第15話 妹への贈り物。
食堂に着いてからも、俺はフィリップ兄さんの言葉を何度も思い返していた。
まさか、こんな簡単なことに気付かなかったなんて……。
薄型鉄板を一枚増やすだけなら、大きさも重さもほとんど変わらない。
操作盤を大きくすることばかり考えていた。
でも、必要なのは外側を変えることじゃない。 内部の構造を変えればいいだけだったんだ。
魔導具師として、この発想力の差は悔しい。
「フィンはどうしたの?」
母さんは俺とフィリップ兄さんを交互に見た。
「さっきまで悩んでいたことが、あっさり解決したから落ち込んでるんだよ。フィンは昔から、一つのことに集中すると周りが見えなくなるからな」
そう言ってフィリップ兄さんが笑った。
「そうね。フィンらしいわ」
..... 母さんまで。
そんなに分かりやすいのだろうか。
「そんなに落ち込んでないで、ちゃんと食べなさい。どうせこの後はフィリップと作業部屋に、こもるのでしょう?」
「私は冷却機能の魔導具を早く作りたい。私の部屋には置いていないみたいだから」
「それは、あなたが全然帰ってこないからでしょう」
フィリップ兄さんは何も言い返せず、視線を逸らした。
「俺も操作盤の改良をしたいから、今夜は作業部屋にこもるかな」
「ほどほどにね」
「フィリップ兄様とフィン兄様は、本当に似てるわね」
「どこが?」
俺が聞くと――
「魔導具と魔法の違いはあるけれど、夢中になると時間を忘れるところ。二人とも、少しは休むことを覚えた方がいいと思うわ」
「……」
フィリップ兄さんと俺は何も言い返せなかった。
「ティアナの言うとうりね」
確かに、フィリップ兄さんと俺は似ているのかもしれない。
そう思っていると、ふと気付いた。
「そういえば、今日は父さん帰りが遅いんだね」
「えぇ。夕食は一緒に取れないって連絡があったって、さっき話したでしょう?」
「.....そうだったっけ?」
「ほら。やっぱり聞いてなかったじゃない」
ティアナが呆れたようにため息をついた。
「聞いてたはずなんだけど、頭に入ってなかった」
「だから言ったでしょう?フィン兄様は魔導具のことになると周りが見えなくなるって」
「……そうだな」
反論できないのが悔しいが、ティアナの言う通りだった。
その後も他愛のない話をしながら、賑やかな食事の時間は過ぎていった。
「じゃあ、私は先に作業部屋へ戻るよ」
「分かった。俺はお茶を飲んでから行く」
そう言って、フィリップ兄さんは一足先に作業部屋へ向かった。
母さんとティアナ、それに俺は、そのまま食後のお茶を楽しんでいた。
「ところで、フィン兄様。私の扇子型魔導具はいつ出来るの? お母様の扇子型魔導具がとても素敵で、私、とっても楽しみにしているの」
「あ......忘れてた」
操作盤の改良のことで、頭がいっぱいになっていた。
「ノア。作業部屋の机の上にティアナの扇子型魔導具があるから、持ってきて」
「かしこまりました」
「えっ、私のも出来てたの?!」
「うん。夕食の時に渡そうと思ってたんだけど、操作盤の改良のことばかり考えてたら、持ってくるのを忘れてた」
そんな話をしていると、ノアが水色の扇子型魔導具を持ってきてくれた。
「はい、これがティアナの」
「ありがとう!フィン兄様!」
ティアナは嬉しそうに扇子型魔導具を受け取り、早速、軽く仰いでみせた。
「わぁ!お母様の薄紫色も綺麗だったけど、水色もとっても綺麗!魔導回路が淡く光って、本当に素敵ね!」
「そうね。水色の扇子型魔導具、ティアナにとても似合っているわ」
「えぇ!一番お気に入りの扇子を選んで良かったわ!大切にするね、フィン兄様!」
喜んでもらえて良かった。
「明日から学園に持っていくわ!これで授業にも集中出来そう!」
ティアナは水色の扇子型魔導具を開き、何度も仰いでいた。
「じゃあ、俺もそろそろ作業部屋へ戻るよ」
お茶を飲み干し、食堂を後にした。
次こそは、操作盤にタイマー機能を組み込んでみせる。
第15話を読んでいただきありがとうございます。
今回はティアナへの扇子型魔導具のお披露目回でした。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。




