第61話「招かれた茶会」
グリオールの案内で食堂に通されたノクスとライガ。
テーブルの上にはレオンお手製の色とりどりのお菓子やケーキが並べられ、甘い香りが漂っていた。
「んふっ♪ ごめんなさいねぇ~? 友人を自分のお家に招くなんて初めてだから勝手が分からなくって。歓迎パーティーってこんな感じで良いかしら♪」
「……どうぞ、ノクス様」
レオンは慣れた手つきで紅茶を淹れ、静かにノクスの前へ差し出す。
「あ、ありがとうございます……」
ノクスが恐縮しながらカップを受け取ると、レオンは一通りの準備を終え、グリオールの後ろに立ち、手を後ろに組んで待機した。
「ライガちゃん、体の具合はもう良いのかしらぁ?」
「モグモグ……! しゃっき、ノクひゅに魂力しょしょがれて元気になったじょ」
ライガはすでにテーブルのお菓子を口いっぱいに頬張っている。
「ふふっ、それだけがっついてれば大丈夫そうねぇ?」
ノクスは微笑ましくライガの様子を眺めつつ、ふと思い出した疑問を口にした。
「そ、そういえば……! ライガとレオン君はどうして解放の儀の影響を受けなかったのでしょう? 同じ受肉人形の状態だったジルミスはすぐに魂が剥がれ落ちそうになっていたのに」
「あら、覚えてない? その子の召喚時にアタシの髪を使ったからよぉ。この冥王グリオールの髪をね」
「じゃあ、貴方は本当に冥王……。実在していたのですね」
「シンボルだシステムだって言ってたのはあのジジイの妄想。ほらアタシ、アンタの前から時々居なくなってたでしょ? たまにこっちに帰って魂を循環させるお仕事してたの。天人って基本、事件事故以外じゃ滅多に死なないから、それでも十分なのよぉ」
「あ、そうか……。冥王に認められた者しか冥界に来れない、との話でしたけど」
「ええ。アタシの代行としてレオンを東聖堂に同行させた時、アンタ達のことは“認めてる”って言ったでしょ? あれが一種のパスポートみたいなものなのよ」
グリオールは紅茶を口に運びながら続けた。
「あ、ちなみにこの前帰省した時にあのジジイが気絶してたから、服だけ用意して放置したのもアタシよ。枯れたジジイの素っ裸なんて見たくもなかったし」
そう言いながら、グリオールはレオンに頬をすり寄せ、肩や背を撫でる。
「やっぱり、男の裸を見るならイケメンに限るわよねぇ~?」
レオンは顔を赤くして、視線を逸らしたまま立ち続けている。その様子に、ノクスは日常的に繰り広げられる二人のやり取りを思い出し、少し安堵した。
「あ、あのですねグリオール? その時にジルミスを止めておけばこんな事態には……」
「仕方ないじゃない。アタシだってジルミスは死んでここに来たと思い込んでたし。それに、ごく稀に肉体を持ったままこっちに流れてきちゃう天人だっているのよ? まさか受肉した人形だなんて思わないわよぉ。ま、結果的に何とかなったじゃな~い?」
その態度に、ノクスは思わずため息を漏らした。
「そういえば、貴方は貴方で今まで何をしてたんです?」
「だ~か~ら! お仕事よ、お仕事♪ ここよりもっと地下深くで魂を循環させてたの。そしたら、やたら天人達の魂が流れ込んできてね? これは只事じゃないって、上に戻ってきたのよぉ」
(なるほど、ちょうど守護者達が天人達に反旗を翻した頃合いか……)
「で、戻って来てみればクソジジイがアタシのお気にの椅子にしがみついてるじゃない? な~んかイラッときたから、魂ごと消滅させちゃった☆ んふっ♪」
(か……軽いノリで、何てえげつないことを……っ!)
「グ、グリオール様。玉座の間、の、修繕に……取り掛かって……んっ、くっ、宜しいでしょうか?」
グリオールに撫でられながら、レオンが低い声で言った。
「あ、そうだった。あのジジイが派手に暴れたせいで、ぐちゃぐちゃになっちゃったわね。ちゃっちゃとやってきて頂戴な」
「……では、失礼致します。何かご用命がありましたら、お呼びください」
グリオールから離れたレオンは一礼し、静かに部屋を出て行った。
「そういえば、レオン君の魂が引き剝がされなかったのも、貴方の人形だから……ですか?」
「んん~……そうねぇ? それもあるんだけどぉ……」
ノクスは眉を寄せ、グリオールに視線を向けた。
「貴方の正体にも驚愕ですが……、もしやレオン君にも何か秘密があるのですか?」
「まぁね。折角の機会だし、レオンについても話しておいたほうが良いかしらねぇ?」
グリオールはそう言い、これまでのいきさつを語り始めた。
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