第5話 奈落の世界を蹂躙せよ 三
第七位階上位
南東エリアの戦場。
最初は、心配なのでポンコツ姉妹から見ていこう。
アスフィンの相手は、ハートの王。
既に首が飛んで転がっているが、それに構わず体はハートの王と切り結んでいる。
むしろ、斬首属性のせいでハートの王の斬撃は首を狙ってしまう為、攻撃が微妙に乱れている。
狙ってやってるのか偶々なのかは判断つかないが、取り敢えず血を操って首を動かしつつ体で戦うその様は……お子様に見せられないのは間違いない。デュラハンかな?
一方ポンコツ姉妹、ドジな妹の方は……進化して竜変種となった影響か、或いは元々センスがあったのか、巧みな操血操影の技術で遠距離攻撃に徹していた。
血煙となって周囲を覆い尽くし、コアは影に潜んで一定の距離を保ちつつ、血と影を竜牙の如き刃へと変じさせてクラブの王へ猛攻撃をしているのだ。
だが、レベル700クラスを欺ける程のレベルでは無い様で、力をより強く行使しようと近付けば直ぐ様見破られ、慌てて退避するのが続いている。
だがまぁ、よっぽど失敗しない限りは大丈夫だろう。
むしろ度々挑発してる様な形になっていて、集中を阻害して本体を追わせる度に大きなダメージを与えている。
……これが素で出来るんだったら、評価も凄くあげられるんだけどね。
次、水精三姉妹とスペードの王の戦い。
此方は……スペードの王の戦闘スタイルがさっきのと全く違っていた。
まるで狂戦士の様に暴れ狂っているのだ。
かと言って、弱体化したのかと言われるとそうでもない。
厄介さで言うならさっきのスペードの王の方が上だが、狂戦士化したスペードの王は、ナイトメア化して増大した膨大な魔力に物を言わせて、凄まじく重い一撃を連発してくる。
ベクトルが違うだけで脅威は増しているのだ。
その点、水精三姉妹は回避と幻惑に向いた神性を持つので、思考を放棄して大暴れするスペードの王とは相性が良い。
此方も、放って置いて大丈夫そうだ。
ダイヤの王とアウラの戦いは、アウラがダイヤの王を自領域に引き込む事で、優勢を維持できていた。
だが、ダイヤの王も然る者で、豪華で金色の輝きを放つ大盾と大槍を巧みに用いてアウラの攻撃をほぼ無効化していた。
そんな堅牢な城砦の如き防御力を前に、アウラの猛攻が続いている。
生憎と精霊帝達の領域は未だ開発が進んでいないので、精々魔力ポットくらいにしか使えないが、いずれはもっと強力な攻勢領域へと改造していくつもりだ。
現状の領域では、今しばらくアウラの猛攻が続く事になるだろう。
……削り切れるかどうかは……いや、大丈夫な筈だ。
最後、泉の女神とハイネシアさんの所は、凄まじい魔力の主導権の取り合いが起きていた。
自領域であると同時に水の女神であるハイネシアさんが優勢だが、泉の女神は金の斧と銀の斧を自在に操り、支配の邪魔をしている。
優勢ではあるが、気の抜けない戦いが繰り広げられていた。
全体が善戦出来ている要因として、リッドが分裂して補助をし回っていると言うのも大きい。
ざっと見た所、南東エリアは概ね問題無さそうだ。
次、北東エリア。
茨の怪物とイテアの戦いは、イテアが優勢。
茨の怪物の動きにはどう見ても理性が存在しない。
なのにレベル限界の壁を超えていると言う事は、本能的にそれらを行使出来るイキモノと言う事か。
まぁ、ヒメの話を聞いた通りだと、この化物には複数の『原典保持者』級『原典』が取り込まれている。
それ即ちオーブを複数持っているのと同じ状態なので、基礎スペックを遥かに凌駕する力が身についているのだと考えられる。
そんな化物に対するイテアは、土のオーブや精髄、領域の鍵に信仰、そして各種補助効果がついている。
基礎スペックも600半ばなので、優勢なのは当然と言えるだろう……敵に隠し球がなければね。
花の小人さんは、花の魔物を複数使役して戦う軍団系のナイトメアだったらしい。
頭数はやや少なめだが、軍団系である事に違いはない。
ルメールは単体でそれと戦っているが、幾ら格下とは言え、何らかの神性を宿す花の魔物の群れを相手にしては部が悪い。
と言うか、見た感じ総合力で劣っているので、かなり劣勢だ。
これは単に僕の判断ミスなので、仕方ない。援軍を送る。
アルナンだ。
彼女には桃を育てる大事な仕事があったが、致し方なし。
『アルナン、行けるね?』
『いつでも行けますよ。桃狂いマスター』
『褒めても何も出ないよ?』
『……桃は褒め言葉じゃないですアホマスター』
褒め言葉だよ?
それはともかくとして、行けるのなら問題ない。
戦力的にはこれでようやく互角だろう。
アルナンを送り出した所で、次、お菓子の双子。
対するは闇の精霊帝。グリドア。
神性で言えばイテアの方が上だが、グリドアには他には無い、崩黒神・ニグレドの神器、ニグレド肉片が変質した黒い塊がある。
元々の性能は神器と言う程でも無かったが、変質した今やグリドアの神器と言えるレベルにまで至っている。
グリドアの戦力は、オーブを持つ本人に加え、使徒、そして使徒に迫る力を持つ2体の魔物を従えている。後半2つに限って言えば、増殖するヤバい奴だ。
それに増してや、それら4人に有利な自領域へ双子を引き込んでおり、これには他と比較して出力1.8倍くらいの双子も攻め切れない。
グリドアは全く問題無さそうだ。
……何処かに問題があったとしたら、援軍として彼女等を解き放たないといけなくなるので、取り敢えず良かった。
最後、リヨン&エラvsイェガの戦場は……正に戦場だった。
軍団と軍団のぶつかり合い。
数で圧倒しているイェガ軍団がガラスの騎士を囲み、光攻撃は相性が悪いので、物理でゴリゴリ削っている。
集団で押さえ付けて物理で……ガラスのひび割れる音が断末魔に聞こえない事も無いが、それで勝てるなら問題なし。
複数体存在する守護騎士級のガラス兵には、イェガを守る8体の騎士が相対し、他の人形が余りの守護騎士を相手に時間稼ぎをしている。
一番の問題であるリヨン&エラは、融合して一人になると、ガラスの魔導鎧を装備し、イェガ本体を狙って飛翔した。
これに対し、イェガは戦場に送っていない遠距離型の飛翔人形を全機起動し、自分の持つ武装をフル活用して迎撃している。
流石の超強化リヨンも、イェガが溜め込んた膨大なエネルギーと人形軍団を前には攻めあぐね、周辺を飛び回っては隙を伺っている。
まぁ、イェガは我が軍でも最強の一角なので、そうなっても仕方ないのだ。
何せ、単純なエネルギー量だけ見れば実に5エヴァ。
全てを使い捨てにする戦いをすれば、本当にエヴァ5人分と互角に戦える超兵器となっている……流石に最後は5エヴァが勝つだろうが。
エネルギー量だけ見れば5エヴァなのだ。
見た感じリヨンの軍団はリヨンも含めて3.5エヴァなので、順当に行けばイェガが勝てるだろう。
心配な点は、リヨン軍団は量が少ないが質が高く、イェガ軍団は量は多過ぎるくらい多いが質は若干低いと言う事。
質が量を覆すのは往々にしてある事なので、危うい均衡の上に立っているとも言える。
……まぁ、つまり、リヨンがイェガを狙わずに下に降りてイェガの騎士を蹂躙すれば、負ける可能性はあるのだが……リヨンはイェガを倒せれば終わると思っているのだろう。
北東エリアはここまで。
若干危ない所もあったが、此方も概ね問題なし。
次は、一番問題の北西エリア。





