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午後の授業を終えて、帰宅時間。

そう言えば午後一の授業、エリカさんがレーネ王女殿下に呼ばれたとかで欠席してたけど、授業初日の今日に呼び出してそれが通る辺りは流石、王族特権だねぇ〜。

まぁ、レーネ王女殿下の場合、きっと真面目な用事とか本当に緊急の用事だったのかなぁ〜とは思ったのだけど……

そのエリカさんは次の授業の時には戻ってきていた。

早いね。

大した用事じゃなかったのかなぁ……?



ただ、それより衝撃的だったのはその後だよ。



「お疲れさまでした、ミーシア様。」


「ええ、ベルさんはまだお仕事ですよね?」


「はい、王城へ向かいますか?」


「そうします、ベルさんからも許可はもらっていますし。」

(…あ、エリカさんだ。)



そのまま帰るより少しでもベルさんに会いたいと思っていたら、エリカさんが近くに居た…けど、現状では知り合いではないし、実際の爵位が公爵夫人であるわたしの方が位が高いとは言え、表向き伯爵令嬢であるのでわたしからは声はかけられない。


だから馬車を待つ間、なんとなしにエリカさんの方に意識だけを向けていると、先にバルディア公爵家の馬車がやってきた。


そして、その馬車から降りてきたのは………



「エリィ、大丈夫だったかい?」


「ロー兄様…!」



攻略対象の一人、バルディア公爵家に養子として引き取られたエリカさんの義兄、ローウェン・バルディアだった。


確か、原作では義妹のエリカさんが優秀すぎるのがコンプレックスになっててエリカさんとは仲が悪く、

そこを原作ミーシアの純粋さ(ただのお花畑)や漫画ミーシアの計略で籠絡され、原作ではエリカさんを排除してしまい、漫画では排除しようとして返り討ちにあってた男だ。

要は似非インテリ枠だね。だって国益的には普通に考えたらエリカさんを大事にするべきだし。


と言うかさ。

『女が賢しらに知識を振りかざすな、可愛げがないぞ。』とか小さい男だよね。

ベルさんはむしろ『なら私と一緒に仕事が出来るな。』って歓迎してたのにさ。


と、思いながら見ていたら、何故かそのローウェン、エリカさんを抱きしめてるんだけど???

エリカさんの方も嬉しそうなんだけど!?



「城で父の手伝いをしていた時にライトリーク殿下が人妻に手を出した姦淫の罪で処刑が決まったと聞いてエリィが巻き込まれていないかと心配していたんだ。」


「まぁ…!ロー兄様ったら、私はただ義務で殿下と共にいただけだとご存知でしょう?」


「エリィ…それでも僕は君が心配なんだよ。分かってくれ。」


「うふふ…♪ロー兄様は相変わらずですわね?

さぁ、ロー兄様、続きは馬車の中で話しましょう?」


「…そうだね。」



そう言って、エリカさんに優しい笑顔をむけるローウェン…さん?

嬉しそうな顔…と言うか乙女の顔をしてるエリカさん。

あれぇ…?

もしやこの世界線のローウェンさんってマトモ…と言うよりシスコン…?

エリカさんの方も満更でもなさそう…?


そんな2人を乗せたバルディア公爵家の馬車が去っていくのをわたしは困惑しながら見ていたのだった。




















Side:ローウェン

僕には天使な義妹が居る。

大切な、大切な、僕の命と同じ…いや、それ以上に大切な義妹だ。

僕の本当の父は、ハッキリ言ってクズだった。

公爵家の血筋だかなんだか知らないけど、分家である事のプライドばかり高くて、金もないくせに散財して、だから貧乏人なのに何故か高圧的で。


そんな時に、本家には女子しか居ないので次期当主として男子が欲しい、という名目で僕はバルディア公爵家に引き取られる事になった。

その時、大金を手に入れたらしく、父はホクホク顔だったが、子供ながらに理解した。

僕は、売られたんだと。


まぁ、元いた家は父には暴力を振るわれ、優しかった母はもっと幼い時に亡くなっていたから、そこまで悲壮感は無かった。

それでも僕は、実の親に売られた事にせいせいしつつも少なからず堪えていたらしい。


そんな僕の前に現れたのが、僕の義妹になったエリカだった。




「エリカ、今日からお前の兄になるローウェンだ。ローウェン、この子が私の娘のエリカだ。仲良くしなさい。」


「…はじめまして、ローウェン…です。よろしくお願いします…。」


「ろぉえん…おにいちゃん…?

エリィに、お兄ちゃんができるの??」


「そうだ。彼がこの家の跡取りとなる。

よく支えてやるのだぞ。」


「お兄ちゃん…!!エリィのお兄ちゃん!!やったぁ〜♪ろぉえんお兄ちゃんっ!」



そう言って、翡翠色の瞳を輝かせ、小麦色の髪をなびかせながら駆け寄ってきたエリカは、無邪気に僕に抱きついてきたんだ。



「お兄ちゃんは髪もおめめもきれぃな黒だねぇ〜♪エリィ、お兄ちゃんのおめめしゅきぃ〜♪」



その温かい身体に、柔らかい頬に、甘い声に。

僕は心を撃ち抜かれた。

あの父親だったモノから不吉だ、とか言われたこの黒髪黒目を、笑顔で、嬉しそうに、綺麗だと言ってくれたんだ。



それから、エリカはよく僕の部屋に遊びに来るようになった。

無邪気になついて、僕に笑いかけてくれるエリカ。

そんな彼女と触れ合う度に、僕の心は温かいもので満たされていく。



「ローぇんお兄ちゃん!」


「…言いにくかったら、【ローお兄ちゃん】でも良いんだよ?エリカ。」


「んぅ…?ローお兄ちゃん?うんっ!ローお兄ちゃん♪」


「かわいい…


「…?」



そんなエリカは、幼少期はよく僕のベッドに潜り込んできた。

義父は僕達の私生活には無関心なのか、何も言ってこなかったのもあって、何より僕自身も嬉しかったから拒絶はしなかった。


いきなり、豪華な広いベッドで独りで眠る様になった事が落ち着かなかった僕には、ありがたかったからね。


僕が完全にエリカに惚れたのは、エリカを妻にしようと決めたのは、バルディア公爵家の長男となってから割とすぐだった。



その日、僕は父親だったものに暴力を振るわれていた時の事を夢に見た。

悪夢から飛び起きて荒い息をしていた僕に、僕がいきなり起き上がったせいでつられて目を覚ましたエリカが寝ぼけたままで抱きついてきたんだ。



「ぉにぃちゃ…だぃじょ…ぶぅ…?えりぃが、いるよぉ……ちゅーしょぅねぇ………



そして、寝る前に義母がエリカにそうしていたように、エリカは僕の頬へキスをしてくれた。

それは、とても柔らかくて温かくて、悪夢による恐怖心は一瞬にして溶かされた。



「エリカ…


「ぇりぃ…が…ぃるにょぉ…ぉにぃちゃん…むにゃ……

 

「エリカ…エリカ………



そんなエリカを抱きしめると、エリカも抱きしめ返して、更に頬を擦り寄せてくれる。



「ぉにぃちゃぁん…しゅきぃ…♪」


「僕も、好きだよ、エリカ。」


「わぁぃ……すぅ……すぅ……


「…………。」



その日から、悪夢を見た時には夢の中にもエリカが出て来て僕を連れ出してくれた。

僕が思春期に入り、義母がエリカを寝室から遠ざける様になるまでずっと、僕はエリカと寝食を共にしてきた。

血の繋がらない義妹だ。

結婚だって出来る。

だからこそ、僕がエリカを異性として認識していると察した義母は僕からエリカを遠ざけたのだろう。


義母は優しい人だ。

決して意地悪でしたコトじゃないのは分かってる。

世間体だって大切だって分かってる。


何より、エリカは王家からの希望により、王太子の婚約者となる事が決まっていたし、エリカがベッドに潜り込めなくなったタイミングで、エリカと王太子の婚約が発表された。


そうさ、僕の初恋は。想いを自覚した瞬間には終わっていたんだ。

ただ、同じベッドで寝れていた頃はまだ王太子の婚約者じゃない、というだけだった。


だけどそれからすぐだった。

エリカから笑顔が失われていったのは。


僕自身、次期公爵として、次期宰相としての勉強が忙しくなってエリカにあまり構ってやれなかったのも多大にあるとは思う。

多分義父が僕とエリカが接触する時間を減らす為にそうしたのだろうけど。


それでも、昼間は少しでも時間が空いたら僕の部屋に来るエリカになるべく構うようにしていたけどね。

正直、かなり優秀だと聞くエリカに少しだけ、ほんの少しだけ、嫉妬したこともある。

だってそれより“エリカ可愛い、愛してる。”が勝っていたからね。


そんなある日、そんな、元々小さかった嫉妬心なんかすぐに消し飛ぶ出来事が起こった。



(はぁ…今日も大変だったし、なんなら教師からは『エリカ様はもっと早く解けるし既にローウェン様と同等の教育段階に達しました』とか言われちゃったなぁ…エリカって…僕より次期公爵や宰相に向いてるんじゃないのかな…女性だし未来の王太子妃だから宰相にはなれないってだけで…)


「―――。―――。」


(ん…?誰かの声…?)



その日、勉強に疲れた僕は気晴らしに庭を散策していたら、何者かの声が聞こえ、その声がする方に向かうと……



「ぐすっ…ひっく……うぇぇ………だめ…だめなのぉ…淑女は、泣かないんですのぉ…ないちゃ、ダメなんですのぉ…でもぉ……ぅぅ…ぐすっ……



そこには、最近は段々と貴族令嬢らしくお高くとまった様な態度をとりつつあったエリカが、その実、昔と全く変わらないままで泣いていた。

それを見た僕はすぐさまエリカに駆け寄って抱きしめた!



「エリカッ!」


「えっ…?ろ、ロー兄様…?何故、ここに居ますの??」


「僕の事は良いんだ、それより!

僕の前では取り繕わなくて良い、頑張らなくて良いんだよ、エリカ…!」


「いっ、いきなり何をおっしゃいますの?お兄様。わ、(わたくし)は、王太子妃になるのですわ…!

が、頑張らないと、いけないんですの…!!」


「いや、頑張らなくても良いんだよ、エリカ。

僕の前では、今まで通りのエリカで良いんだよ?

君はそのままが、一番素敵な女の子なんだから。

それに、もし王太子妃になれなくても、僕と結婚して公爵夫人になれば良いんだ。」


「…!いい、の…?

お兄様に……お兄ちゃんに、甘えてもいいの…?

エリィ、王太子妃にならなくても、良いの…?」


「ああ、勿論だよ!

僕はエリカの兄なのだから、妹は兄に甘えても良い、やりたくないなら王太子妃になんてならなくて良いんだ!

思い切り頼りなよ、エリカ!

僕は君のお兄ちゃん…なんだから…!」



言って、心はズキリと痛んだけど、これは、仕方がないんだ。

だってエリカは未来の王太子妃、ひいては次期王妃。

このまま、僕の手からは遠く離れてしまうんだって、分かっているから。


あぁ…嫌だなぁ…エリカを何処かに閉じ込めてしまおうか?

そこでエリカを………

と、自分自身でもそれは王族に対する不敬だし危険な考えだと分かった上でそう思ってしまった。


だけど、エリカは、そんな僕に



「ありがと…お兄ちゃん…!

うぅ…ぐしゅっ…うわぁぁぁん…!

辛いよぉ…!痛いよぉ…!お兄ちゃん…!助けてよぅ…!エリィ、ホントは嫌なの…!」



そう言って、抱きしめ返しながら僕の胸に顔を押し付けて泣き始めた…

そうだよ、どれだけ優秀だろうと、未来の王妃であろうと、今のエリカは小さな女の子で、僕の妹には変わりないんだ。



「…うん。辛いよね、嫌だよね。」



だから、僕はエリカを強く、強く抱きしめる。

安心出来るように、僕が逃げ場所でエリカの理解者なのだと教え込む様に。



「王太子妃になんてなりたくない…!」


「うん…ならさ、逃げても良いんだよ?エリカ。

僕が逃げ場所になろう。

王太子妃になれなくても、公爵夫人になる道はあるよ?」


「…!お兄ちゃん…♪

エリィ、ずっとお兄ちゃんと一緒がいい…!

お兄ちゃん…ローお兄ちゃん…!

私を…エリィを公爵夫人にして?

それがダメでも、お兄ちゃんの隣に連れてって…!」 


「ははは…!

じゃあ、もし国を追われたら将来的には2人で何処か遠い所で暮らそうか?」


「…っ!

うん、その時はエリィを連れ出してね…?お兄ちゃん…♡」



端から見たら狂った兄妹なのだろう。

でも、仕方ないじゃないか。

僕とエリカ…エリィとは血は繋がっちゃいない。

それに、僕はエリィを好きだし、多分、エリィも僕の事が好きなのだろう。


だから、僕は王太子からエリカを奪い取る覚悟を決め、一計を講じる事にしたんだ。

……………あの馬鹿な王太子が、何らかの罪で処刑されれば、解決するってね。


僕はね、あんなバカにエリィを盗られるのが我慢ならなかったんだ。

でも、正統な理由もなく王太子を殺せば反逆罪だ。

そうでなくとも、血塗られた手でエリィを抱きしめられない。


だから、次期宰相として奴の近くに居る立場を利用して、奴が女にだらしない奴になる様に、あえて歴代の王の中でも姦淫に耽ったダメな王族の例を、『王族は気に入った女でハーレムを作るものだ』と言う世迷言を奴に吹き込んだのさ。


結果的に大成功。

しかも、最高な事に奴は最凶の軍務卿が溺愛する【ミーシア・ブロッサム・フォートラン公爵夫人】に手を出して軍務卿の怒りに触れ、アッサリと処刑が決まった。

これで、次期国王は王弟の息子でもあるフォートラン公爵だろうね。


息子のやらかしで無能な現国王も退位を迫られるだろうけど、その方が良い。

なにせあの無能達のせいで僕や父は仕事に追われ、それぞれが愛する義妹や妻を溺愛する時間がとれなくて辛い思いをしてるのだから。


ははは、義父様、貴方が今でも義母様を溺愛してることを僕が知らないとでも?

義母様が子供の出来にくい体質なのを良い事に(?)毎晩求めてるのを僕は知ってるぞ?

ってのを提示した上で『義父様にとっての義母様が僕にとってのエリィだよ』と伝えたら呆れたように、だけど、嬉しそうに

『エリカが昔からローウェンの事を慕っていたのは私もエルミナ(母様の名前)も知っているよ、それに君は次期公爵としても宰相としても申し分ない実力だ。だから結婚を許可しよう。』

と言ってくれた。

話がわかる義父様で良かった。


それにしても、フォートラン公爵はズルいぞ!

いつもすぐに仕事を終わらせて帰宅してからは妻を愛でてると聞いて羨ましかったんだからね!!

僕や義父様は忙し過ぎて時間が限られていたと言うのに…!!


まぁ、実際の所、ここまで上手く行った、と言うことは義父も一枚噛んでいるのだろうなぁ、とは思うけど。

それを言ってしまうと僕も義父も王族を謀殺した事になってしまうから、お互いに何も言わない事にした、といったところだね。


さぁ、ともかくこれで、障害は何もなくなった!

後はエリィを妻に迎えるだけだね!

…どうやって囲い込んでやろうか?

いや、既にエリィは僕に惚れてくれてるのは分かってるから後はプロポーズをどうするか、だね…!









Side:エリカ

私には、前世の記憶がある。

なぁんて言ったら周りの人は驚くだろうし、正気を疑われちゃうよねぇ……

私は、気付いたら前世で遊んでいた乙女ゲーム、【紅の氷華】の世界に転生してしまっていた…!

って、これは最近ラノベでよくある設定じゃないのよ…しかも、ベターに悪役令嬢って……だけど、このゲームの場合、攻略対象達がヤンデレだったり悪逆非道だったり執着心が強かったり、なんてトンデモ付加価値は無くて順当に王道乙女ゲーム、だった、はず…………なんだけどねぇ……なぁんか、ローお兄ちゃんってば執着心が見え隠れしてる気がするんだよねぇ……


それに“(エリィ)”は、どうやら前世の記憶を思い出す前から“私”の影響を受けていたらしくて………



「エリィ、今日はお兄ちゃんに甘えてくれないのかい?」


「えっ…あの…恥ずかしいですわ…なんて…?」


「恥ずかしい…?どうしたんだいエリィ?

何時もは君の方から抱きついて来るのに…

なら今日は僕の方から抱きしめようか。」


「えっ…!?あっ…お兄…ちゃん…すぅぅ…はぁぁ〜…しゅきぃ……♡」

ぎゅぅぅ〜っ!


「うん、安心したよ。何時ものエリィだね。」



ご覧の通り見事にブラコン義妹になっていた訳で。

だからこそ、お兄ちゃんはそんな“エリィ”に既に救われていた訳で……


ゲームだと、エリカ・バルディアというキャラクターは、自分にも他人にも厳しいし曲がった事が大嫌いな、所謂【正論パンチキャラ】だったはずだから、何をするにしても相手の感情や事情を考慮しない【世間から見た正しさだけの冷徹なエリカ】と、【物事は柔軟に捉えるべきなお兄ちゃん】とは仲が悪かったんだよね……

まぁ、ゲームでのお兄ちゃんは、浮気を許容する法律に変えようとかしていた面もあるから完全に白とは言えないけど…でも、処刑はやりすぎな気もするから私は多少緩和するくらいならいいと思う。


そんな私には今までの“エリカ”としての記憶もある。

けど、“エリィ”が“私”になる前に、多大に“私”に影響されていた結果、ローお兄ちゃんと暮らし始めたその日からベッドに潜り込むような、自身の感情に素直でお兄ちゃんの事が大好きなインモラルなブラコン義妹となっていたのよ…!!

この世界の【エリカ・バルディア公爵令嬢】様は…!


しかも、【ローウェン・バルディア公爵令息】がこんな、エリカの事を女性として好きなインモラルシスコン(執着心あり)になってるなんて解釈違いなんですけどっ!?

だけど、幼少期から悪夢にうなされてあまり眠れないって状態をヒロインの柔らかさや温かさに救われて惚れていくってキャラクターだったから…その役目をお兄ちゃんの事が大好きな私が奪っちゃった、って事なんだよね………


でも、私も大概だった。

だって、今だって、シュンとしたお兄ちゃんの顔にキュンとしちゃうし、大好きなお兄ちゃんの香りに引き寄せられる様に抱きついちゃうし、その胸板に頬を擦り寄せちゃうし、顔も勝手にふにゃりとしちゃうし…!


あぁ、もう、私、とっくにお兄ちゃんに堕ちてたし、令嬢としても人としても終わってたんだなぁ…♡

って、思ったの。

それが、学園に入学する三ヶ月前のこと。


けど義理の兄妹だったら普通に結婚も出来るし付き合ってても問題ないらしい、

だから私が血の繋がらないお兄ちゃんの事を男性として好きになるってのは普通の事なんだって、後でお兄ちゃんから聞いて知ったんだけどね。

良かった、普通だった……


それはそれとしても、正直、原作ゲームでも今世でも王太子のライトリーク殿下の事はあまり好みじゃなかった。

あれは、イケメンだし王太子、の設定があるだけのただの甘えたな子供なんだもん。

更に言えば王太子には特に可哀想な要素がないのがねぇ…甘やかされて育った結果、優秀すぎる妹を理由に何に対してもやる気が無くて、テキトーで、投げやりで、責任感が無くて、嫌な事からはすぐ逃げ出すくせに女好きで王族の特権だけは享受する様な身勝手ナヨナヨ男子だった、って奴?

確かゲームではヒロインが支えていく内にマトモな王太子になっていく、ってストーリーだったはず。

いや、まぁ、親の教育が所謂『優しい虐待だった』というのはあるけどね。


でも同情はしないよ。同じ…どころかそれより更に劣悪な環境で立派に育ってるはずのレーネちゃんはあんなに優秀なんだから。


そんな私が好きなのはクールなインテリ系男子。

つまりローお兄ちゃんの事だ。

あんなカッコいいお兄ちゃんが居るのになんでエリカは甘えないのか、って思ってたし、ローお兄ちゃんのルートに行った時にお兄ちゃんに甘やかされて、お兄ちゃんを甘やかして、なんてイチャイチャしてるヒロインに自分を重ねたりした。


だから念願叶ってローお兄ちゃんの義妹になれて、なんか既にお兄ちゃんに甘やかされてるこの状況は夢なんじゃないかな、なんて思ったりもした。


だけど、夢じゃない、コレは転生先の現実の世界だ。

だって、痛みがある、疲れるし、寝て目が覚めてもお兄ちゃんが隣にいた。


うん、お兄ちゃんと一緒に同じベッドで寝るなんて、淑女としては完全にアウトだからね、お母様にド叱られて淑女教育を厳しくされたからの痛みや疲れなんだけどね。

ちなみにお兄ちゃんも同じくお父様に叱られて疲れ切ってたから、それを2人でこっそり笑い合ったりもしたよ?


そんなお兄ちゃんの事が私は大好き。

だから、それで良いの。

お兄ちゃんが同じ世界に居る。

それだけでも幸福なんだから……

王太子の事が嫌いでも、宰相になったお兄ちゃんがきっと側にいてくれる。


未来の王太子妃である以上、お兄ちゃんと恋人同士の関係になってしまうと姦淫の罪になるから、お兄ちゃんと結ばれる事は…王太子から婚約解消か婚約破棄をされるか、王太子がなんらかの罪で処刑される…なんて奇跡でも起きない限りありえない……


そう思っていたのに、何故か、あの王太子はゲームの通りにミーシアに惚れて、ゲームとは違い速攻で手を出して処刑が決まった………


一体、あの王太子は何だったのだろうね…?

いくらゲームでも無能な設定だったとはいえ、現実となった今の方が尚更無能なのはどうなの…?

次期国王様はフォートラン公爵様に決まりだろうし、そうなると何故か既に公爵夫人になってるミーシアが次期王妃。

つまり私の王太子妃教育は無駄になっちゃった。

お兄ちゃんと過ごせなかった時間を返してほしいよ………


けど、なんとなく思うんだ。


もしかして。お兄ちゃんが王太子を謀殺したんじゃないかなって。

だって、お兄ちゃんは私に執着してるって思うから。


だけど、そうだとしても良いの。

私は、大好きなローお兄ちゃんと結婚したかったんだから。

既に、主人公のミーシアはフォートラン公爵夫人になってて、しかも本来なら悪役公爵だったはずのフォートラン公爵の事が大好きみたいだし、攻略対象の1人、子犬系騎士枠のビビアンは女の子になってる上に婚約者にデレデレだし、お兄ちゃんは私の事が大好きなシスコンになっていて…私も正論パンチなんてしないしお兄ちゃんの事が大好きなんだからゲームは既に狂いに狂ってる。

後は魔術師枠や教師枠の人も居た気がするけど、多分この流れだと2人もなにかしらおかしくなってるはず。


まるでバグたらけの様なこの世界だけど、現実なんだって思えばゲームの通りになんか行くわけないじゃん、って思えるから。


だから良いの。

私は、お兄ちゃんと結婚してバルディア公爵夫人になる。

“私”の物語はそれで良いの。



「…2人で幸せになろうね?ローお兄ちゃん♡」


「そうだね、エリィ。」


「うふふ…おにちゃぁん…♡」


(今日もエリィが最高に可愛すぎるっ…!)



私は、ゲームでは悪役令嬢だった。

けど、現実では悪役にすらならないただの女の子だった。

コレが私の物語っ♪

主人公ちゃんはそっちも勝手に幸せになってね?








ちなみに、ローウェンの髪色は正確にはカラスの濡羽色、目は緑がかった黒色、だったりしますが蛇足ですね。

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