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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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27.帰国

 エイデンは今何しているのかしら?


 ボーっとしている私の様子から、何を考えていたのか察したミアが「エイデン様は、明日お帰りになるんだったわよね?」と声をかけてきた。


「えぇ。明日の夜って聞いてるわ」


「さぁ、そんな寂しそうな顔してないで準備しなきゃ。今日はエイデンのお祖父様と約束があるんでしょう?」


「さ、寂しそうな顔なんてしてないもん」


 エイデンの事を考えてたのは、純粋に何してるかなって思ってただけ。そりゃ確かにエイデンが出発してもう6日目だし、こんなにエイデンに会わなかったことなんてないからなんだか落ちつかないけど……寂しいわけじゃないもん。


「はいはい。分かってますよ」的に頷いている、ミアの温かい眼差しがこそばゆい。


「おい!! くだらねー話はいいから、早く用意しろよ」


 いっけない。マルコを待たせてるんだった。


 今日はエイデンのお祖父様にお茶に誘われているのだ。場所はお祖父様専用庭園。綺麗な庭でのお茶会なんて、考えただけでもワクワクしちゃう。


「なんでたかが茶を飲むのにわざわざ庭に出るんだよ。茶くらい部屋で大人しく飲め!!」


 私の護衛をしなきゃならないマルコは不機嫌さを隠すことなく、ずっとこの調子だ。


「だいたいお前は部屋から出るなって散々言われてただろ? 庭園なんて出ていいのかよ?」


「……お祖父様が大丈夫って言ってくださったから、きっと大丈夫よ。マルコもいてくれるんだし」 


 マルコは納得していないようだったが、庭園に向かう私に仕方なくついてきた。


 それにしても警備がすごいわね。庭園のお茶会場所にたどり着くまでに城内の警備をしている近衛騎士に何人出会ったか分からないくらいだ。


 どうやらこの大げさな警備は、エイデンに部屋から出るなと言われている私が安心して外に出られるよう、お祖父様が手配してくれたものらしい。


「やっと来たか」


 エイデンの祖父であるジョージが私の姿を見て立ち上がった。っと、何ともいえない表情を浮かべた。


「お前は……」


「お祖父様、彼はレオナルド様の従者のマルコです。今日はエイデンに頼まれて私の護衛をしてくれているんですよ」


 ペコリと頭を下げ見回りをしてくると言うマルコを見つめながら、ジョージは首を傾げた。


「あの顔……前にどこかで会った気がするんだが……」


 まぁレオナルドの従者なんだから、城内で見かけた事があっても当然よね。なんだかスッキリしない様子だったけれど、ジョージは私と共に席についた。


「チューリップがきれいですね。虹みたい」

 

「お前はこういうのが好きだろう?」


 私達の座るテーブルを囲むように、赤、白、ピンク、オレンジ、黄色のチューリップが咲き乱れている。


 ジョージとこうしてお茶をするのは何度目だろうか?


 最初は厳しく感じたジョージも、だんだんと笑顔を見せてくれるようになってきた。笑う時の目がくしゃっとなるところがエイデンとそっくりで、なんだか親しみを感じる。


「どうした? いつもより元気がないみたいだが。エイデンがいなくて寂しいのか?」


 えっ!? お祖父様までそんな事言うなんて!! 


「サンドピークについて行きたいと言って断られたらしいな」


 誰から情報を得ているのか、ジョージはエイデンにダメ出しをされた私がむくれて妃修行をさぼろうとした事まで知ってるんだから嫌になる。

 

「夏にはアストラスタに連れて行ってもらう予定なんです。だからエイデンに迷惑をかけないようダンスとマナーは完璧にしなきゃ」


 私を鍛えるカイルが鬼のようだと言うと、ジョージは声を出して笑った。


「まぁ仲良くしているのなら、ワシは何も言うことはないな」


 お祖父様との楽しいひと時は平穏に過ぎ、そろそろお茶会も終わろうかという頃、何やら沢山いる護衛がざわつき始めた。


「だからレイナをどこに連れてったんだ?」


 聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてくる。


「……エイデンは明日帰るんじゃなかったのか?」


「私もそう聞いてます」


 いくら何でも帰るの早すぎるし、違うわよね。っと思いながらも、この怒り方はエイデンとしか思えない。


「レイナ!! お前こんな所で何やってんだ!!」


 うわぁ。

 

 今の私の気持ちをどう表したらいいんだろう。

 やっぱりエイデンだったのかと納得する気持ち。何でいるのという疑問。そして怒りで真っ赤になった顔に対する恐怖……複雑すぎる感情が久しぶりに会えて嬉しい気持ちを押し潰す。


「何を考えているんです!! エリザベスもまだ発見されていないんですよ。こんな危ない場所で、またレイナに何かあったらどうするんです」


 挨拶もせず捲し立てるエイデンにあきれながら、ジョージは厳しい口調で言い返した。


「ここはワシの庭で、ワシの護衛が守っている場所だ。エリザベスなんぞが入り込むような隙などない」


 おーい!! なんか二人してヒートアップしていってるけど、エリザベスって一体誰よ?


「あっ。皆ここにいたんですね」


 不意に現れたレオナルドが、言い合いをするエイデンとジョージを見て目を丸くした。


「どうしたんです? 二人ともそんなに怒って……」


 睨み合うようにしていた二人だけれど、先に口を開いたのはエイデンだった。


「レイナをこんな見通しの良い場所に連れて来るなんて信じられませんよ。いくら先代の護衛がいるとはいえ危険すぎます」


 これに対してジョージも負けてはいない。


「お前がレイナを置いて行くのが悪いんだろう。寂しがって元気がないと聞いたからこうやって気分転換させていることの、何が悪いんだ!!」


 おや? 今日ここに誘ってくれたのはそんな理由だったの? って、一体誰よ。お祖父様に私が寂しがってるなんて伝えたのは。


 私ってば、そんなに寂しそうに見えてたのかな?


 ジョージの言葉で私を見たエイデンの般若のような顔が、一瞬にしてフニャッと力の抜けただらしのない顔へと変わった。


「そうか……寂しかったのか……」


 エイデンがやけに満足そうな顔で私の手を握った。


「レイナ。寂しい思いをさせて悪かったな。さぁ、一緒に部屋へ戻ろう」


 エイデンってば。あまりの態度の変わりっぷりに、皆が引いてるって気づいていないのかしら?


 ジョージにお礼を言い、ニコニコ顔のエイデンと共に部屋へ戻ろうとする私をレオナルドが呼び止めた。


「帰る前にレイナに渡したい物があるんです。レイナ、これをどうぞ」 


 レオナルドが私の手の上に小さなラクダのぬいぐるみを置いた。


「うわぁ。可愛い」


 モコモコっとした素材で作られたぬいぐるみは、ラクダというよりはアルパカっぽく見えなくもないけれど、とても可愛らしい。


「おい。何だよ、これは?」


 エイデンがラクダをヒョイっと持ち上げる。


「レイナへのお土産ですよ。気に入ってもらえましたか?


「はい。とっても嬉しいです」


 エイデンに返してもらおうと手を出すと、エイデンがラクダをじっくり見ながら、ふんっと鼻で笑った。


「こんな土産なんかもらって、何喜んでんだよ?」


「だって、とっても可愛いじゃない」


 ふーんっとじっくりラクダを見ていたエイデンが、何を思ったのかそのラクダを自分のポケットに突っ込んだ。


 えっ?


 私だけじゃなく、レオナルドもエイデンの行動の意味が分からず一瞬動きが止まった。


 まさかあんまりにも可愛いから、エイデンも欲しくなっちゃったとか?


「レイナ!! いつまでもこんな所にいないで、さっさと部屋へ戻るぞ」


 ぐいっと手を引かれ、よろけるようにしながら庭園を出た。


 部屋に入り二人きりになるやいなや、エイデンが私を抱きしめた。


「レイナ、会いたかった。会いたくて会いたくてたまらなかった」


 そんな大げさな。会えなかったのなんて、たった6日じゃない。でも私に早く会いたくて一日早く帰って来たと言われたら、何だか嬉しくなってきちゃう。


 久しぶりのエイデンの腕の中はとても温かくて気持ちがいい。 


 あー、私今めちゃくちゃ幸せだわ。やっぱり私って、エイデンの事好きなのかなぁ?


 エイデンが帰って来てくれて嬉しい気持ちを伝えたい。素早く背伸びをし、エイデンの形の良い唇にキスをした。

 

 自分からエイデンにキスするなんて初めてで、恥ずかしさで顔が熱くなってくる。


「レイナ、こっち向いて」


 ムリよムリ。今は絶対ムリだから。

 顔を見られないように、エイデンの胸に顔をピッタリとくっつける。


「なぁ、レイナ。もう一度レイナからキスしてくれないか」


 耳元で静かに囁く低音ボイスが、私の身体にビリビリっと電気を走らせる。恥ずかしくって声も出せない私は、ただプルプルと首を振ることしかできない。


「あーダメだ。可愛いすぎてもう我慢できない」 


 エイデンが私の頭を引き寄せ熱いキスをする。何度も何度も繰り返されるキスに体中の力が抜けていく。


「エイデン、もう、もうダメ……んんっ」 


「レイナ、愛してるよ。本当に愛してる……」


 繰り返される愛の言葉と終わることのない口づけに、私の心も頭もエイデンで満たされ、もう何も考えられなかった。

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