第46話 髪を巻くなら。
翌日から、ティアナに頼まれたカールアイロンの製作に取りかかった。
艶髪のように、熱を使って髪の形を変える魔導具なら、基本的な考え方は同じだ。
プレートを平らにする必要はない。
筒状にして、その周囲を均一に加熱できればいい。
ティアナは元々、ゆるいウェーブ髪だから、それを活かすなら少し太めの筒が良さそうだな。
……筒の太さを変えれば、カールの大きさも調整できる。
それなら、サイズ別にいくつか作ればいいか。
髪に触れる円筒部分を魔導陶板で作る。
魔導陶板に魔力を纏わせ、ゆっくりと形を整えていく。
太さを変えながら、三種類の円筒を作った。
次は魔導回路だ。
全体を均一に温めるには、艶髪と同じように、円筒全体へ魔導回路を均等に配置する必要がある。
表面に沿って、丁寧に描き込んでいく。
……魔力を流し、各部に均等に行き渡っているか確認する。
わずかなムラを見つけては、魔導回路を調整していく。
よし。問題ないな。
持ち手と先端部分は、艶髪と同じく絶熱樹脂でいいな。
次は、火属性と風属性を組み込む。
火属性で円筒部分を加熱し、風属性で温度を安定させる。
……。
……カールアイロンにも水属性を組み込むべきだよな?
ヘアアイロンでツヤを出せるようになって喜んでたし。
それなら、カールアイロンでも同じようにツヤを出せるようにした方がいいな。
火属性に干渉しないように、風属性の近くに水属性を組み込んでいく。
魔力の流れを調整しながら配置する。
水属性を組み込んだ部分に、少量の魔力を流してみると、円筒部分から白い蒸気が立ち上った。
感温石で蒸気の温度に問題がないことも確認できた。
よし。これなら大丈夫だな。
次は……
艶髪にも使っている、つまみ部分だな。
温度も110℃から160℃でいいだろう。
あとは、髪を押さえるための仕組みが必要か。
パカパカしてたことは覚えてる。
……魔導陶板で作って、外側は絶熱樹脂で覆えばいいか。
髪に触れる部分には熱を伝えたいが、手で触れる部分まで熱くする必要はない。
これなら、使用するときも少しは安全になるだろう。
……あとは、火傷しないようにどうすべきか。
艶髪と違って、今度は加熱部分が外側に露出する。使い方を間違えれば、髪だけじゃなく指や顔にも触れてしまう。
前世でも、カールアイロンで火傷したという話はよく聞いたことがあるし……。
……いや。構造上これ以上の安全対策は難しいな。
ん――……。
使用するときに、気を付けてもらうしかないか。
最後に魔核を取り付ければ……
……完成だ。
太さの違う三種類のカールアイロン型魔導具が完成した。
試しに毛先を巻いてみたが……自分で髪を巻くのは難しいな……。
……あとでティアナに試してもらおう。
「......ふう」
気づけば、もう夕方になっていた。
思ったより時間がかかったな。
……夕食まで、お茶でも飲みながら休憩するか。
いつもの茶葉でお茶を入れ、椅子に深く座り直した。
……それにしても、安全対策は難しいな。
円筒部分に、一回り大きな円筒を作って、直接触れられないようにするとか……?
あとは……前世で、風の力を利用して髪を円筒部分に巻き付けるようなカールアイロンがあった気がする。
なら、風属性を利用して……いや。それは難しいか。
すでに魔導陶板に風属性を組み込んでるし……。
風属性は温度を安定させるために使っている。ここからさらに髪を巻き付ける用途まで持たせるとなると、魔力の流れを調整し直す必要がある。
そうなると、魔導回路から描き直しになるな……。
……今回は、これでいいか。
諦めも肝心だ。
そんなことを考えていると、ノアが夕食の時間だと呼びに来た。
俺は食堂へ向かった。
すでにティアナが食堂に着いていた。
「今日もみんな夜会か?」
「えぇ。……フィン兄様は、本当に王家主催の夜会にしか参加しないのね。私は夜会に参加できるようになるの、楽しみなのに」
「……行ったら分かるよ。……家に帰りたくなるって」
「フィン兄様に聞いた私がバカだったわ……」
「え?」
……すごく呆れられたことだけは分かった。
まぁ、いい。
「それより。ティアナが言っていた魔導具が出来た」
「もう出来たの?!さすがフィン兄様ね!」
……現金なやつだ。
「……食べ終わったら試してみるか?」
「えぇ!楽しみ!」
第46話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は巻き髪用の魔導具作りでした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




