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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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4.お披露目会

「いいですか? 何度も言いますが、失敗してもらっては困ります」


 カイルの口調はいつになく厳しい。


「全く……視察から帰ってみたらこんな厄介なことになってるとは……」


 エイデンは椅子に腰をおろし、大きなため息をついた。


「お披露目会まであと数時間しかないのよ。それまでに皆を納得させるような淑女になれっていうのは絶対に無理だから」


「あの大臣の目的は、大勢の前でレイナ様を馬鹿にして王妃にふさわしくないと思わせることです。おそらく娘のエリザベス様もいらっしゃるでしょう」


 目をぎらつかせて絶対に負けてはならないと言うカイルは、温和そうに見えて結構な負けず嫌いなのかもしれない。


「一応頑張ってはみるけど……うまくいかなくてもがっかりしないでね」


「がっかりなどしない。レイナが他の女に負けるなど、ありえないからな」


 うわぁ。エイデンってば、嫌な奴!!

 思ってもない事言って、私にめちゃくちゃプレッシャー与えてくるんだから。


 エイデンは言うだけ言うと、自分も準備があるからとカイルを引き連れ出ていってしまった。


 すぐにドアが開き、再びカイルが顔をのぞかせる。


「エリザベス様に勝ったら、三食昼寝付きの生活を保障いたします。死ぬ気で頑張ってください」

 

 三食昼寝付きって……それで私がやる気を出すと思ってるの? 人のことなんだと思ってるんだか。まぁ、そりゃ全然惹かれないってわけじゃないけど……


 トントントンっとドアを叩く音で現実に戻される。エイデン付きだという侍女数人が私の準備の手伝いに来たのだ。


「レイナ様の評価が陛下の評価にもつながります。さぁ、全身磨くところから始めましょう!」


「いや〜!! もう無理、無理だからぁ!!」


 皆で寄ってたかって容赦なく体を擦ったり、髪を洗ったり……痛すぎて悲鳴が出ちゃう。


 お風呂が終わった時点ですでにぐったりしてしまった。もうこのまま休んじゃいたい……ベッドに体を投げだし、うつ伏せのまま大きなため息をついた。


「レイナ、分かってる? あなたが馬鹿にされるってことは、あなたに仕えている私達も馬鹿にされてるってことなのよ」


 ミアの言葉にビビアンも頷いている。


「レイナ様が大臣に馬鹿にされて、私達がどんなに悔しかったか……」


「そうね……頑張らなくちゃね」


 エリザベスがどんな女性かは分からない。でも私のことを応援してくれるミアとビビアンのためにも負けるわけにはいかない。決意を新たにし、鏡の前に立った。


 そうこうしている間に時間はたち、早くもお披露目会の時間がきてしまった。


 日に焼けた私にもあうようにと、ミア達が選んでくれたのは黄色いフリルがたくさんついたドレスだった。明るい黄色は私の気持ちまで明るくしてくれる。


「ものすごくお綺麗ですよ」


 ビビアンはそう言ってくれたし、エイデン付きの侍女達も仕上がりに満足そうにしてたけど、皆の値踏みするような視線がいたたまれない。


 ああん。もう部屋に帰りたい……


 だいたいエイデンはどこにいるのよ? プロポーズまでした相手をエスコートもしないなんて、ちょっと酷すぎじゃないかしら?


 そりゃ私は産まれた時は王女だったかもしれないけど、こんな華やかな夜会に出るのは初めてなんだから、少しくらい気にかけてくれたっていいのに。


 エイデンに対する恨み事は次から次へとわいてくる。その怒りがパワーになっているのか、ビクビクすることなく会場内を進んでいけた。

 

 エイデンはどこかしら? こんなに人が多いんじゃ見つからないわ。


「こんなに綺麗なんだから、きっとエイデン様も惚れ直すこと間違いなしよ!」


 ミアの言葉を思い出すと、何だかむずがゆくなる。でももともとエイデンは私の事なんて好きでもなんでもないんだし、惚れ直すってのはおかしいわよね。


 それでも少しは褒めてもらえるかななんて、期待と共にエイデンの姿を探す。


「お一人ですか?」

 突然見知らぬ男性から声をかけられた。


「え、ええ……」

 まぁ一人といえば、一人だわね。


「よかったら僕と踊っていただけませんか?」

 見るからに育ちの良さそうな男性が、人懐っこそうな笑みを浮かべて私を見ている。


 えっ!?  踊り?  踊りはまずい。だって私、ダンスなんてしたことないもの。


 だけど困ったな。声をかけられるなんて思ってなかったから、断り方も教わっていない。


「失礼……ひどくお困りのような顔をしてらいらっしゃるようですが……」


 よかった。助け船かとほっとしたのも束の間、話に割って入った男性から一緒に飲まないかと誘われてしまった。


「いえ、それは……」


 どう断るのが無難なのかと頭を悩ませているうちに、あれよあれよと6人の男性に囲まれてしまった。馬鹿にされないようにとだけ考えていたので、この状況は想定外だ。


 男性に言い寄られるのは初めてだけど、これじゃ嬉しいっていうよりちょっと怖いわ。冴えないメイドを短時間でモテ女に仕上げてくれる、侍女パワーおそるべし!!


「レイナ」


 しつこい男性達に囲まれている私の耳に、少し怒ったような鋭い声が響く。その声の主が分かるやいなや、私を取り囲んでいた男性達が蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。


「エイデン!!」

 

 うわぁ。正装したエイデンってば、めちゃくちゃかっこいい。刺繍の入った漆黒のロングジャケットがよく似合っている。


「何をヘラヘラしているんだ」


「えっ!? 別にヘラヘラなんか……」


「していただろう。男をはべらせて嬉しそうにしやがって。とんだ男たらしだな」

 

 えっ!? 何なの一体? 一人で放置されて困ってたのに、そんな軽蔑した目で見るなんて酷くない?


「いいか、自分に魅力があるなんておかしな勘違いはするなよ。あいつらはお前が俺のものだから興味があるだけだからな」

 

 ひどい。そんなに馬鹿にして笑わなくてもいいじゃない……


 エイデンなんかに見惚れて損しちゃったわ。私のトキメキを返せ!!


 そりゃ私は魅力的じゃないわよ。そんな事は分かってる。でもミア達が頑張って綺麗にしてくれたんだから、少しくらい褒めて欲しかった。エイデンにほめてほしいと思っていた自分がなんだか馬鹿みたいだ。


「陛下、ここでしたか」


 落ち込んでいる私をさらに暗い気持ちにさせる人物の登場に、心の中で大きなため息をついた。


「これはこれは、メイドの姫もご一緒でしたか?」

 私を蔑む大臣の言葉に、クスクスという笑い声が聞こえてくる。


「エイデン様、お久しぶりでございます」


「あぁ、エリザベスか……」


 エイデンの言葉で、大臣の横にいるのがカイルが負けるなと言っていたエリザベスなのだと気づいた。


 いや、これはもう完敗だわ……


 エリザベスはもう見た瞬間に負けを認めざるを得ないくらいに可愛かった。まるでお人形さんみたい。くりくりした瞳に小さな唇、綺麗に巻かれた金の髪の毛。華奢な体型にピンクのボリュームのあるドレスがよく似合っている。さすが大臣の娘だけあって、身につけている宝石も見事だ。


「エイデン様、よろしければわたくしとダンスをしていただけませんか?」


 エリザベスの白くてすべすべの肌はエイデンに会えて嬉しいのか、ほんのりと赤く色づいている。それがまた一段と可愛らしい。


「悪いが俺はレイナとしか踊るつもりはない」


 えぇー!! もったいない。こんな可愛い子の誘いを断っちゃうの?


「まぁまぁ陛下、一度くらい、いいではありませんか。どうせメイドの姫は踊れないでしょうし」


 大臣が馬鹿にしたような目で私を見た。でも私としては後ろから聞こえてくるクスクス笑いの方が不快だ。


「おい、お前今レイナの事を馬鹿にしただろ?」


 エイデンの怒りのこもった低い声に場がしんと静まった。


「いいか、皆に言っておく。レイナは俺の妻になる女だ。馬鹿にするならそれなりの覚悟があるんだろうな」


 エイデンの溢れ出る怒りにも大臣は狼狽える様子はない。それどころか信じられないというような顔をしている。


「陛下!! 陛下はこんなメイドを本気で妻にと考えてらっしゃるんですか?」


「当たり前だ。前から言っているだろう。俺はレイナ以外とは結婚するつもりはない」


 どうしよう。これはちょっと嬉しいかも。

 キッパリと言い切ったエイデンの言葉に、胸がキュとなる。


「そうですか……まぁ結婚については後日考えることにして、せっかくのお披露目会です。レイナ様のダンスでも見せていただきましょうか」


 あら、大臣ってば私の名前知ってたんだ。って今はそれどころじゃないわね。


「……行くぞ」


 エイデンはダンスする気満々みたいだけど、絶対に無理だから。


「エイデン、あの、私ダンスはちょっと……」


「何だ? 俺と踊りたくないのかよ?」


 踊りたいとか踊りたくないとか、そういう問題じゃないの。私は踊れないのよ〜。


 でもこんな事、大臣達に知られたら何を言われるか……


 エイデンにだけ聞こえるように踊れない事を伝えると、エイデンは驚いたような顔で私を見た。


「踊れないだって?」


「はい」


 というか踊った事がないって言った方が正しいかな。


「じゃあ今までの夜会はどうしてたんだよ?」


「夜会なんて出たことないわ。こんな華やかな場に来たこと自体初めてよ」


 エイデンってば、私が住み込みの貧乏メイドだったって事忘れてるのかしら? 


「初めてか……いい響きだな」


 エイデンはニヤリと笑うと私を引き寄せ、頬に軽いキスをした。


「なっ!?」


 何事!?


 思わず頬に触れる。多分私は今恥ずかしいくらいに赤い顔をしてるはず。


「男避けだ。これで他の男はもう声をかけてこないだろうな」


 そう言うとエイデンは満足そうに笑った。

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