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イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-  作者: 流右京
第一章

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第09話「新たな守護者、その名はレオン」

「……っ!? グリオール!?」


ノクスは、目の前で起きた異常事態に呆然(ぼうぜん)としていた。


「は……!? な、なんだ? 何があったんだ!? どうなってる!」


隣で気絶していたライガも目を覚ましたが、状況をすぐに飲み込めない様子で、驚きと戸惑いが入り混じったような表情を浮かべていた。


「ぐ……っ!? ん……ぬぅ……っ」


グリオールも突然の状況に困惑しているようだったが、すぐ後ろに異形の気配を感じ、睨みつける。


二人の視線の先には、グリオールの脇腹に突き刺さった大きな鋭利な刃のような物体。その先端からは、赤い液体がポタポタと地面に垂れていた。


「い……っ、たぁいわねぇぇえ!!! 何すんのよこんの……クソがぁああっ!」


突然の怒声と共に、グリオールは背後に居た存在に向かって肘鉄(ひじてつ)を叩き込む。


「キキィイイッ!!?」


―――ドォォン!!! ガラガラガラ……。


異形の悲鳴が響き渡る。

その巨体は勢いに負け、広場の壁に叩きつけられた。


衝撃音とともに壁にひびが入り、周囲の空気はますます緊迫する。


「な、なんだ!? 異形?」


「にに、逃げろぉ!」


周囲の天人や商人たちはその光景を目にして恐怖に駆られ、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。


広場には悲鳴がこだまし、重苦しい空気が辺りを包み込む。混乱は瞬く間に極みに達した。


(そんな……! 天界(うえ)だけでなく中継地点(こんなところ)まで異形の侵入を許すなんて、防衛結界が機能していないのか……!?)


ノクスはその現実に恐怖と不安が交錯していく。

それでも、怪我をして片膝をついたグリオールに駆け寄り、なんとか体を支える。


「……ライガ!」


「おうっ!」


ノクスが短く呼びかけると、ライガは素早く意図を理解したかのように二人の前に立ちふさがり、鋭い目で異形を睨みつけた。


「アイツをぶっ倒せば良いんだよな!?」


「正確には僕たちを守りながら、です!」


「ったく、面倒だな!!」


悪態をつきながらも、ライガは以前のように無謀(むぼう)に突っ込むことはしなかった。

慎重に二人を守るように構え、その場から動かない。


「アタシは……大丈夫よ。致命傷じゃないわ」


「強がらないでください。とりあえず止血しないと」


そう言うと、ノクスは空中に向かって詠唱を始めた。

すると空間に手のひらサイズの穴が開く。


「幸い、先の戦闘で回復アイテムを使用しなかったのでストックは充分にあります。とりあえず包帯と、止血剤と……っ」


―――バチッ!!!


ノクスがその穴に手を突っ込んだ瞬間、空間から突如として電撃が走った。


「……うっ!?」


「なんだ、どうした!??」


ノクスが悲鳴を上げると、異形と対峙していたライガが驚いて振り返る。

見ると、ノクスの手は軽い火傷を負い、赤く腫れていた。


「な、これはっ!? アイテムを格納している空間にアクセスできない!」


「……なんですって!?」


ノクスの言葉にグリオールも驚きを隠せない。


(異形の影響で空間が歪められている……? いや、そんなことが可能なのか?)


「おい、なんだ!? 何が起こってる!? 説明しろ!」


ライガは苛立ちを隠さず問い詰めるが、その瞬間、ノクスは彼の背後を指さした。


「ライガ!! 後ろ!!!」


異形はライガのすぐ背後まで迫っていた。

巨大な刃を振りかざし、ライガの背中を狙う。


「――しまっ……!!」


ライガは殺気を感じて身を翻そうとしたが、防御が間に合わない。


その時だった。



―――ドォオオオンッ!!!!



突如、上空から一つの人影が異形目掛けて落下し、その巨体を押し潰す。

その脳天には鋭くナイフが光っていた。


「――ギャァアアアアッ!?」


そして異形は断末魔の悲鳴を上げ、黒い霧となって消えていく。


一瞬の静寂が訪れる中、ライガは土煙の中に立つ人影に目を凝らした。


「…………」


土煙が晴れると、そこには黒髪の青年が凛と立っていた。彼の目には迷いがなく、その(たたず)まいは威厳に満ちている。


「おや? 君はもしや……レオン君ですか……?」


その問いかけに、レオンと呼ばれた青年は振り向くと手に持っていたナイフを両の太ももに取り付けたホルスターに収納し、胸に手を当てると礼儀正しくお辞儀をした。


「守護者レオン、只今参上致しました。ノクス様、お怪我はございませんか?」


「え、ええ。ありがとうございます」


ライガは突然現れた青年を警戒し、身構えながらノクスに問いかける。


「おい、アイツは誰なんだ!? 敵か!?」


「ああ、大丈夫ですよ。ほら、家を出る前に話していたでしょ? 彼はグリオールの……」


そう答えたノクスの言葉は、突然響いた低い声によって遮られた。


「……レ~オ~ン~??」


と、レオンの背後からドスの効いた声が響く。


「……ビクッ!!!!」


その声に、レオンは一瞬体を震わせる。

青ざめて微動だにせず立ち尽くしているその顔には冷や汗がにじんでいた。


「今頃ご登場ってどういう了見(りょうけん)かしらぁ~?」


グリオールは、ゆっくりとレオンの肩に手を置く。


「……ッ!」


グリオールは、腹からダラダラと流れる血は気にも留めず、冷たい視線をレオンに送っている。

怒りで痛みを忘れているのかもしれない。


「ね~ぇ? 主人に呼ばれたら2分以内に駆けつけるのが、アタシのお人形としての常識よねぇ?」


レオンの鍛え上げられた腕の隙間から胸に向けてグリオールの手がゆっくりと潜り込んでいく。


「他にも色々、アンタの体にた~っぷり教え込んであげたはずなんだけどぉ?」


「…………ッッ!」


グリオールの手は徐々に下部を目指しレオンの体をゆっくりと滑り落ちていく。そのまま、乳首、腹の割れ目とレオンの筋肉の凹凸を確認するように体をなぞりながらグリオールの手は徐々に進行していった。


その度に、レオンの体はビクッビクッと小刻みに反応する。


「ね~ぇ、どうしてぇ? まさか……面倒だったとかじゃないわよねぇ?」


続けて、グリオールは止めとばかりに耳元で(ささや)くように問いかける。


「…………ッッッ!!!」


レオンは体中汗だくになりながら、抵抗することなく必死にグリオールの責め苦に耐えているようだ。


「そうねぇ~? もっと念入りに教え込んだほうが良いかしらぁ~? このあたりを念入りに、色々と」


グリオールの手がレオンの下腹とズボンの隙間に差し掛かった瞬間、レオンは「……ゴホンッ!!」と咳払いした。

そして、ビシッと(きびす)を返してグリオールに向き直る。


「……いいえ、滅相もありません。グリオール様は俺の全てです! その、グリオール様がお帰りになるまでに食事の用意をしていて……っ」


「……ふぅ~ん? それで? それだけ? 他に言う事なぁい?」


「~~~~ッ!!! そ、それに! 俺の愛する人なら……この程度の困難にはめげないと信じてましたから……っ!」


レオンはキリッとした表情で、ジッと主を見つめ返した。


「あ……ぁはあああああんっ!!」


グリオールは突然、頬を紅潮(こうちょう)させてレオンに抱きつく。

まるで舞い上がっている大猿……もとい、動物のようだ。


「んもぅっ! レオンったらぁ! 仕方ない子ねぇ~っ!!」


「…………ッッッッ!!!」


レオンは再び真っ赤になりながら汗だくで頬ずりの嵐に耐えている。


「あの、ちょっとグリオール! あなた今、腹に穴開いてるんですよ!?」


相変わらず腹から血を垂れ流しながら興奮するグリオールをノクスが必死に(いさ)めた。


「そういや、イロイロして遊んでる“彼”が居るって言ってたな……」


ノクスの必死な声に、グリオールはウィンクして答える。


「大丈夫♪ 状況が変わったわ。今はレオンが居るし」


そう言ってレオンの(あご)をクイッと上げる。


「レオン? ……少し吸うわよ?」


「……了解です」


レオンが目を閉じると、その端正な顔立ちは一層際立った。


「うふっ♪ 良い子ねレオン……」


そして、グリオールはその唇をしばしうっとりと観察した後、そっと自分の唇を重ねる。


「え……っ、んな……っ!?」


ライガはその光景にぎょっと目を見開いた。

Copyright(C)2025-流右京

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