第49話 夜会に向けて。
あれから数日、セレスティア様とアリシア様に渡す艶髪と華髪を作ったり、次に作る魔導具について考えてみたり、ダイエットのために少し運動してみたり……。
ダイエットの方は今のところ大きな変化はない。
……数日で痩せるなら苦労はしないか。
あ……ダイエットできる魔導具……そんな都合のいいものは……無理だな。
……いや、そんなものが簡単に作れるなら、俺が欲しい。
そんなくだらない事を考えていたら、夕食の時間だとノアが呼びに来た。
食堂に向かうとティアナが先に着いていた。
今日もみんな夜会に出席するみたいだな。
「またお鍋なのね」
「あぁ。できる限りの事はしたいからな」
「それもそうね。私も夜会に参加するから、ドレスを新調したの。せっかく仕立ててもらったのだから、きれいに着こなしたいもの。ちょうどいいわね」
「今日は豚肉か。確か、肌にもいいんだよな」
「そうなの?!」
「あぁ。前世で聞いたことがある」
「どうして今まで教えてくれなかったの?!」
「え? 忘れてた」
「……まぁいいわ。夜会の前に知れたから」
「そんなに喜ぶことか?」
「喜ぶことよ!」
……ティアナはまだ若いから、気にしなくても良さそうなのに。いつの時代でも女性の美に対する執着はすごいんだな。
「あ。それより、二人に魔導具を送ったんだけど、使い心地とかどうだったか聞いてる?」
「そう、その話をしたかったの!」
ティアナは待ってましたと言わんばかりに話し始めた。
「お茶会の時に、フィン兄様が言っていた通り、最初は真っ直ぐで艶のある髪で二人を迎えて、話題になったところで巻き髪を披露し たの。二人ともとても興味を持ってくれて、早く使ってみたいって言っていたわ」
「へぇ。作戦通りだったんだな」
「ええ。それで、魔導具が届いてから、さっそく試しに使ったみたいなの」
「それで?」
「とても気に入ったって、二人から手紙が届いたわ!」
「そうか。それなら良かった」
「夜会まで侍女と練習しながら、髪型を決めるそうよ。私もドレスに合わせて素敵に仕上げるつもり。だから、フィン兄様!私のエスコート、しっかりお願いね!」
「分かってるよ」
「本当? 兄様、途中で魔導具のことを考え始めたりしないでしょうね?」
「……しない」
「今、間があったわよ?」
「……王家主催の夜会まで、あと数日だろう? その間、みんな他家の夜会に出席するみたいだから、屋敷に残るのは俺とティアナくらいだろ。料理長に、ダイエット向きの料理を頼もうかと思っていただけだ」
「まぁ! それなら私もお願いするわ!……話をそらされた気もするけれど」
そう言いながらも、ティアナは嬉しそうだ。
……まぁ、夜会までの数日くらいなら、食事を少し見直すだけでもいいだろう。
食後、俺は厨房へ向かい、料理長に声をかけた。
「蒸す、ですか?」
「あぁ。前に蒸し器を買っていただろう?」
「はい。今のところ使い道がなく、棚の奥にしまったままです」
「その蒸し器を使って、食事の量を減らすというより、脂の少ない肉を使ったり、蒸したり煮たりする料理を増やしたい。あとは野菜や豆を多めにして……」
「なるほど。それなら今ある食材でも十分に対応できます」
「なら、しばらくそんな感じで頼めるか?」
「もちろんでございます」
「助かるよ」
夜会までの数日間は食事にも少し気をつけることになった。
……数日で大きく変わるとは思わないけど。
まぁ、何もしないよりはいいだろう。
それからさらに数日、俺は次の魔導具の構想を考えたりしながら過ごした。
ティアナも夜会に向けて、侍女と一緒に髪型を試しているらしい。
屋敷の中も、いつもよりどこか慌ただしい。
...... いよいよ夜会か。
まぁ、俺は俺でやることをやるだけだ。
……とりあえず、早く社交シーズンを終えて、アイスを食べたい。
第49話を読んでいただき、ありがとうございます。
夜会前の最後の準備回でした。
次回も楽しんでもらえたら嬉しいです。




