第128話 王子の残念な話。
「で、どういう流れで深窓の令嬢とウィルが婚約することになったんだ?」
「お茶会中止にならなかったのにも理由があるってこと?」
「お茶会に関しては、婚約の話がまだ公表前だからというのもあるが、ウィルに相手が見つかったとなると、私たちも……と、いうことだ。だから、最初に王妃様が仰っていただろ?『皆様に素敵な出会いがあることを願う』と」
……あれ、言葉の意味そのままだったんだ。
「だから、私たちも積極的に動くよう言われている」
「まじかよ!俺とフィンは今回、美味いもの食って帰ろうぜって話だったのにな!」
「うん」
夜会でそんな話したな。
「……いや、そんなことより!ウィルが婚約って!びっくりなんだけど!」
「そもそも、深窓の令嬢じゃなかったってこと?」
「そうだよ!エルディアス公爵家の次女って言ったら、俺らの一つ上で、深窓の令嬢で憧れの存在って感じだっただろ?それがなんで橋の修繕の指揮を執って、ウィルと婚約なんだよ。展開が早すぎてついていけないんだけど!」
「実際は活発な令嬢だったようだ」
……何のためにそんなめんどくさいことを?
「公爵家の令嬢ともなれば、殿下方の筆頭婚約者候補になるだろ?彼女には姉がいる。だから、大人しくしていた。……と言うのは建前で」
「「は?」」
「政治や時勢、貴族としての在り方に興味を持たれていたようだ。領地経営や街道の整備、他国との交易などについても、よく調べられていたらしい」
「あー……だから、ウィルと意気投合?」
「……もしかして、深窓の令嬢って言われてたのは、政治とか時勢についての本を読んでたから……?」
「そのようだ。公爵の書斎によく居たらしい。まだあまり、女性が政治などについて話すのを苦手とする者も多いから、外では大人しくしていたみたいだ。まぁ、婚約者選びの際に、姉君との兼ね合いもあったのだろう」
「……なんか、ウィルらしいな」
「確かに。何だかんだウィルって、身分や家柄だけで相手を選んだりせずに、実際に話して価値観が合う相手を大切にするもんなぁ。……それがアデリーナ様だったってことか」
「でも、何でこの場でその話をする流れになったんだ?別に後日でもよかっただろ?それを緊急みたいにマティアスが来るからびっくりしたんだけど……」
「それは……二人がアデリーナ様に好意を寄せないか、心配したんだよ。ウィルと婚約の話が進んでいるのに、仲のいい友人が知らずに失恋でもしたら大変だろ?」
「「……は?」」
ガレスは一瞬きょとんとしたあと、腹を抱えて笑い出した。
「ははっ!そんなくだらないことを話すために、緊急感を出したのか? ウィルもマティアスも、俺とフィンのことを分かってなさすぎるだろ!そんなことになるわけないのに!」
「……多分、ウィルフリード殿下はもう恋愛脳になってるんだよ」
「ウィルが?イメージ出来ない!ははっ!」
……あっ。マティアスが目を逸らした。あながち間違いではない……ということか?……本当なら意外だな。
「まぁ、そういうわけなので、アデリーナ様以外に声を掛けるようにして欲しい」
「そもそも、誰かに声を掛ける予定もなかったけどな!」
……食べに来ただけだしなぁ。
「それにしても、ウィルフリード殿下の婚約話がすでに進んでるとは思わなかった」
「確かに。ウィルって誰とでも仲良くなれるけど、深くまで仲良くなろうとはあんまりしてなかったもんなぁ。第二王子ってのがあるからだろうけど。そう考えるとアデリーナ様とは、よっぽど息が合ったんだろうな!」
「……一目惚れだったようだ」
「「……は?」」
「指揮を執っているアデリーナ様を見て、一目で惹かれたそうだ。今まで、そんな令嬢に会ったことがなかったからだろう」
「いや、アデリーナ様とは何度も会ってるだろ。一目惚れは違うんじゃないか?」
「アデリーナ様だと気づかなかったそうだ……」
「あー……深窓の令嬢のイメージとかけ離れてたからか?」
……なんとも残念な話だな。
第128話を読んでいただき、ありがとうございます!
ウィルの意外な一面が……。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




