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第22話 話題の中心。



――ティアナ――



「それにしても、フィン様って昔から便利な魔導具を作ってらして、本当にすごいわよね」


「えぇ。発想力も技術力も飛び抜けて優秀でいらっしゃるし」


「去年まで学園にいらっしゃったけれど、ほとんどお見かけしないくらい、忙しそうでしたものね」


……それは、いつものように昼夜関係なく魔導具を作っていたからだと思うわ。魔導具研究会の部屋に入り浸っていたみたいだし……。


「天は二物を与えずということわざが、他の国にあるけれど、フィン様は二つどころか、いくつも天から与えられていると思うわ」


「私もそう思う!侯爵家のご子息で、優秀な魔導具師で、それになによりかっこいいもの!あんなお兄様がいるティアナ様が羨ましいわ!」


えぇ……。


「……妹からすれば普通の兄って感じだけれどね」


「その気持ち、少し分かるわ。私にも兄がいるでしょう?確かに優秀で、今後も期待されていて、容姿も整っている方だと思うけれど、妹の私からすると優しい兄なのよね」


「ティアナ様もセレスティア様も羨ましいです!私には弟と妹しかいませんから」


「私は兄が三人もいるから、一人くらい姉が欲しかったわ。それこそ小さい頃、セレスティア様に『お姉様をちょうだい!』なんて、言った恥ずかしい思い出があるもの」


「あ!それ私覚えてるわ!ティアナ様と一緒に、セレスティア様のお家に遊びに行った時よね。ちょうど、学園の初等部からセレスティア様のお姉様が帰られた時に、一緒に遊んでくださって」


「そんなこともあったわね。私は『お姉様がティアナ様に取られちゃう!』って、泣いてしまって……」


三人で顔を見合わせて笑った。


……昔から変わらない。

セレスティア様も、アリシア様も、私にとって大切な友人だ。



その後、チャイムが鳴り、私たちはいつものように授業を受けた。


基礎学、魔法学、貴族として必要な教養。高等部になって内容は難しくなったけれど、友人たちと一緒なら楽しく学ぶことができる。



魔導具に関する講義もあったけれど、そのたびに、周囲から扇子型魔導具について質問され、私は何度も同じ説明をすることになった。


そして昼食を挟み、午後の授業も終わり――


「それでは、リリエン商会へ向かいましょうか」


セレスティア様の言葉に、私たちは頷いた。


それぞれの家の馬車で向かえば、リリエン商会の前が混雑してしまう。

そこで、数人ずつ馬車に乗り合わせて向かうことになった。


私はセレスティア様とアリシア様と同じ馬車に乗り込んだ。

馬車の中でも話題は、やはり扇子型魔導具のことばかりだった――




「あ、アレク叔父様」


リリエン商会に着き、馬車から降りようとしたその時――。


アレク叔父様が、お客様を見送っているところだった。


「やぁ、ティアナじゃないか。久しぶりだね。それに、リーヴェルト公爵令嬢とエヴァリス侯爵令嬢もご一緒だったとは」


「うん。他にも学園の子たちも一緒に来たの」


「そうなんだね。とりあえず外は暑いから、みんな中へどうぞ」


アレク叔父様に促されて、みんなで店内に入った。


すると――


「「「……!!涼しい!!」」」


店内へ一歩足を踏み入れた瞬間、ひんやりとした空気が身体を包み込む。


「こちらは最新の魔導具でして、今後発売予定のものです」


……もう冷却魔導具を店内に設置して、お客様に体験していただいているなんて。


さすがアレク叔父様。


これだけ涼しさを実際に体験したら、誰だって欲しくなってしまうでしょうね。



「もしかして、ティアナ様が言っていた冷却魔導具とは、このことかしら?」


「えぇ。この冷却魔導具、本当におすすめよ!」


「これも絶対欲しいわ!」


口々に感想を話し始める令嬢たちを見て、アレク叔父様がこちらへ歩いてきた。


「ティアナ。今日は何か必要なものがあったのかい?」


「えぇ。学園に扇子型魔導具を持って行ったのだけれど、みんな興味を持ってくれて。それで予約をお願いしに来たの」


「あぁ!もう宣伝してくれたのだね!ありがとう、ティアナ」


話に夢中になっていたみんなを落ち着かせると、アレク叔父様は一 人ひとりの予約を受け始めた。


扇子型魔導具と冷却魔導具の両方を予約する人がほとんどで、冷却魔導具は家族の分まで、扇子型魔導具も母や姉妹の分まで予約する令嬢も少なくなかった。


.....その筆頭は、もちろんセレスティア様だった。


「では、皆さん。こちらから扇子のデザインをお選びください」


そう言ってアレク叔父様は、色や柄の異なる扇子を、ずらりと並べた。その数は五十本近くもあった。


「もちろん、お持ちの扇子に冷却機能を付けることもできますよ」


「まぁ!こんなに素敵な扇子がたくさん……」


「私はお気に入りの扇子があるから、それに冷却機能を付けてもらおうかしら」


「姉の誕生日プレゼントにちょうど良さそうだわ」


みんなそれぞれ好みの扇子を手に取り、あれこれと見比べながら、楽しそうに選び始めた。




「こんにちは」


「いらっしゃっませ。フィン様」


その声に、思わずお店の入口へ目を向ける。


「フィン兄様!」


「え?……ティアナ?どうしてここにいるんだ?」


「学園のみんなと一緒に、扇子型魔導具と冷却魔導具の予約をお願いしに来たのよ」


「……え?」


「だから言ったでしょ。話題の中心になるって」


「俺が寝ている間に、こんなことに……」


「こんな時間まで寝ていたの?」


一体何時だと思っているのかしら……。


「徹夜だったんだからしょうがないだろ」



「あ、フィン様。お久しぶりです」


「セレスティア嬢、アリシア嬢。久しぶりですね。いつもティアナと仲良くしてくれてありがとう」


「いえ、こちらこそ。ティアナ様には仲良くしていただいております」


「私も、いつも楽しく過ごさせていただいていますわ」


「フィン様。よろしければこの後、新しく出来たカフェに行くのですが、ご一緒にいかがですか?」


「お誘いありがとうございます。ですが、この後は商会長と打ち合わせがありますので……」


「そうですわよね。お忙しいでしょう。フィン様は今、話題の方ですもの!」


「……私が、ですか?」


「えぇ。扇子型魔導具をお作りになられたとか。早くも学園の一部では知られておりますわ」


「ま、そういうことよ。私はこのあと、セレスティア様たちとカフェに寄って帰るから」


「あ、あぁ。楽しんで」


「フィン。先に商会長室で待っていてくれ。私も終わり次第、そちらに向かう」


「フィン様。ご案内いたします」


店員に連れられフィン兄様は、奥へ消えていった。



「さて、予約も無事できたことですし、私たちもカフェへ向かいましょうか」


セレスティア様の声に、私は頷いて、リリエン商会を後にした。





……私も扇子を選ぼうと思っていたのに、フィン兄様の登場ですっかり忘れていたわ。



第22話を読んでくださって、ありがとうございます。

今回はティアナ視点のお話でした。

フィンが知らないところで、扇子型魔導具が少しずつ広がっています。

次回はフィン視点に戻ります。

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