第55話 決戦、鬼ヶ島前!
第七位階上位
《【運命クエスト】『助けた姫に連れられて〜♪ 水晶宮へ行きました〜♪』をクリアしました》
海底の戦闘は、クリカ軍団によって無事終結した。
クリカはそのハルバートとなった剣鋏と鎚鋏を巧みに操り、水晶宮に取り付いた鬼達を一人一人丁寧に水晶宮から引き剥がすと、大型の配下の群れに放り込むと言う管理職的仕事に取り組んだ。
この脅威をどうにかせねばとクリカへ襲い掛かった潮汐童子は、クリカの鎚鋏に弾き飛ばされ、レベル的に格下である筈のオルケニウスと互角の戦いを繰り広げる。
一方で、水晶宮に取り付いた弱めの鬼やオーガキング、狭くクリカの手が届かない場所で破壊をしていた鬼達は、分散したサラナギアの激流に飲み込まれ、ズタズタに引き裂かれて死亡した。
水中最高戦力、移動要塞クリカの猛威に鬼達は抗う術を持たず、そんな混乱にこれ幸いと乗り込んだルムやヒメ達の手によって、強力な仙鬼が各個撃破。
然程時間を掛ける事なく鬼達は殲滅され、最後に潮汐童子がオボエテロヨーと棒読みで言って逃げ出した事で、クエストクリアと相成った。
評価的には、水晶宮の損耗率が5%以内、即ち、水晶宮に兵士が詰めていればほぼ完全に0%だったと判断される仕様で、絶対防衛のエクストラ評価を獲得した。
入手したのは、スキルポイント3P。ニコラメダル2枚。『如意金剛棒』。
エクストラ評価報酬は、スキルポイント3P。『人形の家・水晶宮』
如意金剛棒は、神珍鐡とアダマンタイトの合金製で、ある程度伸縮自在なのに硬く、軽重自在でもある一品。
誰に渡すかは……キースは武器使わない子だし、棒使いとはいえケイに渡すのは……タク達なら兎も角技術レベルに見合って無いし…………まぁ、保留かな。
小さな水晶宮は、勿論クリカの背中に埋め込む。
これで、黄泉の水底、冥府の門、英雄の墓標、生命の軌跡に続いて部下を収容できる施設を得られた事になる。
生命の軌跡は2体まで、英雄の墓標は100体まで、冥府の門はアンデット専門だし、黄泉の水底はストレージと同じ要領で水棲のフレッシュゴーレムや合成獣を入れておけると言うだけで、総合的な収容可能体積が決まっているので大型の子はあんまり入れられない。
その点、水晶宮は現在のクリカ3匹分を収容できるサイズがあるので、取り敢えずの収容施設としては十分だ、クリカに埋め込んでおく。
時間があれば、泡沫の園や水泡の庭の拡張機能にマナ貨幣を注ぎ込んで、クリカにセットしてあげたい所だ。
クリカもそこら辺弁えている様で、今の時点では量よりも質を優先し、強力な個体や大型な個体を墓標に登録。
それ以外の小型は黄泉にしまい、余ってる素材はくっ付けて冥府に投入。それ以外の貴重な資材は、古代命流と共にアイテムボックスにしまう事で新鮮且つ健康な状態を維持している様だ。
確かに、命流はどちらも生命力を暴走しない形で投入する機能が付いているので、生鮮食品を保存するのに適していると言えない事も無い。
◇
クリカを送還し、船上に戻ってきた。
消耗が少ないので、メンバーは変わらずだ。
甲板では、船酔いは演技だったらしいグンハと桃花と白羅が三者面談していたり、床に転がる金剛丸をルムが介抱? と言うか抱き締めている。
一方、舵輪の前では船を操る釣竿法師にシャオロンが懐いており、マストには誰の悪戯かまめちゃんが括り付けられ、ヒメとリムが黒ネコと白ネコのマグネットオセロをやっていた。
それにしてもまめちゃん……コレ、ルムかな。こんな事するのルムしかいないし……いや、でもシャオロンかヒメの可能性も……まぁ、どうでも良いか。
取り敢えず、鬼の根城に辿り着くまでは、哀れなまめちゃんを僕が介抱する事にした。
遠い海を眺めつつ、片手間にレベル的に非常に強固なまめちゃんの体を指でマッサージしていると、ビビビッとヒメが何かを感知した様で、立ち上がった。
「? ヒメさんの番だよ?」
「お、オォ……鬼ヶ島が見えて来まシタ!」
どうやら負けそうだったらしい。ヒメは未だ見えない鬼ヶ島を直感で見つけ出した様だ。
リムがキョロキョロと海を見回し、首を傾げた所で、遠目に島が見えて来た。
「……あ、本当だ! でも直前まで見えなかった様な……」
「修行不足デス!」
的を射た嘘である。確かに僕の部下は殆どが修行不足であり、それを指摘されたリムは素直に納得した。
「おーい、お前さんらー、敵が来るぞー」
「そうですよ、皆さん! ぼーっとしてないで迎撃の準備を!」
のんびりとした釣竿法師ときびきびしたシャオロンの声が響く。
三者面談していた3人が刀片手に立ち上がり、リムも遅れて臨戦態勢を整える。
ルムは、やれやれと言わんばかりにグロッキーな金剛を転がして立ち上がった。
僕はどうしようかと悩んでいると、まめちゃんが動きだす。
「……ユキ殿、感謝する。これで俺も戦えそうだ」
「そう、じゃあ頑張って」
「うむ、任されよ」
若干顔色は悪いが、戦闘に支障は無さそうである。
皆の準備が整った所で、敵の全容が見えて来た。
先ず目に付くのは、大きな船が三隻。其々に、白波童子。石熊童子。八雲童子が乗っている。
また、三隻の船の他に小舟も多数あり、更に海中には潮汐童子と渦童子、沫童子含む無数の水棲鬼人がいる。
敵の戦力がやけに多い気がするが、思えば此方にはヒメ達含む6名の英雄がいる。
合理的に考えると、童子6体は6名に任せ、僕はそれ以外を駆逐するのが仕事と言う事になる訳だが……。
……此方の成長の為にも、戦場はしっかり管理させて頂こう。
◇
念動力を用いて敵を弾いたり、僕の配下を援護したりする事で、望み通りの戦況を作り出した。
先ず、大柄な白波童子には、因縁をつけて桃花と戦わせ、小柄なパワータイプらしい石熊童子には金剛丸を送りつけた。
魔法を主体に使うらしい女鬼の八雲童子には、戦力が拮抗しているリムを修行の為に戦わせている。
水中では、小柄な女鬼の潮汐童子と、同じく小柄なルムを戦わせ、地力で他よりやや劣るらしい渦童子と沫童子は、水棲鬼達と纏めて釣竿法師とシャオロンに任せた。
まめちゃんとグンハには各地点の仙鬼の群れを押し付け、察しの良いヒメと白羅には、主に小舟の処理を任せ、ついでに船上や水上、水中で戦う皆に邪魔が入らない様に援護をさせている。
尚、ルムらは此処で使い潰す予定なので、ルムには基本援護なしで水棲鬼や仙鬼が襲い掛かる様にしている。
ルムならきっと、襲い来る敵を討ちながら強敵を倒す事が出来るだろう。
そんな戦場を船の上から見守る僕の仕事は、ヒメと白羅の手伝いやシャオロンと釣竿法師の援護に、念動力による仙鬼や鬼人達の誘導、そして船の防衛。
流石にレベルの高い敵が相手ではそれなりの消耗があるが、夢での消耗が思っていたより少なかったおかげで、その消耗率は精々4割程度。
機神クラスの敵と1〜2回くらい戦えるだけの余力は残っている。
おそらくだが、この迷宮の最後のボスは機神クラスかそれ以上だと思われる。
更に、裏面とやらに備えて、ウルル、メロット、ディルヴァ、シャルロッテ、吸血鬼トップ4、六精帝、水棲三姉妹、ルメール等々、傑出した力を持つ錚々たるメンバーを温存している。
エヴァやアトラ、ミルちゃんにサンディア等、温存しておきたかった子もいたが、今のルム同様、死戦として十分な相手が出てきてしまった以上仕方ない。
さぁ、もっと激しく、死合おうじゃないか。





