第54話 ユキチクリカ
第七位階上位
海に飛び込むと、案の定世界が変質した。
水中なのに息が出来るし、海の底までしっかり見通せる。
見た所水底には煌びやかな城の様な物があり、そこに無数の鬼達が群がっている。
中でも一番強いのは、潮汐童子と言う名前の小柄な鬼。
「ぷー、あー、あー……普通に喋れるのです」
「……微妙に感覚が違うわね」
ルムや桃花達が体の動きを確認している横で、僕は戦力の分析を続ける。
ざっと数えて見ると、眼下に存在する鬼の数は今までの実に3倍少々。
流石に数を揃えるので精一杯なのか、質は若干低く、先の戦いで見た顔もある。
バンディットオーガキングやパイレーツオーガキング、それからマリンオーガキング等のレベル100半ばまで強化されたオーガの群れが、水晶宮のあちこちで暴れている。
それを従えている鬼人達はレベル200半ばの上位種が基本で、400半ばの仙鬼は丁度100体いる。
幸い敵の攻撃目標は主に水晶宮の様なので、それを盾に攻撃を続ければ勝ちは拾えるだろう。
ただし、目標は完全な勝利。
思っていた以上に敵が多くて少し驚いたが、彼を召喚すればそれも容易く殲滅出来るだろう。
この水中は、高さ制限がほぼ無いと言って良い。
そう、即ち——
「召喚・クリカ」
——海中最高戦力を呼び出せる。
「さぁ、主役達よりも早く殲滅してしまおうか」
僕はにこりと微笑み、此方を見上げて硬直する鬼達の群れを見下ろした。
「……えげつないのです。ユキチクなのです」
聞こえてるぞ。
◇
クリカは水流を操り即座に海底へ降りると、黄泉の門を開いた。
溢れ出るのは、無数のアンデットやゴーレム達。
原海で貯め込んだ大戦力が、今、解き放たれたのだ。
その中には、僕の知らない珍しい海魔が結構な数いた。
その中でも、クリカの結晶背甲に埋め込まれた英雄の墓標に魂を保護されていると見られる特に強大な存在を見てみる。
塵輪鬼 LV423MAX
フルマルム・グラーナ LV418MAX
ギガントクラブ LV401MAX
レッサー・クラーケン LV440MAX
アルレンフィーヌ・キング LV412MAX
クノペゴス LV427MAX
ヒュドリプス LV425MAX
オルケニウス LV400MAX
サラナギア LV400MAX
どれもレベル400越えの化け物揃い。
洒落にならない大戦力である。
レベルMAXになっている個体はおそらく……深化の怪物のクリエイトライフ系魔法による魂の補強と、誕生世海による生命エネルギーの供給で至れる最大限なのだと考えられる。
分かりやすく言えば、クリカが手に入れた死体の欠片を搔き集め、黒霧補助の元完全に個体を再現し、魔力をゴリゴリ押し込んで生み出した、クリカお気に入り戦力である。
どうやら、生命の軌跡には何も入れていないらしい。
黒霧補助の元、最高傑作を生み出したら入れるのだろう。
その候補筆頭は、おそらくオルケニウスとサラナギアだ。
オルケニウスは、水竜の素材をふんだんに使った……なんだろう、龍と言うか……蛇球?
ざっと見た感じ、9匹の大型龍を中心に小型の龍が纏わり付き、人体の様な物を形成している。
龍塊巨人とでも言うべき姿だ。
はっきり言って異形である。アレを龍人とすると新しい枠を作らないといけない様な怪物だ。
強いて近似種を挙げるなら、ヒュドラが一番近い。
勿論性能はレベルに見合わずオーバースペック。
全ての龍に龍玉があるからと言うのも勿論だが、その最たる要因は体内に始源命流が仕込まれているからだ。
ヒュドラをベース案にその形状をより自在に動かせる様にした新種……いや、名前的にアクロニスの特異進化種族を創造した感じだろう。
その性質から、多分聖戦機神・アヴァロンも参考にしたのだと考えられる。
正に生きる地脈と言うに相応しい化け物だ。……生きる地脈いるけどね。
一方サラナギアは、一見すると小柄な少女……もとい僕のシルエットをしている。
その実、肉体を構成しているのは全てが何らかの貝の魔物の殻片で、攻撃時は肉体を解いて無数の刃になり襲い掛かって来ると言う代物。
一粒一粒にイコルが仕込まれ、拡張された内部空間に僕の因子が込められた魔結晶が入っている他……よく見ると、常夜天道。満珠天道。克禍天道。豊芽天道等から入手出来る星と星屑が複数封入されている。
肉体を自在に操る力はそこから来ているのだろう。
勿論、オルケニウス同様肉体のスペックがレベルを遥かに超越している。
方や群体竜種、方や甲殻人型群体生物。
正直、どちらも僕が手を入れたい程に興味深い物だが……断腸の思いで見守る事にする。





