↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/61

第20話 平穏な生活は難しい。



食堂の扉を開けると、父さんと母さん、それにティアナが食事を始めていた。


「あら、フィリップにフィン。もう朝食には来ないと思っていたわ。どうせ二人で朝まで魔導具を作っていたのでしょう?」


なぜ母親という生き物は、息子の行動を理解しているのだろう。前世でも解けなかった謎だ。


「お兄様たち、また徹夜したの?二人が揃うといつもそうね」


ティアナにまで呆れられてしまった。


「冷却魔導具と扇子型魔導具を早く作りたかったんだよ」


フィリップ兄さんがそう言うと、父さんが――


「あれは本当に素晴らしいからな!騎士たちが早く販売してくれと言っていたぞ」


「アレク叔父さんの事だから、ある程度数が揃えば、すぐにでも販売され始めるんじゃないかな?」


「そうなれば、騎士たちも喜ぶだろう」


「近々、また素材を買いにリリエン商会へ行くから、その時にいつ頃販売を始めるのか聞いてくるよ」


「頼んだぞ。騎士団でも期待している者が多いからな」


……みんな涼を求めてるんだなぁ。

快適な生活を送るためには、快適な室温も大事だよね……。


……そんなことを考えながらスープを一口飲む。


あ、このスープ美味しい。



「久しぶりに侯爵家で食事を取っているけど、やっぱり美味しいな。魔導師団の食事は少し味気なく感じるんだよね……。みんな、食事より研究を優先する人が多いから」


「フィリップ兄さんも、その一人だと思ってた」


俺の一言にみんな笑ったが、フィリップ兄さんは苦笑いだった。


「そう思うなら、もう少し家にも帰ってきなさい」


「……善処するよ」


「フィンと同じこと言って……」


母さんから、チラリと視線を向けられ、フィリップ兄さんのせいで俺まで巻き込まれた。


「でも一週間後くらいに、本当に帰ってくる予定だよ」


「それはお義母様がいらっしゃるからでしょう。私が言わなければ、帰ってくる気もなかったでしょうに。……でしょう?」


「いや、そんなことは……」


「フィリップ兄様。目が泳いでいるわよ」



……やっぱり、うちの女性陣は強い。


「というか、ばぁちゃんが来るの一週間後なんだ?」


「えぇ。夏の社交シーズンに合わせて来られるからね。フィン、貴方も一度は夜会に出席しなさい」


「え、嫌なんだけど。あんな人が多いとこ、行きたくない。それに絶対暑いじゃん!」


「それこそ、アレクシスが嬉々として準備しそうだがな」


「え、嫌なんだけど。あんな人が多いとこ、行きたくない。それに絶対暑いじゃん!」


「それこそ、アレクシスが嬉々として準備しそうだがな」


父さんが苦笑しながら言った。


「父さんはいいよね。夜会の時はどうせ、騎士団で警備の仕事するんでしょ」


「まぁな。だが、侯爵家当主として王家主催の夜会には、顔を出さなければならないから、一度は参加する予定だ。フィンと同じでな」


「えぇ〜……。俺、その日は熱が出る予定だから」


母さんが呆れたようにため息をついた。


「何を馬鹿なことを言っているの?」


「フィリップ兄さんも参加しないでしょう?」


「王家主催の夜会だからな。魔導師団も警備につくことになる」


……ここにも裏切り者が!


「フィン兄様、一度くらい夜会に出席しないと、ウィルフリード殿下にまた言われるわよ。そろそろ直接招待状が届くんじゃない?」


「去年までは付き合いで、しょうがなく参加してたけど、学園を卒業したから、自由だと思っていたのに……。」


「そんな訳ないでしょ。エルーシア王女殿下も久しぶりに会いたいって言ってたわよ」


あぁ……エルーシア殿下はティアナの一つ下だったな。高等部と中等部で学年は違うけど、学園の食堂では一緒になることもあるか……。



「俺が救われるには、壁の花になるしかないのか……」


「また変なことを言って。夜会で壁際に立っているだけなんて、余計に目立つわよ。それに自覚が無いようだけれど、フィン兄様もみんなの憧れなのよ」


「いやぁ……エミール兄さんとフィリップ兄さんは分かるけど、俺はただの魔導具師だぞ。それに何のしがらみもない三男だそ。まぁ、侯爵家ってことなら、分からなくもないが……」


「何を言っているの? 三男であっても侯爵家のご子息でしょう。それに、フィン兄様はもう十分有名なのよ。昔から魔導具を作っていたこともあるけど、今日、学園に扇子型魔導具を持って行ったら、フィン兄様が話題の中心になるのは間違いないわ」


「えぇ……」


「だから!扇子型魔導具を広めるためにも今回の王家主催の夜会には、絶対に出席しないといけないのよ!きっとエルーシア殿下だって扇子型魔導具を欲しいと思ってくださるわ!」


「……そこはアレク叔父さんが王家に献上するでしょ。それに広めるなら、母さんとティアナが夜会に扇子型魔導具を持って行くだけで、十分広まると思うけど」


「とにかく、出席は決定事項だから! はぁ……フィン兄様と話していると疲れるわ……」


えーーー。



「フィン、そういうことだから諦めなさい。これ以上駄々をこねるようなら、貴方もお義母様に礼儀作法を教えていただくことになるわよ」


「いや、それは間に合ってる! しょうがないから一度だけ出席するよ……」


はぁ……。学園を卒業して数ヶ月で、俺の平穏な生活が終わりを迎えようとしている。

とりあえず、夜会にはなるべく目立たない服で行くべきだな!


そんな俺の考えとは関係なく、朝食は穏やかに終わった。





……とりあえず寝よう。


第20話を読んでいただきありがとうございます。

今回は、フィンの平穏な生活に少し変化が訪れる回でした。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。