表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/59

第27話 氷の箱と魔力の無駄遣い。



はぁ……母さんに言われた通り、殿下へ返事を書くとするか。



『ご無沙汰しております。

こちらは変わらず元気にしております。

殿下もご健勝のことと存じます。


やはり情報がお早いですね。

清涼機ブリーズ扇涼ヴェントにつきましては、リリエン商会よりお贈りする運びとなっております。

今しばらくお待ちいただければ幸いです。


夜会につきましては、参加させていただく予定ですので、ご安心ください。

夜会にてお会いできますことを、心より楽しみにしております。』


……よし。これでいいな。


「ノア、誤字脱字のチェックをして欲しいんだけど」


「かしこまりました。それでは、お手紙を失礼いたします」


そう言うと、殿下へ宛てた手紙を読み始めた。


「問題ありません。……しかし、お手紙ではとても貴族らしい文章を書かれるのが、いつも不思議ですね」


「ん?」


まぁ、前世ではメールや文章を書く機会が多かったからな。それが貴族になった今でも、少しは役に立っている。


……もちろん、今世で受けた貴族教育のおかげでもあるが。


俺は手紙を封筒に入れ、封蝋で閉じた。


「これ、出しておいて」


「かしこまりました」



さて……冷凍庫作りの続きをしようかな。



作業部屋へ戻り、魔導回路の修正の続きから始める。


……修正作業って、めんどくさくていつになっても苦手だなぁ。

だからと言って、本体を一から作り直すのは魔力の無駄遣いになる。フィリップ兄さんくらい魔力があれば、本体ごと一から作り直した方が楽なのかもしれないけど。



なんとか魔導回路を消し終え、魔導回路描写ペンのペン先を(大)へ変更する。

先ほどよりも太くなったペン先を確認し、丁寧に魔導回路を描き始めた。


冷凍庫とはいっても、基本は冷蔵庫の魔導回路の応用だ。 何度も練習しているため、回路を描くこと自体に問題はない。


魔力を少しずつ流しながら、魔導回路の状態を確認していく。

……問題なさそうだ。



次は冷却機能の組み込みだ。


清涼機 《ブリーズ》で使用した冷却機能を基に、冷凍庫用へと調整していく。


それと同時に、一定の温度を維持し続けるため、水属性魔法を発動・制御する魔法陣も冷凍庫用に調整する必要がある。


だが、その調整が思ったより厄介だった。


少しの調整のズレで、一瞬にして箱全体が凍りついた。


……やっぱり、冷やすだけなら簡単でも、一定に保つというのは別の技術が必要みたいだ。


というか、これ……どうやって溶かせばいいんだ……。


清涼機ブリーズを置いていない廊下に置いておくか?

……いや、ノアに見つかれば、何を言われるか……。


はぁ……魔力で溶かすか。

これこそ、魔力の無駄遣いだ……。


冷やすために作った魔導具を、溶かすために魔力を使うなんて……凄く意味が分からない工程だな。


非効率にも程がある……。


ふと、魔導時計が目に入った。 すでに日付は変わっていた。


……この凍った箱は、このまま作業部屋に置いておこう。 寝て起きれば、自然に溶けているはずだ。


……今日はここまでにしよう。



風呂にゆっくりと浸かり、疲れを癒す。



今日は殿下への返事を書き、冷凍庫作りに取り掛かった。

まさか、冷やすための魔導具で、作業部屋に氷の箱を作ることになるとは思わなかったが……。


ふと、前世の記憶が蘇る。


冬になると、氷で作られたホテルやバーがあったな。

この凍った箱をもっと大きくすれば、似たようなものも作れるんじゃないか……。

……いや、そんなものを作ったところで、この世界で利用する人がいるのか?



……こんな思考になるのは、疲れている証拠だな。

さっさと寝よう。


風呂を終え、部屋へ戻る。

今日はもう何も考えずに眠ることにした――



コンコン――


「フィン様。朝でございます」


ノアの声で目を覚ました。


「……もう朝か」


まだ寝ていたい気もするが、腹が減ったな。

昨日は頭を使い過ぎたようだ。


作業部屋の扉を開け、確認する。すると、凍った箱はまだ溶けている途中だった。

魔導断熱板の性能が高いせいか、思ったより時間がかかりそうだ。


昼には溶けるだろうか……。


いっそのこと、庭に出しておくか。

最近の暑さに加え、太陽が直接当たる分、早く溶けるだろう。


手が凍傷にならないよう手袋をはめ、凍った箱を持って部屋を出た。


「……なんですか? その大きな箱のような氷は」


「新しい魔導具の試作品。溶かしたいから、庭に持って行こうと思って」


「試作品……なるほど……?私が庭までお運びしますので、フィン様は食堂へ」


「そう?じゃあ、お願い」


手袋と凍った箱をノアに渡し、俺は食堂へ向かった。



食堂へ着くと、父さんたちはすでに席についていた。


「おはよう」


「おはよう、フィン」


「おはよう、フィン兄様」


「おはよう、フィン。昨日はあの後、ちゃんと、殿下にお返事を書いたのでしょうね?」


「もちろん。ノアに預けてあるから、朝のうちに手紙を出しに行ってくれるんじゃないかな」


「そう。……それならいいのだけれど。相手は殿下なのですから、今後はきをつけなさい」


「……はい」


朝から母さんに注意されるとは……。

……もう少し寝ていれば良かった。



第27話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は冷凍庫作りの試行錯誤回でした。

次回も楽しんでいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ