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橅
家事を終えたらイチゴオレとおやつを用意して、地球の音楽に浸るためプレハブへ。二階の部屋より陽光が入るのも良かった。居間で一人掃除機をかけていると暗い考えに脅かされそうになるけれど、光で満たされたプレハブなら自然と心が休まる。だから今日もウトウトしてしまった。
もうすぐ智が帰る頃だろうか。タオルケットやソファーと違う感触が鼻に当たり薄目を開けると、焦げ茶色の物体が視界を塞いでいる。
違う、眼だ、真ん中の二つ。
横になったまま身構えるものの、ぴくりとも動かないのはぬいぐるみだからだと分かり、眠気が飛ぶ前に警戒を解く。
よく見たら、可愛いかも。鼻と口の間、ぷっくりしてて、私に甘えたがってるみたい。
自分の頭より一回り大きいムササビを両手で抱き寄せ、白い腹に顔を埋めてみる。えへ、くすぐったい?
すると部屋の隅で物音がして、なおざりに私が棚に戻したマンガを一巻から並べ直している智と目が合った。
「待って投げないで。いい知らせ、橅に」




