第45話 浦島な状態を演出しマシタ!
第七位階上位
白虹に染まる夢の中。
しゅーたんの温かい手に引かれるまま、歩みを進める。
実際の経過時間は然程では無いだろう。
ただふわふわと、正に夢見心地。
だんだんと閉ざされ始めた意識。
そんな中で、しゅーたんに良く似た声が聞こえた。
——あぁ、見つけた。
はっと目を覚ますと、僕は立て札の前に立っていた。
『こ…先、……地…。夢……口。……旅人…外………り…禁ず。※おかえりは彼方←』
何故か風化した様なデザインに変わっているが、メニューから時計を見た感じ、精々数十分しか経っていない。
若干夢の記憶が曖昧だが、メロットとしゅーたんが懐いていたのと、謎の熊もどきと、最後にしゅーたんのオリジナルと思わしき存在を感知した事は覚えている。
見上げると、白砂の荒野には、白虹の靄は無くなっていた。
まるで夢を見ていたかの様だが、レアしゅーたんの写真があるので夢では無い。多分そう言う感じの演出なのだろう。
立て札の矢印は西の海を指していた。
思いの外、消耗は少ない。
迷宮もあとちょっとでクリアの筈だし、最後まで頑張るとしよう。
◇
白砂の道を西へ歩いて暫く。
相変わらず唐突に世界が変わった。
白い砂は変わらずだが、風には磯の香りが混じり、然程遠くない場所に海と小屋が見える。
早速とばかりに小屋へ突撃した。
小屋はボロ屋の納屋兼住処だった。
小屋の直ぐそばには桟橋があり、朽ちた船が浜に転がっている。
小屋には随分と古い干物がぶら下がっており、その隣には蜘蛛の巣が張られた網があった。
人が居なくなって随分経ったかの様な雰囲気だが、気のせいである。
そんなボロ屋の中心に、あからさまに怪しく設置された玉匣。いや、玉手箱。
勿論何の躊躇いも無く開封した。
煙を吐いた箱の中身は、釣竿法師と言う名の釣竿。
他にも、寝床にあった場違いな靴下からニコラメダルを1枚回収した。
取るものは取ったので小屋から出る。
辺りを見渡すと、いつのまにかまた世界が変わっており、白い砂浜は普通の砂浜に、そして南側の木々の幾らかが松に変わっていた。
見た感じ此処から海岸沿いに南下して行くのが正当な順路だろうが……北側を見ると、丁度いい高さの丘と崖が見える。
然程離れていないし、取り敢えずそっちに行ってみるべきだろう。
……あからさまだから何かありそうだしね。
崖の上に向かうには、通常であれば飛んで行くが途中で高さ制限に引っかかるので、迂回して少し森に入らなければいけない。
そんな訳で森に入ると、いきなり遭遇した。
——熊に。
《【運命クエスト】『怪力無双の物怪丸』が発令されました》
《
【運命クエスト】
『怪力無双の物怪丸』
参加条件
・ボス『物怪丸』に遭遇する。
達成条件
・ボス『物怪丸』を満足させる。
失敗条件
・無し
・備考
物怪丸は相撲が好き。
物怪丸と相撲を取って、物怪丸を楽しませてね。
・主な出現魔物
物怪丸
》
夢で見た熊と違って、その熊はちゃんとした熊だ。
普通の熊と比べて2回り程デカいが、妙な付属品は付いておらず、どっしりと座り込んでいる。
強いておかしな点を挙げるなら……回しの様な物を装着していて、直ぐ近くに土俵があるところか。
物怪丸 LV500
べしべしと地面を叩き、土俵を指差してアピールする熊さん。
……僕に相撲を取れと?
首を傾げて分からない振りをする僕に、熊はべしべしとアピールを続ける。
渋々土俵に上がろうとすると、熊さんは激しくビタンビタンと地面を叩いた。
どうやら物怪丸は僕と相撲をしたくないらしい。
……もしや、体格が好みじゃないのかな?
僕は確かに、身長で言うなら半分以下、単純な質量だと十分の一以下。
これじゃあまともに相撲なんて普通は取れない。
熊さんは相撲がしたいのだ。
であれば、体格的に同じくらいの子を用意するべきだろう。
さて、では僕の配下で同じくらいの体格の子は…………熊君達は休息中だし……此処は……ブガンダ君かなぁ……? 若干地力で劣るが、丁度いいのは彼だろう。
もしブガンダ君がダメだったら……諦めて消すか。
早速召喚する。
現れたただの赤いオークなブガンダを見て、熊さんはべしべしと地面を叩き、少し不満気だ。
仕方ないので、ブガンダを進化をさせる。
幸いにして、ブガンダは十分なレベルに至っている。
「ブガンダ、進化させるね」
「ふごっ!」
ブガンダが大きく頷いたのを見届け、本を開く。
進化ルートは、ハイオーク亜種、オークウォリアー亜種の2種。ハイオークを選択。
次は、オークジェネラル亜種かオーガ亜種だったので、順当にオークジェネラルに。
その次はオークキング亜種一択なのでオークキング。
ここまで来た所で熊さんを伺うと、どんどん大きく強くなるブガンダを見て嬉しそうに地面をバシンバシンやっていた。
次の進化ルートは……オークエンペラー亜種か猪笹王。順当に行くならオークエンペラーだが、猪笹王で亜種が外れるので、ブガンダの順当な進化は猪笹王の方だろう。
進化したブガンダは、赤銅色の体色とそれなりの巨体はそのままに、密度がググッと増した。
熊さんは嬉しそうだ。
その次は、猪悟能、仙猪人だったので猪悟能。
折角なのでベルベルのクエストで貰った武器、釘鈀を装備させて次、猪剛鬣へと進化させた。
ブガンダは未だ400後半と言う比較的貧弱な部類なので、此処までで進化は打ち止めだ。
だが、熊さん的には此処まで来れば十分らしい。
熊さんは重い腰をあげた。





