エピローグ
エピローグ
数年後の、とある休日。
俺たちの部屋に、愛おしい泣き声が響いていた。
「よしよし、綾ちゃん。ママでちゅよー。おっぱいの時間でちゅねー?」
リビングのソファで、生まれたばかりの赤ちゃんを愛おしそうに抱き抱え、デレデレの赤ちゃん言葉を使っているのは、あのオトだ。
「……ちょっと、オトちゃん! ママはわたしだからっ!」
台所からおたまを片手に猛ダッシュで走ってきたのは、茅春だった。
俺は扇風機に当たりながら苦笑いする。
「ふふっ……でも、綾ちゃんはわたしのおっぱいの方がいいらしいですわよ? ……ねえ、紡と同じで」
「ぶっほっ!!」
オトの唐突な爆弾発言に、飲んでいた麦茶を吹き出しそうになる。
「……ん? なんや、ウチも昔、紡くんに触られたことあるで?」
畳の上でゴロゴロしていたクレハが、何気ない調子でとんでもないことを言い出す。
「あら、それならわたしなど、主様の(腕)をここにギュッと挟んだこともありますわ」
アナハがいつもの満面の笑みで、豊満な胸を強調しながら追い打ちをかけてきた。
「ちょっと、紡――っ!! あんたって人は……っ!!」
茅春の般若のような視線が俺を射抜く。
「ご、誤解だよ……!」
クレハとアナハがくすくす笑っている。
「アナハ、クレハ、そろそろ戻らんと秋季例大祭じゃろ?」
部屋の隅で静観していたエヒメが、ポンと手を叩いて妹たちを促す。
「あ、そうやったわ! 準備遅れたら神主に怒られてまう!」
「では、主様。またすぐに遊びに来ますわね」
「オト、我らも祭事じゃ。またな、紡」
そう言うと、エヒメ、クレハ、アナハの三人は、賑やかな風を残してそれぞれの神社へと戻っていった。
「ふう……。みんな、相変わらず嵐みたいだな」
少し静かになった部屋で俺が息を吐く。
出て行ったはずのオトが、俺の背後からすうっと近づいてきて、その白い腕を俺の首に絡めて妖艶に微笑んだ。
「……ふふ、紡。今度はわたしと『子作り』しましょうね?」
「ちょ、ちょっと、オトちゃん!!」
茅春の叫び声が再び部屋にこだまする。
神様たちと出会い、数々の困難を乗り越え、彼女たちと紡ぐ、騒がしい日々。
俺は、こんな生活を……『後悔』はしていない。……たぶん、おそらく、絶対に。
(完)




