第46話 難しい問題 無理な要求
第七位階上位
ドンッ! と豪音が響き、触れもしていない木々が揺れ、木の葉が舞う。
武装解除したブガンダ君と、物怪丸が激しく争っているのだ。狭い土俵の上で。
地力ではブガンダ君は劣っている。それを防具と勲章、ジョブスキル『副将軍』。『寛大』騎士団の精神強化。クラン補助効果等で補っているのだ。
まぁ、それらは所詮微増なので、ブガンダ君の地力はギリギリ500に届かない程度。
余裕のある物怪丸と比べても一目見て分かる程に劣っている。
一応念の為、白色英雄で出たカッパのカッツェをつけておいた。
勿論僕は時間が掛かりそうなので先に進んでいる。
背後で激しい音が鳴るのを聞き流しつつ、丘を登った。
磯風の吹く崖の上から、周囲を見回す。
見えたのは、広い海。
砂浜はなだらかな曲線を描いて南へ広がり、其れ等を飾る様に松の木がアトランダムに植えられていた。
その景色の中で、特に気になったのは5つ。
比較的近くに……何か光っている竹林。
竹林を抜けた先に、不自然に開けた坂道の草原。
草原から少し南西に行った場所にある小川。
そこから西にある2つの村の様な建造物。
そして最後に、海の先に浮かぶ小島。
順路は先ず竹林に行き、そこを抜けて草原。続いて小川、村と進み、最後に島で良いだろう。
早速向かってみる。
◇
轟音が響いている割に大したダメージの無い2人をチラッと見て、暇そうな性別不明のカッツェに手を振ってから森を後にする。
海岸沿いに砂浜を進み、そう時間を掛ける事なく竹林に到着した。
竹林を少し進むと、間もなくキンキラキンの大きな竹に遭遇した。
《【運命クエスト】『コレが難題デース!』が発令されました》
《
【運命クエスト】
『コレが難題デース!』
参加条件
・光る竹に出遭う
達成条件
・難題を解く
失敗条件
・無し
・備考
難題を問題デース! 解けたらご褒美もありマスヨー!
》
大きな竹は、バオバブ並みに太く、そして低い、金や銀の塗料が塗られた……家だった。
いや、出入り口が無いから家ではないか。
さて……どうすれば良いのコレ?
「……切れば良いのかな?」
心器を召喚し、大太刀に変形させて斬属性を練り上げ、た所で声が聞こえた。
「ちょちょちょ!? 待ってくだサーイ! 切らないデ! 死んじゃいマース!?」
竹の中から慌てた様な声が聞こえるので、仕方なく斬属性を分解、構えを解いた。
すると、竹の中の人はほっと一息付く。
「はぁ〜……び、びっくりしまシタ。ちょっと待っててくださいネー」
竹の中で何やらゴソゴソと音がして、待つ事しばらく、準備完了デース! と言う声の後、竹がパカリと開いた。
そう言う感じなのか。
中にいたのは、ロングの黒髪に碧眼の着物美人。
緑を中心にした柔らかな色合いの着物で大きなベットの様な物の中心に座っており、そのベットにはあちこちに猫のグッズが置かれていた。
猫好きなのかな?
竹の美女は、僕と視線を合わせるとニコリと微笑む。
「初めマシテ、赫夜 妃愛と申しマース。フツツカモノデスガ、どうぞよろしくお願いしマース!」
「うん、よろしくね」
カグヤヒメさんとやらに挨拶しつつ微笑み返す。
すると、ヒメさんは花咲く様な笑みから少し意地悪な笑みに変えた。
「突然デスガ、問題デース!」
どうやら、クエストの本題に入るらしい。
僕がコクリと頷くのを見て、ヒメはこほんと咳払いして声を整えると、口を開いた。
「答えは簡単デス。筍ご飯を3に——」
「——答えは簡単」
「ん……に……」
僕の答えに、ヒメは失速のち言葉を失った。
驚愕にその青い瞳を見開いたヒメは、盛大にあわあわして視線をぐるぐるクロールさせた後、妙案を思いついたと言わんばかりに手を打った。
「ええ、ええ、勿論正解デースヨー。でもコレはアレデス! コテシラベーデス! 次の問題こそが難題デース!!」
「ほう、聞こうか」
既に上から目線なのはプレッシャーを与える為デス。無意味にプレッシャーを与えマス。
「えと、えーと……ちょっと待つデース……あー……あっ」
ピコンッとヒメの頭上に電球が浮かんだ気がした。
自称難題な問題を思いついたらしい。
ヒメは自信満々に口を開き——
「朝は4足。昼は2足。夜は3足。コレ…………なんでショウ?」
——疑問形で首を傾げつつ言い終えた。
「人間」
そう答えた僕に対し、ヒメはコテンと首を傾げる。
「……あ、今の答えデスカ? ふふっ、そんな訳ないデース。人の足が増えたリ? 減ったリ? する訳無いじゃないデスカー」
無い無いと言わんばかりに手を振って、くすくすと微笑んだヒメに、僕は無表情で解説をくれてやる。
「生まれたばかりの朝は、地面を這う赤子だから4足。成長した昼は2足。老いた夜は杖をつくから3足。故に答えは人間です」
「……へ?」
余程自信があったと言うか、自分が分からなかった問題は解けないとでも思ったのか、或いはそもそも答えなんてない問題だと思っていたのか。
おそらく後者だろう。納得してしまったらしいヒメは、あわあわとした後、視線をぐるぐるさせながら大声を上げた。
「さ、最後の問題デース!! ワタシの昨日の夕ご飯を答えなサイ!」
コレは解けないだろう。と、もはや問題じゃないナニかを自信満々に口走るヒメに、僕は小さくボソリと答えを出した。
「……筍ご飯」
…………。
「……ふぇ!? な、なじぇ……?」
《【運命クエスト】『コレが難題デース!』をクリアしました》
……クリアしちゃったよ。
……最後のは間違いなく難題だけども。
取り敢えず、惚けた様に口を開いてぼーっと思考しているヒメと視線を合わせつつ、入手アイテムの確認でもしておこう。





