表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-  作者: 流右京
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/66

第33話「適性(ジョブ)」

4人は目的の教会に到着した。教会の前には多くの若者たちが集まり、にぎやかな声で溢れている。


「んぁ? なんだぁ? 何かやってんのか?」


ライガが周囲を見回しながら言った。


「おや、丁度良かった。もうそんな時期ですか」


ノクスは足を止め、入り口を眺める。するとグリオールが、口元に笑みを浮かべて提案した。


「絶好の機会じゃない。中の様子、見学させてもらいましょうよ」


教会の広間には参列者がぎっしりと座り、壇上には数名の若者たちが集まっていた。ノクスたちも席を見つけ、静かに腰を下ろす。


やがて、神父と思しき老人が姿を現す。場内が静まり、声が響き渡った。


「皆さん、お待たせ致しました。では、只今より拝受の議を執り行います。よい適性(ジョブ)を授かるよう祈りましょう!」


「……んぁ? 適性(ジョブ)? なんだそれ」


ライガがノクスの方を向く。


「見ていれば分かりますよ」


ノクスは小さく答え、壇上を注視した。


若者の一人が神父の前に膝をつく。神父は水晶を掲げた。


「なぁ、おい。あのジイさんが掲げてるのって……」


「ええ。我々の魂力です。そして、あの水晶は魂力の変換装置のようですね」


言葉を交わす間に、神父が若者に水晶を近づける。

すると、淡い光が若者に降り注いだ。


神父はその光の量を見て、書物と見比べた後、大声で若者に告げる。


「貴方の適性(ジョブ)は……≪闘士(ウォーリア)≫です!」


「いよっしゃぁあああ!! 戦闘向きじゃん! ラッキー!」


若者が跳ね上がり、周囲からどよめきが起こる。ライガが眉を上げた。


「なんだぁ? ≪闘士(ウォーリア)≫?」


適性(ジョブ)の一種ですよ。天界と違って地上界にはモンスターが溢れていますから、討伐を生業(なりわい)にする者も多いようです」


その後も、神父の言葉に合わせて次々と若者が適性(ジョブ)を告げられていく。だが、壇上の一人が突然声を荒げた。


「くっそぉお! 何だよ≪道化師(クラウン)≫って! 何の役にも立たねー!」


「ははっ、残念だったな。お前、この前盗み働いたから冥王に呪われたんじゃね?」


「これも全部“冥王の呪い”のせいだ!」


その言葉に、ライガがちらりとノクスを見る。


「……冥王の呪い?」


「その話は教会を出てからにしましょう。儀式も終わったようですし、場所を移します」


◆◇◆◇


広場の木陰のベンチに腰を下ろし、ノクスは口を開く。


「ここならゆっくり話せますね。先ほど聞き慣れない言葉がいくつかありましたよね?」


ライガが身を乗り出す。


「おうっ! あれ、何なんだ?」


「中継地点の街でライガに服を買ったのを覚えていますか? あの時に支払った魂力は、業者を通じて各地上世界に送られます。テラアースでは教会の変換装置に集められているようですね」


「で、それを適性(ジョブ)って形にして人間に注いでるってわけよ」


グリオールが横から口を挟む。


「元々はアタシたち天人しか使えなかった術を、人間達が真似て、誰でも扱える形に改良したものらしいわよぉ」


「ええ。特に攻撃が得意な適性(ジョブ)などは、モンスターがいる地上界では需要が高いのでしょう。火や氷を扱う≪魔術師(ウィザード)≫とかね」


「でも、魂力って貰い物だろ? んなもん、すぐ尽きるんじゃねぇのか?」


「いい質問ですね。適性ジョブは魂の潜在能力を引き出すきっかけに過ぎません。方向性を与えるだけで、その能力を伸ばせるかは本人次第です」


ノクスがそう言うと、ライガは眉をひそめ、短く唸ったように見えた。


「ふ~ん……で、“冥王の呪い”ってのは?」


「あれは天界の裏にあるとされる“冥界ヘルフレイル”の主、冥王のことを指すのでしょう」


その時、横にいたレオンがわずかに肩を震わせたように見えた。


ノクスには意味が掴めなかったが、グリオールはわずかに口元を歪め、何かを含んだ笑みを浮かべている。


「ねぇ、ライガちゃん。地上界の人間が死ぬと、その魂は一旦浄化装置に集められてお洗濯されて、また地上界に転生する。ここまでは前に説明したわよね?」


ノクスの説明に続いて、グリオールが声をかける。


「じゃあ、天人が死んだら、その魂はどこに行くのかしらぁ?」


「どこって……。浄化装置だろ?」


「いいえ、天人が死ぬとその魂は“冥界ヘルフレイル”へ行くとされています。そして“冥王”により、再びアルフレイルへ送り返され、生を受けるとの話です」


「との話ですって、何だよ。ノクスは行ったことねーのかよ」


「行ける訳ないでしょうが! 死ぬ以外に生きたまま冥界に行けるのは、冥王に認められた者か、勇者の適性(ジョブ)を持つ地上人だけです」


「んぁ? 勇者ぁ??」


その言葉にさらに驚きの表情を浮かべるライガに、グリオールは冷たい視線を送りながら言った。


「ええ。通常の地上世界の人間が行けるのは、せいぜい中継地点まで。本来アルフレイルにすら行けないの。でも勇者の適性(ジョブ)を持つ者はあらゆる世界に行けるとの話よぉ? 次元の壁を越えて他の地上界に行けたりね。もちろん冥界も例外じゃないわぁ」


「と言っても、勇者は10億人に一人の確率でしか発現しない最上級にレアな適性(ジョブ)らしいですね」


ノクスが最後に付け加える。


「なんだよそれ! じゃあ誰も勇者になれねーじゃん!」


ライガは呆れ顔で呟く。


「ねぇ、その10億人に一人……どうやら出ちゃったみたいよ~?」


グリオールがにやりと笑う。


「え……!? 出たんですか? それ僕も初耳なんですが」


ノクスは驚きの表情を見せる。


「ほら、そこの石碑に勇者が何たらって書いてあるわ。……これって記念碑じゃない?」


グリオールが広場の片隅に立つ石碑を指さした。


「へぇ……? 記念碑まであるとは、つまりその勇者は“テラアース”の人間なんですね。一体、どんな人物なんでしょう?」


ノクスとライガは興味津々で石碑の方に目を向ける。


「ん? おい、なんか名前掘ってあるぞ? これ何て読むんだ?」


ライガが石碑に書かれた名前を見つけ、指を指して尋ねる。


「……どれどれ、ええっと」


ノクスがその名前をじっくりと読み上げた。


瞬間。顔色が変わり、目を見開く。


「こ、こ……こんなバカなことが……!」


ノクスは驚きと困惑の入り混じった表情を浮かべ、言葉を震わせる。


「おいっ、何だよ! 早く教えろ!」


ライガが焦りながら尋ねる。


「ゆ、勇者……“勇者ライガ”!!???」


ノクスがついに言葉を発した。その言葉が広場に響き渡ると、周囲の空気が一瞬にして凍りついた。

Copyright(C)2025-流右京

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ