第10話「どこかで会ったことねぇか?」
二人は時折、クチュクチュと水音を立てながら舌を絡ませ合い、互いの唇を愛撫していた。
「んん……っ、ん……はぁ……っ!」
レオンの頬が赤く染まり、体が何度も小さく震える。それでも直立したまま、動きを抑えているようだった。
「ぷはっ! はぁ……っ、はぁ……っ」
濃厚なキスが終わる頃にはレオンの息遣いは荒くなり、その目元はどこか焦点が合っていないような表情だ。
グリオールは慣れた様子でその顔を見ながら「うふふっ♪」と笑うと、呟く。
「ごめんねぇ、レオン。ちょっと吸い過ぎたかしらぁ?」
「い、いえ……。問題、ありません」
レオンは表情を隠すように手の甲で唇を拭くと、必死に息を整える。
その様子を見ていたライガは耳まで真っ赤だ。
「お、おい! あああアイツら、な、な、何やってんだ……っ!?」
「ああ、あれはですね……」
説明しようと口を開いたノクスよりも先に、グリオールの腹の穴がみるみる塞がっていく。
「こ、これって……?」
そして、完全に穴は塞がり跡形もなくなった。
「はぁ~い! OK~! グリオールちゃん、ふっか~つぅ!」
「マジかよ……。本当に跡形も無くなってやがる……」
「これが魂力の力の一旦よ、ライガちゃん。アタシは常に自分の魂力を一定量レオンの中に注ぎ込んでるの♪ で、さっきみたいに必要に応じてレオンから、ちゅ~ちゅ~してるわけ♪」
「~~~~~ッ!」
グリオールは説明の合間にもレオンに投げキッスを送っていた。
レオンは顔を真っ赤にし、頭から湯気でも出そうな勢いだ。
「魂力ってのは、回復にも使えるんだな」
ライガが感心したように呟く。
「ええ、でもこれはあくまで緊急処置です。肉体の再生には魂力を大量に消費しますから。僕たちも少しの怪我では魂力を使ってまで治しません」
「まぁね~? 本当なら毎回レオンにちゅ~で治してもらいたいのは山々なんだけど」
「……ゴホンッ!! あの、グリオール様。あの子が例の……?」
レオンは視線をライガに向けた。
「あぁ、そうそう! この子がライガちゃんよぉ♪ 守護者の先輩として、仲良くしてあげて?」
レオンは頷き、ライガの元へ歩いて行く。
「初めまして、俺はレオン。グリオール様の守護者を担っている。これから宜しく頼む」
「…………?」
ライガはレオンの顔をジッと見つめている。
「……どうした?」
レオンもその視線を感じ取ったらしい。
「いや、なんつーか。俺達、どこかで会ったことねぇか?」
「……………」
ライガの言葉に、レオンは短く息を呑んだように見えた。
「……いや、初対面だ」
「……なぁ、俺たち前からずっと一緒に居なかったか?」
「……………」
疑問を投げかけるライガに、レオンは目線を逸らす。
「……気のせいだ。俺とお前は、今日初めて会った」
「お、おう……? そっか」
挨拶を終えると、レオンはノクスに会釈し、そのまますぐに主人の傍に戻っていった。
「さ、元気モリモリになったところで! さっきの異形の件を報告しないと!」
グリオールはパンッ! と手を叩くと、ノクスに声を掛けた。
「そうですね。そういえばグリオール。防衛結界が異形に反応しなかったという報告は聞いていますか?」
「ああ、そういえばアタシのとこにも報告があったわねぇ? てっきり、奴らがすり抜けられるのは天界に張った結界だけだと思ってたから、完全に油断しちゃってたわぁ」
「僕もです。それにさっきアイテムが取り出せなかったことも気になりますし、一度中央大聖堂へ報告に行きましょう。場合によっては本格的に状況を調査する必要がありますね」
「中央大聖堂??」
聞きなれない言葉に、ライガは首を傾げる。
◆◇◆◇
4人はさらに街の中心部へ向かった。
やがて、街の中央にそびえ立つ大きな建物が視界に入る。壮麗で美しい建築様式に、ライガが感嘆の声を漏らした。
「ここが中央大聖堂、僕たちの職場の一つです。他に南聖堂と北聖堂、東聖堂と西聖堂があります」
「アタシとノクスはね、東聖堂の政務官をしてるのよぉ~♪」
「んぁ? 政務官?」
中央大聖堂の内部は広く、高い天井からは荘厳なシャンデリアが輝き、壁や柱には精緻な彫像が並んでいた。
「先ほど言った、魂の生まれ変わり。僕たちはそれを管理しているんです」
「ノクス、実際に見てもらったほうが早いんじゃなぁい?」
「そうですね。では、報告の前に“浄化の部屋”に寄って行きましょう」
ノクスの言葉に、ライガは不思議そうに眉をひそめた。
「……浄化の部屋??」
「見れば分かりますよ。さ、僕についてきてください」
そして一行は、中央大聖堂の奥へと進んでいった。
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