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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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57.クリスティーナの推測

「わたくしのためにレイナ様を攫おうとしたと聞いたのですが……」

 

「そうらしいですね」


 フレイムジールの恥になるからクリスティーナに詳しい話はできないけど、確かにジャスミンがエリザベスと手を組んで私を消そうとしたわね。それに巻き込まれたエイデンはエリザベスに刺され、記憶をなくしちゃったのよ。


「それは……少しおかしいです」

 クリスティーナが真面目な目で私を見た。


「先程申し上げた通り、わたくしは昨年の大国会議の時点でエイデン様に対する感情が少々変わっております。そのことはジャスミン様にも伝えていますから……」


 クリスティーナの言う通りだとしたら、ジャスミンが私を消したい理由がなくなってしまう。でもエイデンやカイル達が調べ上げたことに間違いがあるとも思えないし……


「本当はジャスミン様に疑いがかかった時にお話できればよかったんですけど……エイデン様にお聞かせするのは恥ずかしくって」

 

 蔑んだ目で見られたいってエイデンに言ったら、それこそ冷たい目で見られて良さそうなのに……もったいない。


「噂を聞いてジャスミン様に連絡をとろうとしたのですが音信不通で……今回の大国会議に参加しているレイクスター国王夫妻にお聞きしても全くとりあっていただけないんです」


「それは心配ですね」


「わたくしずっと考えていたんです。誰が何のためにレイナ様を攫おうとしたのか……」


「何か心当たりがあるんですか?」

 クリスティーナは静かに首をふった。


「レイナ様がいなくなればいいと思ってるのは、エイデン様に思いを寄せる者かなと思っていたんですけど……でも昨夜の話を聞いて、もしかしたらこの考えは間違っていたのではないかと思ったんです」 


「昨夜の話ですか?」


「ええ。シャーナ様がレイナ様を侮辱した件です」


 あぁ、あの冴えない子だとか言われた時の話ね。


「あの話が私を消す話と、どんな関係があるんですか?」


「レイナ様を消したいと思ったのは、もしかしたらエイデン様を好きな方ではなくお嫌いな方なのではないかと……」


 クリスティーナの言葉に胸がドキンとする。

 エイデンを嫌いな人……たしかにエイデンとは不仲だと言われているけど……


「そんなまさか……」


「ええ。わたくしも信じたくありませんが、シャーナ様が計画したのではないでしょうか?」


「もし本当にシャーナ様が私のことを消したいと思ったのなら、わざわざジャスミン様を利用しなくても消せるんじゃありません?」


 それこそシャーナが誰かに命じて直接私に接触した方が簡単だし成功率もあがるはずだ。


「それはですね……」


 クリスティーナは少し前かがみになり身を乗り出した。その小さな声を聞き取るために、私も同じように身を乗り出す。


「ジャスミン様を使うことによって、レイクスターとフレイムジールを仲違いさせたかったんだと思います」


 ジャスミンのしたことでエイデンはレイクスターに不信感をもつ。同様に少ない証拠だけで抗議されたレイクスター側もフレイムジールに不満をもったはずだとクリスティーナは言う。


「昨日のことだって……シャーナ様の発言を咎められた父は、エイデン様に良い感情はもてないと思います」


 困ったものですと呟きながら、クリスティーナは小さく一つため息をついた。


「ただでさえエイデン様は父達よりもだいぶ若いですからね。生意気に見られても仕方ありませんわ」


「それはそうですが、国同士を仲違いさせてシャーナ様に何かメリットがあるんでしょうか?」


 エイデンは確かに若いし生意気に見られているに違いない。でもエイデンが他の国の王に嫌われるだけのために、シャーナ様がわざわざこんなことをするとは信じられない。


「計画はまだ途中だと思うんです」 


「途中ですか?」


 クリスティーナは大きく頷いた。


「ええ。最終的にはサンドピークとフレイムジールを争わせたいんだと思います」


 クリスティーナの真剣な瞳に思わず息を飲む。

 争わせたいって……戦ってこと?

 話がなにやら穏やかではない方向に進んでいくことに不安を覚える。


「いやになっちゃう」


 突然割り込んできた声にクリスティーナと同時に顔をあげた。


 えっ? ビビアン!!


 目の前に現れた人物を見ながらクリスティーナと私は言葉もなく固まってしまった。


「ねぇ、知ってる? 女の子はね、少しお馬鹿なくらいが一番可愛いいのよ」


 いつの間に部屋に入って来たのか。バルコニーと部屋の境目には、にっこりと笑うシャーナの姿があった。私達に向けられる笑顔は不適で恐ろしい。


 それよりも私の目をひいたのは、シャーナの後ろにいるイケメンだ。メガネをかけたスラリと背の高いその男は、ビビアンの腕を掴み首元にナイフを当てている。


「何をコソコソしてるのかと思ったら……あれだけ城下町見学ツアーに参加するよう言ったのに……」


「わたくしが何をしようと、シャーナ様には関係ないじゃありませんか」


 シャーナの咎めるような眼力に、クリスティーナも負けてはいない。


「本当に仕方のない子……」


 シャーナの憐れむようなため息と共に、男がビビアンの鼻と口を布で押さえた。意識を失ったビビアンが床に崩れ落ちる。


「ビビアン!!」


 駆け寄ろうとする私の目に男がナイフを構えたのが見えた。声をあげる間もなく、男の手から小さなナイフが放たれる。


「クリスティーナさまぁぁぁ」


 一瞬の出来事だった。あまりの速さで飛んで来たナイフを避けれるわけもない。男の投げたナイフはクリスティーナの腹部に命中した。クリスティーナ本人も驚いたように突き刺さったナイフに目を見張っている。


「そんな……」


 慌ててて駆け寄り、床に膝をつくクリスティーナの体を支えた。


「クリスティーナ様、大丈夫ですか?」


 お腹に付き刺さったナイフが痛々しい。ドレスには血が染み出してくる。


「しっかりしてください。すぐにお医者様を呼んできますから」


 とは言っても、医者をどうやって呼べばいいの?


 私がクリスティーナを抱えたままシャーナ達二人から逃げることは到底無理だし、床に倒れたままのビビアンもほってはいけないし……


 染み出したクリスティーナの血を見ていると、焦るばかりで全くいい考えが浮かばない。


「下手くそ。なんで一発でしとめられないのよ」


 シャーナが男に悪態をついた。


「うっ……」


 ナイフの刺さった部分が痛むのか、クリスティーナの美しい顔が歪んだ。


「もう!! クリスティーナの方はさっさと片付けてちょうだいね。レイナにはまだやってもらわないといけないことがあるから、殺しちゃだめよん」


 男に命令するシャーナの声が、あまりにも楽しげでゾッとする。


「なんで? なんでクリスティーナ様を殺すのよ?」


 自分と不仲なエイデンへの嫌がらせに私を消すならまだ分からなくもない。でもクリスティーナを殺す理由って何?


「うふふ。ヒミツよ」


 満足そうに笑うシャーナの顔は、この恐ろしい場に相応しくないくらいに明るく綺麗だった。ひらひらと手を振りながら去っていくシャーナを見送って、男が私達に近寄ってくる。


 どうすることもできず、クリスティーナを抱えるようにして男を睨みつける。男が無表情のままなのがひどく不気味だ。


 抵抗もむなしく、男が私からクリスティーナを奪いとった。男がクリスティーナに刺さったナイフを抜こうと手をかける。


 だめだめ……クリスティーナ様が死んじゃう。助けて、エイデン!!


 ヒュッ


 もうダメかと思った瞬間、小さな風が起きた。小さな風はクリスティーナを守るかのように男の周りで吹き始める。


 今だ!!


 不思議な現象に男が怯んだのを見てドアに走る。どう考えても私の力じゃ男には敵わない。私にできるのは、大声で人を呼ぶ事だけだ。


「誰かー!! 誰か助け……」


 横腹に強烈な痛みを感じ声を失った。その場にうずくまった私を男が部屋に引きずり入れる。


 ああ……だめだったかぁ……


 無情にもドアの閉まる音が部屋に響く。


「クリスティーナ様……ビビアン……」

 

 倒れたままの二人を見て涙が溢れ出す。っと、クリスティーナが苦しそうに顔を歪めたまま上半身を軽く起こした。


 クリスティーナの瞳が緑色の輝きを放つ。まるで嵐のような強風が男の体を吹き飛ばす。声は一切出さなかったが、焦っているのだろう。無表情のままだった男の顔色が変わった。


 そっか、風!! クリスティーナは風の一族だった。


 クリスティーナを守るかのように、強風が刃となって男に襲いかかる。さすがに姿のない風とは戦えないと諦めたのか、男がバルコニーへと走り出た。


 よかった。助かったのね……


 男が消えたことにほっとしたのも束の間、今度はバルコニーから火の手が上がった。


 大変。このままじゃ、焼き殺されちゃう。


 痛む脇腹をおさえてクリスティーナの元へよろけながら向かう。


「レイ……ナ……様……」 


 目が見えていないのだろうか? クリスティーナの手が私を探しているかのように空を彷徨っている。その手をきゅっと握りしめると、クリスティーナの瞳が嬉しそうに細まった。


「わたくし……レイナ様と……仲良くなれてよかった……もし助かったら……今度は……サボテン料理……」

 

「ええ、ええ。サボテン料理、一緒に食べましょうね」


 だからお願い!! 死なないで!!


「キャー」


 部屋の外から悲鳴が聞こえる。火の勢いが強まったことで室内の異常が伝わったのだろう。


 よかった。これできっと誰かが助けてくれる。


 クリスティーナは意識はないけど息はしているようだ。救助を待ちながらクリスティーナの冷たい体をしっかりと抱きしめた。

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