プロローグ
お読みいただきありがとうございます
冬。
マロウは栗色の髪を風に流しながら魔法陣を描く。
それを、彼女を知らない人がじっと見ている。
「そこに模様が一つ足りない」
◇◇◇
春。
ハレッド学園の廊下。人の往来もある中で、一人の少女が身を寄せ合った男女一組と対峙していた。
「マロウ・フェリシー! 君は妹であるメアリージュンを虐めていたようだね!? そんな人と結婚する訳にはいかない、婚約破棄させてもらうよ――!」
「怖かったですスチュアート様ぁ」
男女の片割れである銀髪の男、スチュアートが満足気に鼻を鳴らせば、もう一方である桃色の愛らしい顔のメアリージュンが目に涙を溜めた。
濡れ衣を着せられたマロウ・フェリシーはその様子を体を震わせながら見つめる。
この妹は、マロウの物を盗ることに精を出しているとフェリシー子爵家の使用人たちの間でよく囁かれていた。
愛人の子としてフェリシー子爵家に加わったから負い目でもあるのかと。
本人に尋ねてみれば、
「お姉様の物は全部私の物ですのよ。負い目? 笑わせないで欲しいですわねぇ」
髪を靡かせ使用人たちの親心を一蹴した。
そんな彼女が遂に姉の婚約者を奪ったのだ。
きゅ、とマロウは唇を噛んだ。
――だって、以前マロウはメアリージュンが好きな人がいると打ち明けてくれたのを知っているから。
その条件にスチュアートは申し訳ないがピタリとも合わなかった。
そんな彼女を前にしてマロウが考えることは一つ。
なにか嫌なことでもあって投げやりになってしまっているのでしょうか? だった。
お姉ちゃんは心配です! ひんっ、と目に涙を溜めながらどうしてこうなったのかを考える。
マロウは頭の回転が非常にゆっくりだった。二人にタンマをかけ、必死に頭を捻る。
頭を押さえ苦悶する人のポーズをするマロウは、全く思い出せないので取り敢えず順を追うことにした。
物語は、メアリージュンが学園に入学する前から始まる。




