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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【怠惰】なぬいぐるみ
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夢の世界での出来事

 その日の深夜。

 既に夢魔は学園に侵入済みで即座にクラスメイトや協力者達と戦闘を繰り広げていた。


 夢魔の特徴は淫魔と言うにふさわしく露出の多い恰好をしている。

 もはや服と呼べる状態ではなく乳首しか隠れていないシールを張り、パンツは大切な部分しか隠せていない。尻は丸出しだ。

 それ以外は背中にコウモリの様な翼があるだけで後は人間と見た目は変わらない。


 そしてすでに彼女は負けかけていた。

 多くのクラスメイト達のほとんどは初見に魔眼で眠らせて夢魔のエネルギーを得るための手段にされていた。

 それでも苦戦しながらも追い詰めようとしたが、すでに眠らされている人達の精気を吸って即座にエネルギーを回復。いくら削っても即座に回復するのでいつまで経っても倒すほどには至らなかった。


「はぁ、はぁ」

「うふふ。今回は私の勝ちみたいね。いいわ~、ここなら多くの強者から精気を吸い取れるし、たまには他の英雄たちから直接精気を吸うのもいいかしら~」


 腰をくねくね動かしながら迫ってくる淫魔にきつく睨むが、淫魔は精気で回復できることと、彼女が既に疲労困憊ひろうこんぱいでボロボロである事で余裕を持っていた。

 彼女は流石に今回は本当に負けるかもっと思っていると、淫魔は武器である鞭を地面に叩き付けた後に下品な笑みを浮かべながら言う。


「あなたの事も私の淫夢に連れて行って上げる。昔のよしみって事であなただけは毎回直接精気を吸って上げる。大丈夫、女の子同士でも気持ちよくしてあげらから。あなたの好きなシチュエーションは何がいいかしらね~」


 そう言いながら鞭を振り上げ、止めを刺そうとする。

 彼女は両腕で防ごうとした時、何かが間に入って邪魔をした。


「わぷっ!?」


 しかし鞭の衝撃を受け止めきれなかったのか、間に入った物と一緒に強い衝撃が顔にぶつがるが痛みはない。

 しかし吹き飛ばされた事で床に激突するかと思ったが、背中に感じた衝撃も何故か大した事がない。

 何でだろうと顔にぶつかった物をどけると、衝撃を和らげてくれたものは何故か枕だ。

 何故枕?っと考えていると、後ろで衝撃を和らげてくれたのは布団の山。そしてその布団の山の中から転がり落ちてきた物を手に持っているとさらに疑問を持った。

 それは何故かシュウが実家から送られて来たというぬいぐるみ。

 眠たそうな顔をした可愛いぬいぐるみが何故こんな所にあるのか、なぜこんなタイミングで現れたのかも分からない。


 夢の中と言われても自分の思い通りに出来る訳ではない。

 あくまでも精神世界というのが正しい。

 なので相手の攻撃を防ぐ際に自分のイメージでどうこう出来るという事はない。

 もしそんな事になっていたら淫魔の思うがままだっただろう。

 そうならなかったのはお互いの意識が干渉し合って何もない空間になっているはずなのに、なぜぬいぐるみと布団が現れたのか分からない。

 まさか淫魔の精神がそれほどまでに強くなったのかと思ったがそれなら最初から使っていただろう。

 そして淫魔にとってもぬいぐるみと布団は予想外だったらしく、彼女、より正確にはぬいぐるみを睨んだ。


「誰かしら?ここまで精神干渉が出来る存在なんて知らないんだけど」


 彼女は戸惑いながらもぬいぐるみを抱えている。

 そしてぬいぐるみが大きな欠伸をした。

 その事に彼女は驚いたが、ぬいぐるみは全く気にせず話す。


「うるさくてぇ眠れないからぁ来ちゃったぁ~」

「喋った!!」


 ぬいぐるみが勝手に喋った事に驚く彼女だが、ぬいぐるみはやはり気にせず会話を続ける。


「せっかく寝てるのにぃ邪魔しないでよぉ~」

「あらあら、それはごめんなさい。それじゃその子を私の物にするからどいてくれるかしら~?」

「それはダメだねぇ。あとぉ僕の事ぉ置いてくれるかなぁ?」

「え、ええっと、はい」


 彼女は言われるがままにぬいぐるみを足元に置き、少し離れた。

 ぬいぐるみは少し苛立ちながら淫魔に向かって言う。


「君ごときのぉ雑魚淫魔がぁ僕の安眠を妨害するなんてぇ~いい度胸だねぇ~」

「ごとき。雑魚。ですって」


 淫魔は静かに怒るがむいぐるみ、ベル。柊から与えられた本名、ベルフェゴールは一切怯まない。


「当然じゃないかぁ。君は負けぇ。僕は勝ちぃ。世界を滅ぼせなかった奴を雑魚と言わずに何と言う」


 そう言ってベルフェゴールはほんのわずかに目を開けた。その一瞬でベルフェゴールは精神世界を支配した。そして瞬きほどの一瞬で夢魔を消した。

 彼女はその光景に驚きながらも、ベルフェゴールに聞く。


「あ、あの夢魔は……」

「閉じ込めたよぉ。僕の世界にねぇ。あぁ、雑魚が眠らせてた人達はぁ明日普通に起きるよぉ」

「そ、それならいいけど……ねぇ。あなた本当に何者?」

「えっとぉ。名乗る程の物じゃないよぉ。ふわぁ~」


 ベルフェゴールが欠伸をした時、彼女は急な睡魔に襲われたのだった。


 ――


「ここは……どこよ?」


 夢魔が居る場所は穏やかな気候と心地良いそよ風が吹くよく分からない所だった。

 周囲には様々な人間が心地よさそうに眠っている。

 スーツを着たサラリーマン、エプロンを着た主婦、まだ幼い子供、学生、老人などなど。様々な人間達が眠っている。

 そして本来であればただ眠っているだけの彼らに干渉できるはずの夢魔が干渉できない。

 でも夢魔として彼らの状態だけは分かった。ただ彼らは本当に、眠っているだけだ。


「ちょっとこれどういう事よ。寝ている人間に干渉できないだなんておかしいわよ」


 夢魔はとりあえず干渉できる人間が居ないか探している間に、見覚えのあるものを見付けた。

 それはぬいぐるみ。夢魔の邪魔をしたぬいぐるみがそこにあった。

 ぬいぐるみも眠っている様で静かな寝息を立てる。


「ちょっとあなた。起きなさいよ。私をどうするつもりなのよ」

「僕は君に仕事を与えるだけさ」


 突然の声に夢魔は振り向くと、そこに居るのは1人の可愛らしい女の子だった。

 見た目は本当に幼い女の子で、小学校低学年ぐらいに見える。だが服装はとても奇妙で、熊のぬいぐるみ型のパジャマというか、テディベアを大きくして服にしたような、奇妙な服を着た女の子。

 彼女は冷たい視線を夢魔に向けたまま首を掴んだ。


「ちょっと!何するのよ!!」

「無駄な事が嫌いだからささと終わらせるね」


 そう言って女性の目の前に扉が出現した。

 黒くて石造りになんているただの扉。無理に言葉をひねり出すとすれば黒くて何もない石造りの扉は不気味みな雰囲気を纏っていた。

 その何もない扉が開くと、その奥から怨嗟の声が聞こえる。

 何だろうと夢魔が確認する間もなく、夢魔は扉の奥に放り込まれた。

 そして落下する夢魔。扉の先は扉がある地点から10メートル程下の方に床があった。

 床に尻をぶつけた夢魔は尻をさすりながら周りを見てみると、驚愕した。


「な、なによ……これ」


 ひび割れた地面の上で苦し気に寝ているのは自分よりも強そうな天使やドラゴン、神までもがそこで苦しみながら寝ている。

 冷や汗をかき、明らかに息苦しそうに呻き、過呼吸を起こしながらも目が覚める事がない。

 この状況に理解できずにいると奇妙な女が上から降りてきた。


「そこに居るのは僕の邪魔をした存在達。せっかく僕が人間達を幸せな夢の世界の住人にしてあげたのにみんなを起こそうとするんだ。君だって苦しい夢、悪夢を見るより幸せな夢を見る方がいいよね」

「そ、そうね。その方が精気の質もよくなるし、都合がいいわ」

「だよね。でも彼らは違った。人間達を無理矢理起こそうとしたんだ。だから彼らにはここで悪夢を見せ続けてる。でも決して起きる事は出来ないようにね。永遠に悪夢にうなされて過ごしているんだよ」


 夢魔は目の前にいる奇妙な女に恐れ、心が砕けた。

 夢魔のような精神と深く結びついている異形は心が負けを認めると肉体にも強く作用される。

 分かりやすく言うと弱体化だったり、能力の一部が使えなくなる。

 自分よりもはるかに強い神やそれに近い存在に悪夢を永遠と見せ続ける。そんなとんでもない事をなんて事のないようにやってのける女に屈服した。


「お願いです。何でもします。だからこの空間から出してください!!」

「それは構わないよ。でも条件がある」


 条件と言う言葉に夢魔は強く恐怖した。

 どれ程の無理難題をぶつけてくるのか分からないからだ。

 どうか無理難題を押し付けられないようにと、必死に祈りながら女の声を待つ。


「そう怖がらなくてもいいよ。僕が君に頼む条件というのは働く事。上に居る人間達に幸せな夢を見せ続けるのが条件なんだ」

「幸せな……夢、ですか?た、確かにそれなら得意ですが……」

「もちろん人間達と吸い殺すほど精気を吸っちゃダメだけど、別に吸うなとは言わない。でもその代わりに幸せな夢を見せ続けるんだ。淫らな夢が見たいのであれば見せてあげればいい。母親に甘える夢が見たいのであれば見せればいい。夢の中なら誰でもヒーローになれる、誰でも好みの異性にモテモテになれる、そんな夢を、求める夢を、見せ続けるんだ」

「わ、分かりました……」


 夢魔は非常に混乱していた。

 あまりにも都合がよすぎる条件。この悪夢を見せ続けれる物を見せられなければ素直に従っていなかったかもしれないが、それにしても条件が良すぎる。

 そう思いながら人間達が眠る方に戻ってくると、ホッと胸をなでおろした。

 女は淫魔の手を取り再び黒い扉をくぐって人間達が幸せそうな表情をして眠る世界に戻ってきた。

 地獄から天国に戻ってきたような感覚を味わいながら、芝の感触にホッと声を漏らす。

 そして女は言う。


「それじゃ早速仕事を開始してね。丁度君の先輩たちがやってきたから」


 そう女が言うと、かなり強い夢魔や淫魔達が現れた。

 最低でも自分と同レベル、強い者だと夢魔の数倍辺り。そんな夢魔達が大量に現れた。

 女はそんな夢魔達に言う。


「この子は新入り。面倒見て」

「分かりました」


 それじゃっと女は夢魔達の前から消えた。

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