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厨房へ行くと公爵邸で雇われている料理人の人達が忙しそうにしていた……

うん、常に仕込みやら何やらで忙しいのかも………

という事は?



「なんだ、ココはお嬢様が来るところじゃねぇぞ?」


「ボルグ、ここに居るミーシア様は今はまだ公爵夫人では無く婚約者ですが、それでも伯爵令嬢ですよ。

無礼ではありませんか?」


「無礼はどっちだ!

お嬢様が何の用でここに来た!」


「ミーシア様はお菓子作りをご所望です。」


「はぁ!?菓子を作りたいだぁ!?

“お貴族様のお遊びに”付き合う程!ココは暇じゃねぇんだ!!

暇潰しなら他所でやりな!!」



………うん、そうなるよねぇ……

生憎、わたしは前世でもプロ級のお菓子作りの腕があったりしなかったし、“ミーシア”だって一般人レベルだ。

強行した所で料理人を唸らせるだけのものは作れない。


こうゆう時、よくある展開だとポテトチップスとかポテトフライ、唐揚げとかフライドチキン、なんか作ると料理人から感動されるけど………

この世界ではそれらは既に平民の間で考えられて、かつ安価で美味しく作れる為に普通に普及している。


ぶっちゃけ、米や味噌汁も存在するし現代日本レベルの料理ならほぼ全て既に存在しているし、平民ですら現代日本並みの暮らしをしている“なんちゃって中世ヨーロッパ風”だから料理知識チートは存在しない。


ついでに言えば上下水道…の様なものも完備されてるから料理に使う水も蛇口を捻ればドバドバ出るし排水溝もあるから水捨ても楽。


つまり今ここでわたしが出来る事は何も無い。

そもそも、公爵邸の料理人ともなればきっと、王宮認可の調理師免許を持ってるような人達だし、腕は一流だし知らないレシピなんてほぼ無いかなぁ……。



「………分かりました。

お邪魔してすみません。」


「フン……まぁ御館様の客人だ、お前さんにも美味い飯を出してやるからそっちは期待しな!」


「はい!楽しみにしていますね?ボルグさん。」


「おうよ!物わかりの良い奴は好きだぜ!」


「……ミーシア様。」


「カリン、行きましょう。」




はぁ………傍若無人腹黒ミーシアな漫画ミーシアって、こんな世界でよくあそこまで自由気ままにヒロインムーブを出来たなぁ…………いや、ゲーム世界だと思ってるからこそ周りの目を全く気にしてなかったのかも。

多分今のやり取りも、漫画ミーシアなら『はいはい、モブの御託はいいから厨房借りるね〜☆』とかやってのけていたし。

まぁ、当然だけど漫画ミーシアはそんなんだからボルグさん達料理人達から嫌われていたのはもちろん、公爵家の使用人達や専属侍女のカリンからの評価も低かったんだけどね。



でもわたしはこの世界での常識があるからこそ、傍若無人には振る舞えない。

漫画ミーシアみたいな知略もない。

出来るのは愚直なまでの直球勝負だけ。

それがわたしだもん。


…………けど、お菓子作りはしたかったなぁ………はぁ…………



「…ミーシア様、気晴らしであれば散歩でもしましょうか?

庭園なんてどうでしょう?」


「……そうですね、このまま部屋に戻っても、気分がモヤモヤしそうですし。」


「はい。では日傘をお持ちしますので玄関でお待ち下さい。」


「ええ、分かりました。」



かえって気を使わせてしまったなぁ………

お菓子を作りたいって言った時に考え込んじゃったのはこうゆう事かぁ…………









それから、特出することも無く散歩を終えて幾分かスッキリしてから部屋に戻り、そこからは貴族令嬢らしく刺繍をしたりしながらその日を済ませた…………




それからの日々は特に何も無い平穏そのものだった。

まぁそりゃそうだよね。

だってわたし、大人しく療養してるから読書と散歩と刺繍以外なぁんにもしてないもの。


これでゲームミーシアだったらひたすら悲観して泣いてるだけだったし、漫画ミーシアだったら裏で何かやってたりするんだろうけど。


でも、わたしは限界だよぅ!!

って事で、この日、わたしは朝食の席でアスベル様に直球で『アスベル様のお手伝いをさせて!』と頼み込んでみた!



「……ふむ?ダメだな。」


「ダメですか。」


「ああ。誘拐事件の被害者である君はまだ療養しているべきだ。」


「過保護ですねアスベル様!?」

「過保護ですね御館様。」



思わず2人で同時にツッコミを入れると、アスベル様は怪訝そうな顔をした。



「……カリン、君まで何を言う。」


「…御館様、差し出がましいでしょうがミーシア様は怪我も完治してすっかり健康そのもの。

仕事の補佐がダメであれば、せめて公爵夫人としての教育だけでも始めるべきかと。」


「……体は本当に大丈夫なのか?ミーシア。」


「わたしは元気ですよ?

元気がありあまりすぎてこの一週間で刺繍入りハンカチが沢山出来ちゃいました!」



と言うか無駄にハイスペックなこの身体。

刺繍もサクサクこなせちゃうからめちゃくちゃ早く作成できちゃうんだ………

と言うか、本気でやったらスカーフサイズの布の全面に1日で刺繍完了出来るんじゃないかな?

………なにそれにんげんじゃない。ってレベルの速さだよ、ほんとに。


それを聞いたアスベル様は考えこむように顎に手を添えた。


……うん!悩めるアスベル様もカッコイイ!♡」


「……ミーシア?口に出てるぞ。いや、婚約者から好かれているのは嬉しいが。」


「はっ!ごめんなさいアスベル様!!」


「いや、繰り返すが嬉しいから構わない。」


「ほっほっ。御館様はその鋭い目つきとぶっきらぼうな話し方で昔から婦女子達に遠巻きにされていましたからな。」


「えー…アスベル様の目、カッコイイのに……見る目ないですね他の方は。」


「…シェパード、余計な事を言うな。

ミーシアはミーシアで流れる様に私を称えるな。」


「でもそれならアスベル様が他の人に取られる心配は無いって事ですよね!?」


「ほっほっ。そうですなミーシアお嬢様。」


「ならアスベル様はわたしが独り占めですね♪」


「…………ミーシア、お前なぁ…?」


「へ?」



何故か顔を真っ赤にしていてそれを隠す様に手で顔を覆ったアスベル様。

うーん……別に1ファンとして言っただけで殺し文句のつもりは無かったんだけどなぁ……けどそれなら!



「アスベル様。」


「なんだ…?」


「愛してます♡」


「…………。」



あれ…?なんでシラケた顔??



「はぁ………ミーシアはこうゆう奴だ、と思う他ない。」


「ほっほっほっ。わかり易いお方で良いではありませんか、御館様。」


「ああ。そこは素直に喜べる。

女心なぞ分からない私にはこれくらいわかり易く好意を伝えてくれる女性が婚約者の方がありがたい。」


「なんだか知りませんがもしかして褒められました?ありがとうございます♪」


「わざわざミーシアお嬢様の前で言う事はないでしょうに。

そうゆう所ですぞ、御館様。」


「………今の私の言葉で“褒められた”と判断するのも変人だとは思うがな。」


「……そこがミーシア様の魅力なのでは?」


「…そうかもな。」


「うふふ…♪大好きですアスベル様!!」


「………ああ。」







side:使用人達(第三者視点)



主であるアスベルと今はまだ客人であるミーシアが仲良くする様子を眺めながら、執事長であるシェパードとミーシア付きのメイドであるカリンはにこやかな表情で使用人然として佇みながら小声で会話している。



「ほっほっ。この様子ならフォートラン家の将来も安泰でしょうなぁ。」


「…ですね。

ミーシア様は妖精のように可憐に見えて、その実かなり出来る方の様ですし。」


「ふむ…先日資料を頂きましたが、確かによく出来ておりましたな。」


「ええ。その資料なのですが、ミーシア様は図書室にてフォートラン領について調べていた様ですが、少し調べただけで後は独自に資料を作成しておりました。」


「…独自にあの完璧な資料を?

御館様も改めて分かり易く纏めた資料を作り直してくれたお陰で、昨年までの出来高と傾向を再確認しやすくなって助かったと仰っていましたが。」


「はい。それをミーシア様がお作りに。」


「…………そんなミーシアお嬢様を奴隷として売り飛ばそうとしたブロッサム家の方々は…頭がアレなのですかな?」


「はい、アレですね。

だからこそ御館様に粛清されましたし。」


「はぁ………この国にフォートラン在り、と言うのになんとまぁ………


「ミーシア様があのブロッサム家の血を引いているのが信じられない程にアレですね。

とは言え、最期の当主は入婿だったのですが。」


「ではミーシアお嬢様は母方の血が濃く出たのでしょうな。」


「私もそう思います。」





ーではアスベル様、お仕事、頑張って下さいね!

わたしも公爵夫人教育を頑張りますので!」


「ああ。……身体には気を付けるんだぞ?」


「もぅ…過保護ですね!」


「はは…すまない。」


「み゛っ!?」



むくれるミーシアの頭をぽんぽんとあやすように撫でるアスベル。

そんな彼に微笑みをも向けられたミーシアは変な声を上げて固まった様だ。

そして、名残惜しそうにミーシアの髪を一房掬い、軽く指で弄んでからアスベルは仕事へ向かった。

そんな2人を見たシェパードは微笑ましそうに笑う。



「ふふ…自身を慕ってくれる初めての女性だからか、かなり過保護ですな、御館様。」


「……初めてにしてはミーシア様を受け入れるのが早すぎません?

いささかチョロいのでは御館様?

なんと言うか…詐欺師に騙されそうですね?」


「いえ、御館様は女性に避けられてきたからこそ、悪意を持って近付く女性には敏感に反応なさるのですよ。」


「…………………。」



「はわぁ……♡

あたま…ぽんって……あしゅべる様カッコよかったなぁ…………♡」



「……まぁ、あのミーシア様が悪巧みしそうにはありませんね。」


「でしょうなぁ…………



その見た目で悪巧みをしていたのが漫画のミーシアであり、勿論それはシェパード達に看破されていたので、漫画ミーシアはシェパード達公爵家使用人達からは蛇蝎のごとく嫌われていたのは言うまでもない。


さてさて、無自覚にもそんな使用人達から既に好意的に見られているこの世界でのミーシアは、一体どんな話を紡いでいくのだろうね?


ミーシアに対する信頼度が謎にMAXスタートなのはヒロインチートなのだろうか??


※言動からして人畜無害(てんねん)だから

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