回でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




