第7話:禁断の二十歩――深夜の潜入作戦と、絶望の光
運命の境界線まで、わずか二十歩。
煩悩に負けた一人の修行僧が、決死の覚悟で「禁断の自販機」に挑んだ記録です。
前回お話しした、暗闇に浮かび上がる「コーラの自販機」。今回は、そのスリル満点の突撃編です。
厨房の勝手口から、その自販機へ向かう道のり。永平寺と門前町の境界線まではわずか二十歩。
普通なら、スキップしても届くような距離です。しかし、その二十歩の間には、永平寺の厳しい「規律」という、目に見えない巨大な壁がそびえ立っていました。
許可なく敷地を出ることは、文字通りの「ご法度」です。
もし見つかれば、どのようなお叱りが待っているか分かりません。
「でも、どうしても飲みたい……!」
渇望が恐怖を上回り、私は一歩、また一歩と、抜き足差し足で自販機へ向かいました。
十五歩、十六歩……。
静寂の中で、心臓の音が耳元で鳴り響くような緊張感。
そしてついに、二十歩目。永平寺の敷地と門前町の「境目」に足をかけた、その瞬間でした。
――ピカッ!!!
突然、深夜の静寂を切り裂いて、強烈な防犯ライトが私を真っ向から照らし出したのです。
「ひえっ!」
心臓が止まるかと思いました。見つかった! とパニックになった私は、コーラのことなど一瞬で吹き飛び、転がるように厨房へと逃げ帰りました。
結局、その日は自販機のボタンに触れることすらできず、冷や汗をかきながら大人しく朝食の準備を始めることに……。
見えるのに届かない、近くて遠いコーラ。あの光に撃ち抜かれた瞬間の絶望感は、今でも忘れられません。
世の中には、越えてはいけない一線というものがある。
それを身をもって学んだ、春の苦い思い出でした。
明日の話は私の人生で一番思い出に残った日です。ハンカチを用意してお待ちください。
合掌
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
あのライトが光った瞬間、「仏様に見つかった!」と本気で思いました(笑)。結局、あの日の私はコーラを一口も飲むことができませんでしたが、あの恐怖心こそが、規律を守るための最初の試練だったのかもしれません。
明日は、そんな失敗続きの私が、人生で忘れられない感動と出会う話です。




