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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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33.レオナルドの親友

「んんーん」


 思い切り伸びをしながら、胸いっぱいに空気を吸い込む。夏の厳しい暑さがいつのまにかなくなり、肌に当たる風は心地良くて気持ちいい。


 アストラスタから帰ってからの毎日は穏やかでのんびりしたものだ。季節はもうすぐ秋。秋になったら生誕祭がある。エイデンの誕生日プレゼントは何にしようかしら?


 私は覚えていないけど、去年は手作りのグラスをプレゼントしたらしい。ビビアンとミアが言っていた。

 

 うーん……若い男の人ってどんな物が欲しいんだろう?


「ねぇ、マルコ? マルコってプレゼントでもらうとしたら何が欲しい?」


「はぁ? いきなり何だよ?」


 私の散歩の護衛をしているマルコは不審そうに顔をしかめた。


「もうすぐエイデンとレオナルドの誕生日でしょ? 何をあげよっかなって考えてたの」


 マルコの正確な年齢は知らないけど、見た目からして私よりちょっと上、エイデンと同じくらいだろう。だからきっとマルコの欲しい物を聞けば、エイデンへのプレゼントの参考になるはずだ。


「あー、そう言うこと……ってかエイデン王は、お前がやればゴミでも喜ぶんじゃね?」


 いや、それはないでしょ。っていうか、ゴミなんかプレゼントしたくないわよ。


 なんだろうなぁ。前から思ってたけど、マルコって私の事もエイデンの事も、あんまり好きじゃないみたいなのよね。レオナルドの従者だから、レオナルドの事は尊敬してるみたいなんだけど。


 私の護衛として一緒にいる時でも、自分の話は最低限しかしないマルコの事を私はまだよく知らない。レオナルドからは、マルコはすごく強くて器用だから大抵の事はできると聞いてるけど本当なのかしら? こんなにひょろひょろなマルコが戦う所なんて全く想像できない。


 不意にマルコが眉間に皺をよせ、私に黙るよう言った。


「誰か来るな……これはレオ様か?」


 マルコにはこちらに向かってくる足音が聞こえるらしい。足音がレオナルドっぽいって言ってるけど、私にはさっぱり分からない。


 驚いたことに、マルコの言ったとおりレオナルドは現れた。私達に向け優雅に手を振るレオナルドの隣には、誰だろう? 見たことのない人物の姿があった。


「へぇ、君がレイナ姫か。想像してたより可愛いじゃないか」


 馴れ馴れしく話しかけてくる男性を警戒しながら、一歩後ずさる。


「あぁ、怖がらなくてもいいよ。私はレオナルドの親友だからね」


「おや? 私達は親友だったんですか?」


「違うのかい?」


 親友かどうかは不明だけれど、仲が良いのは確かなのだろう。レオナルドと見知らぬ男は楽しそうに笑い合っている。


「レイナ、紹介しますね。こちらはノースローザンヌのアダム王子です」


 陽気な性格なのだろう。レオナルドに紹介されたアダムはなぜだかVサインをしている。


「よろしく。可愛らしいお姫様」

 アダムが私の手に挨拶のキスをした。


 うーん。こういう事を自然にできるのは、自分に自信のあるイケメンって証拠だよね。


 エイデンやレオナルドほどではないけれど、アダムもかなりのイケメンだ。背がとても高くてスタイルもいい。


「せっかくだし、君も一緒に遊びに行かないかい?」


 レオナルドとアダムは今から街まで視察がてら遊びに行くらしい。それって楽しそうかも。とはいえ、勝手に出かけたらきっとエイデンは怒るだろうし……


「それならエイデンの許可をとってから出かけようじゃないか」


 アダムはエイデンとも知り合いらしい。エイデンに会いたいと言うので、皆で連れ立ってエイデンの元へ行く。


「やぁ、エイデン!! 久しぶりだね」


「アダム王子!? 一体どうされたんですか?」


「いやなに、レオナルドがこの国の大臣職に就いたと聞いたもんだから、様子を見に来たんだよ」


 突然執務室に現れたアダムにエイデンは驚いたようだ。


「それで今からレオナルドと街の様子を見学に行こうと思ってるんだけど、君のお姫様も連れて行っていいよね?」


 アダムの後ろに私がいることに気づいて、エイデンはより一層驚いたようだ。焦ったように立ち上がると、アダムの後ろから私を引っ張り出した。


「アダム王子、レイナは私の婚約者ですので連れて行かれては困ります」


 口調はとても丁寧だったが、エイデンの視線はとても厳しい。


「ただ単に視察に行くだけだから、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」


 エイデンの睨む様な目つきなど、アダムは気にしていない様子で、エイデンの隣にいた私の手をひいた。


 うわっと。

 まさかアダムに引っ張られるなんて思ってなかったせいで、体がよろめいてしまう。そのままアダムの胸目掛けて倒れ込む。


 きゃー!!

 

 私を受け止めたアダムの腕に抱きとめられ、驚きと興奮で息が止まってしまう。アダムってば、すっごく細く見えてるけど、結構胸板厚いのかも。


「何してるんですか!!」

 

 エイデンの怒鳴る様な声と共に、今度は体をぐいっと引かれエイデンの胸の中へ。


「アダム王子!! 先程も言いましたが、レイナは私の婚約者です。手を出すのはやめていただきたい」


「今のはたまたまだよ。ねっ」


 そう言ってアダムが私にウインクしたもんだから、エイデンが今にも噛みつくんじゃないかってほどの形相になってしまった。


 そこへ無理矢理割り込んで来たのはカイルだ。

「レイナ様? お顔の色がお悪いようですし、お部屋へ戻られた方がよろしいのでは?」

 とか何とか言って、部屋へ連れて行かれてしまった。


 慌てるようにして部屋へ入って来た私とカイルを見て、ビビアンとミアは何かあったのかと駆け寄って来た。


「いやぁ、面倒な事になりました」


 大きくため息をついたカイルは私を椅子に座らせ、いつもの鬼教官らしい口調で言った。


「いいですか、レイナ様! アダム王子には失礼のないよう振る舞いながら、決して気に入られぬよう行動してください」


 ……は?


「気に入られるように、じゃなくて、気に入られないようにするの?」


「そうです。アダム王子はノースローザンヌの王子なので、たとえ第三王子であっても陛下よりも立場が上なのです」


「ノースローザンヌって、水の一族が治めている国だっけ?」


 そうですと頷くカイルを見ながら、妃修行で頭にいれた情報を思い出す。確かノースローザンヌはこの世界で一番発言力のある国だったはず。


「ノースローザンヌは多くの従属国を持つこの世界最大の国家です。フレイムジールがいくら大国とはいえ、残念ながら対等に渡り合える力はありません」


「それと私がアダム王子に気に入られないようにしなきゃいけないのは、何の関係があるの?」

 

 っとそこへ、エイデンが部屋へ駆け込んできた。エイデンは私の顔を見るやいなや、両肩をがしっと掴む。


「いいか、レイナ!! 絶対にアダムには近づくなよ。何があっても絶対に二人きりになるんじゃないぞ」


「う、うん」

 真剣な顔をしたエイデンの迫力に圧倒されてしまう。


 エイデンがこんなに必死になるほどアダムって危険人物なの? 見た目は笑顔が爽やかな明るい人って感じだったのに。


 なぜエイデンがこんなにもアダムを警戒しているのかは、カイルの説明で分かった。


「レイナ様、先程お会いしてお分かりだと思いますが、アダム王子は少々女性にだらしのない部分があるのです」


「少々じゃないだろ、少々じゃ」

 エイデンが横から口を出す。

 

 まぁ簡単に言うと、女好きなアダムに私が気に入られて手を出されたら困るという事らしい。


 でもいくら女好きっていっても、わざわざ他国の王の婚約者に言い寄ったりなんかしないんじゃない? 絶世の美女とかならまだしも私だし……


「こんなに可愛いレイナを、アダムがほっておくはずがないだろう」


 エイデンが愛おしそうな目で私を見つめ、柔らかな手つきで頬を撫でた。


「レイナは本当に可愛いなぁ……」 


 やだ。エイデンったら。

 褒められて恥ずかしくなり思わず俯いてしまう。


「レイナ……可愛い。もっと顔を見せて」


 コホン。カイルがわざとらしく大きな咳払いをした。


「カイル、邪魔するなよ!!」


 むくれるエイデンを無視したまま、

「レイナ様が可愛いかどうかは置いといて、アダム王子が女好きで有名なのは確かです。気をつけるにこしたことはないでしょうね」

 とカイルは言った。


「まぁ大丈夫だとは思いますが、もし万が一……億が一にもアダム王子が本気でレイナ様を気に入ってしまうということがあっては困ります」


 そんなことは絶対にないだろうと確信しているようなカイルの口ぶりはいささか不満だ。


「大丈夫だよ。たとえアダム王子に気に入られたとしても、きちんと断れるから」


「頼もしいな……」


 エイデンが私の頭をよしよしと撫でてくれる。その大きな手がとても優しくて心地よい。


「レイナ様……」

 カイルが何か言いかけるのをエイデンが制した。


「しかし陛下、こういうことはきちんと説明しておかなくては……」


 何? 何か問題があるの?


 カイルの言葉に不安がよぎり、エイデンの顔を見上げた。エイデンが仕方ないという顔をしてため息をつく。


「レイナ様、もしアダム王子が本気でレイナ様を気に入った場合、レイナ様が拒否することはできません」


「どういうこと?」 


「先程述べた通り、ノースローザンヌは世界最強国です。その王子から正式に申し入れがあったとなれば……断ることは不可能です」


「でも私はエイデンと婚約してるんだし……」


「婚約とはただの結婚の約束です。実際に結婚しているわけではないので、申し入れを断る理由にはなりません」


「そんなバカなこと……」


「それが国の力関係というものです」


 エイデンの顔を見る。その渋い表情は、カイルの話は真実なのだと物語っていた。


 そりゃ本気で気に入られるなんて思っちゃいないけど……何だか急に心配になってきた。


「心配するな。いざとなればノースローザンヌなんか俺の力で焼き尽くせばいいんだから」


 私を安心させるように笑ったエイデンを見て、私は余計不安になってしまった。

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