第21話「サイドエピソード:レオンの肉体(からだ)」
※今回の話は、グリオール視点です。
「この辺りなら、誰も来ないかしらぁ~?」
ライガの介抱はノクスとリアナに任せ、グリオールは気を失ったレオンを担いで近くの森へと向かった。少し進むと開けた場所に出たため、そのままレオンを乱暴に地面へ放り投げ、足で顔をぐりぐりと踏みつける。
「はぁ~い? レオン」
反応はない。ぐったりとしたままだ。
「ご主人様の御前よぉ? ほら、おきなさい!」
パチンと指を鳴らす。
「がは……っ!?」
レオンの全身が大きく跳ね上がった。まるで電流が走ったかのように体が弓なりになり、荒い息を漏らす。
「おはよう、レオン。調子はどぉ~お?」
「……グリオール……さま」
声を聞いて満足げに頷くと、グリオールはぼそりと呟く。
「……ここまで歩いてきて疲れちゃったぁ。“椅子”が欲しいわねぇ」
レオンは黙って頷き、仰向けのまま腰を上げて頭で体を支えた。
「ふ……っ! ぐ……ぅ。……っ!!」
ぎこちなく背中を反らし、ブリッジの形を作る。体が震えているのがわかる。
「……よいしょっと♪」
グリオールは迷わずその腹の上に腰を下ろした。
「ぐぁ……あぁ……っ!!! ~~~~……っ!!」
さらに自分の体重以上の重さを加えるように腰を沈めると、尻の下で骨がきしむような音が響く。それでもレオンは必死で“椅子”の役目を全うしている。苦悶に歪んだ顔から汗が額を伝い、滴り落ちた。
「“さっき”より強めにしてあげたから、もう気絶はしないと思うけどぉ?」
そう、あの時。
ライガの足に縄が絡まった際に、レオンがタイミングよくナイフを届けられたのは偶然ではない。グリオールが、先ほどのように指を鳴らして覚醒させたのだ。
グリオールはレオンの“椅子”の座り心地を確かめながら、わざとらしく下腹部と胸の辺りに手を置き、膝を組む。
「……はい、あ、あり、がとう、ござい……ますっ!」
レオンは尻を地面に着けず、全身から滝のような汗をポタポタと地面に落としている。
「それで、どうだった? アタシの魂玉は凄かったでしょぉ~? 気絶するほど気持ち良かったんじゃない?」
その男の証を確かめるように、レオンの股間をスリスリとまさぐったり、時折激しく揉みしだきながら質問する。
「……っ! はい、気持ち……良かった、です」
「ふぅ~ん……? どれどれ?」
片手でベルトを外し、ズボンを掴んでグイっと上げ、中を覗き込んで確認する。
下着ごと強引に引っぺがすと、むわっとした匂いが漂ってきた。
「へぇ~? 確かに“気持ち良かった”みたいねぇ~? やだ、ぐっちょぐちょ♪ オス臭くて良い匂い♡」
「………ッ!!!!」
レオンの顔が耳まで真っ赤になるのを、グリオールは楽しげに眺めた。
「ま、良いわ。今日は面白いものが見れたから、帰ったらご褒美たっぷり注いであげる」
「……あ、あり、がとう……っ、ござい、ます……っ!」
腰を上げると、レオンはその場に崩れ落ちた。息を荒げ、肩が上下している。足元が不自然に曲がっているのを見て、グリオールはわずかに口角を上げる。
「……ね~ぇ、レオン? アタシに何か言うことなぁ~い?」
「…………」
しばし間を置き、レオンは口を開く。
「……俺は、貴方を愛しています」
その言葉に、グリオールは冷ややかに返す。
「……ふぅ~ん。まだそんなこと言えるのね」
「グリオール様。まだ……アイツを許しては頂けないのですか?」
「さぁ? どうかしらねぇ~?」
短く答えると、レオンは答える。
「……ならば俺は、必ずライガを殺してみせます。愛する貴方の為に」
「あっそ。せいぜい期待してるわぁ~?」
グリオールは笑みを浮かべ、わざと軽く受け流す。
そのまま伸びをして、大きくあくびをした。
「あぁ~ん! なんだかアタシ、眠たくなってきちゃったぁ~! ねぇ~え? お家まで抱っこしてぇ~? お姫様みたいに♪」
「……了……解」
レオンは跪くと、骨折して不自然に曲がった両腕を差し出してきた。
痛みで僅かに震えているような腕、しかしグリオールはドサッと身を預けた。
「……よいしょっと♪」
―-ベキッ! ミシミシ……ッ!
「が……ぁっ!? ~~~~ッッ!!!」
何かが折れ、砕けるような音と、レオンの悲痛な声。
「んじゃ、家に着いたら起こしてねぇ~?」
抱き上げられた瞬間、レオンの体が震えた。
「~~~~っっ!!!! ぐ……うぅううううっ、ぬぅうううぁぁぁっ!!」
渾身の力を込めて抱き上げるレオンの腕は腫れあがり、紫色に変色している。全身から大量の汗が流れ、ガチガチと小刻みに歯を軋ませていた。涙が頬を伝い、地面に落ちる。
ジョロロロロ……。ジョロジョロ……。
あまりの激痛に、歩き出したレオンは失禁しているようだ。湿った匂いが風に混じる。それでも折れ曲がった足を片方ずつ前に出し、一歩、また一歩と主人を落とさないよう細心の注意を払いながら進んで行く。
グリオールは何事もなかったかのように、腕の中で目を閉じた。
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